湘南の旅館が舞台だ。世間から逃れるように旅館に住んで執筆する小説家、木村が再婚することになり、三人姉妹は新しい母の出現に動揺する。高校時代のボート部OBらが十数年ぶりに開く同窓会。一見、関係のない集団の会話が微妙に折り重なり物語が進行する。(後略)(チラシ裏面、河野孝劇評より抜粋からさらに抜粋)
平田オリザの名前はよく聞きながらその作品をちゃんと観たことがありませんでした。本作は彼が1995年に岸田國士戯曲賞を受賞した直後の作品で、評価は高い、らしい。
観劇後の率直な感想としては、平田オリザが演劇で表現しようとしていることと私が演劇に求めているものは違うんだな、というもの。彼の著作『演劇入門』『演技と演出』は読んでいたので、その姿勢はなんとなくわかっているつもりで、この芝居の印象もそれを裏付けるものだった。
表現したいものがあると言う。これと明示されることはないが、多分、微妙な立場にある登場人物の心理状態とか、コミカルな中にある寂しさとか、ふっきれない想いを抱えながら前向きに進もうとしている葛藤とか、なんとなーく伝わってくるものは、確かにあった。
でも、伝わってくるだけで響いてこなかった。多分、演技と演出がうますぎるのか、リアルを目指しすぎているのだろう。あまりにも完成された感じがして、まるで映画を観ているようなのだ。生身の役者が演じるダイナミクス、表現するという行為そのものが持つ力を失うほどにリアルなのだ。
2008/09/23-17:00
青年団「火宅か修羅か」
アイホール/当日券3000円
作・演出:平田オリザ
出演:山村崇子/志賀廣太郎/兵藤公美/島田曜蔵/高橋縁/能島瑞穂/申瑞季/古屋隆太/鈴木智香子/古舘寛治/井上三奈子/大竹直/山本雅幸/荻野友里/堀夏子/村田牧子