そこは小さな泉。ひとりの若い女性が住んでいる。(チラシより)
そこを訪れる様々な人々。
目を開けることを拒んだ少女。
母国語を忘れ、歌詞のないメロディーだけを口で奏でる女。
燃える水を探し彷徨う男。
みな、この泉の水を求めたやってきたのだ。
やがて、ここに住む女の真実が見えてくる‥‥‥‥
泉に見立てた水槽が中央に置かれた以外は何もない板張りの舞台を、神楽のような動きの役者が文字通り「めぐる」。物語は昔話か神話のようだが、それでも現代に通じる何かを感じた。物語の内容より、むしろ独特な演出が前面に出ている作品と言えるだろう。
客間に飾られた掛け軸のようなもので、はっきりした主題を提示しているわけではないが、観ている時の気分は穏やかで心地よいものだ。こういう舞台はなんと評したらいいか難しい。ただ個人的には好きだ。
アフタートークで永山氏が語っていたところによると、この劇団がこのスタイルをとっているわけではなく、むしろ今回は従来とは演出を変えたとのこと。
現代劇はリアリティを是として様式美を否定するような面があると思うが、観ている者が安心できるという様式の効用はもっと重視されるべきではなかろうか。新たに構築された様式はマンネリというそしりを受けるかもしれないが。
2008/06/22-14:00
劇団こふく劇場「水をめぐる」
アトリエ劇研/前売券2000円
作・演出:永山智行
出演:あべゆう/上元千春/上田政子/濱砂崇浩