
鉄工所の娘として生まれた双子の姉妹。姉は父に物語をせがむ。流刑島の盗賊集団と鯉の話の、なかなか進まない物語の先を、妹は聞いていた。その妹は製鉄所のある島で火災に巻き込まれて死んだ。妹の恋人はその火災の真相を探るべく新聞記者になったと、携帯メールで姉に伝える。どこまでが現実、どこからが妄想、誰が正気、渾然一体となった物語。
チラシの裏に書かれていた粗筋的な文章が実際の内容と全然違ったので、久しぶりに自分で筋を描きました。チラシの文章はイメージかな。
尼崎ロマンポルノの前回本公演「映りゆけ咲子」はウイングフィールドの狭い空間に押し込まれた濃密な世界でしたが、今回は精華小劇場の円形舞台という比較的開いた空間での公演。それでも独特の濃密さは変わりません。
誰が正気で誰が狂っているのか、誰が生きていて誰が亡霊なのか、とにかく最後まで幻想と現実が入り交じって気が抜けません。その不気味さがこの劇団の持ち味なんだろうと思いました。
私は鉄鋼メーカーで働いているのでこのタイトルには敏感に反応してしまいますが、“鉄工”と“鉄鋼”をきちんと区別してイメージできている辺り、作者の周辺にそういう職業の人がいるのかもしれません。製鉄所の力強く恐ろしい雰囲気は好印象です。
円形劇場に合わせた舞台構造も良かったです。先月観た作品は方向性のありすぎる演出で場所による当たり外れが大きかったのに対し、この作品は恐らくどっちから観ても同様に楽しめたと思います。
2009/03/07-19:00
尼崎ロマンポルノ「鉄鋼スベカラク」
精華小劇場/当日券2500円
作・演出:橋本匡
出演:村里春奈/堀江勇気/森田真和/田米克弘/寺本多得子/コーディー/松田卓三/平井佐智子/大江雅子/橋本匡