軒先から溢れでた緑は落ち着かない。私の住まいは住宅地にあり、そこかしこに田んぼもあって、良い所なのだが、私はどうも過度のガーデニングとかそういうやつが落ち着かない。別に流行りとか、エコとか、そういう事を言っているのではない。何の栄養?って思うのだ。何を栄養に?って思うのだ。何かを覆い隠すのではなく、溢れでたもの。という訳で今回は密林だ。アパートの密林が吼えるのだ。ベッドランプの黄色い光が一つ目の獣のように潜むのだ。星の瞬く冬の夜の静寂にだ。わくわくするのは私だけではなかろう。(チラシより)
上記の文は粗筋なのか惹句なのかよくわかりませんが、密林のように過剰な室内ガーデニングのあるアパートで悶々とする主人公と、本物のジャングルに囲まれた外国にいる兄の家族との間で物語は往復する。
部屋に住み着いたヤモリと会話しつつ、不意に届いた兄からの手紙──内容は金の無心だ──を読みつつ、妙に達観した同居人とその彼女さんやテンションの高い友人らと絡みつつ、兄の住む外国に飛び、自称「神様」まで現れて、夢と現実の境界はあいまいに消えさり・・・。
タイトルの電波猿はインドネシアのデンパサールのもじり、かつてオランダに攻められた王国が“ププタン”を果たした場所、らしい。
いわゆる不条理劇のようでいて、じっくり読み返せば一貫した解釈ができそうなメッセージ性も垣間見えた気がしましたが、濃密な空気感に飲み込まれてしまいました。あれは何だったんだろう?
2008/12/20-19:00
桃園会「電波猿の夜 A night of Denpasar」
ウイングフィールド/前売券3000円
作・演出:深津篤史
出演:紀伊川淳/はたもとようこ/亀岡寿行/長谷川一馬/川井直美/よこえとも子/森川万里/橋本健司/岡本大輝/阪田愛子/寺本多得子/渡辺香奈子/林いくみ