東京の街から、どこにも行けない。
犬たちに囲まれながら育まれる、数えきれない風景。
コンビニ、製菓会社のオフィス、漫画喫茶、ペットショップ、駅のホーム、etc…
哀想で凶暴な犬たち、その数は増え続け誰にも止められない。
ただ、ただ、噛まれないように、立て篭る人、狩りを始める人、現実を確認するために犠牲者を出す人、動物愛護を訴える人、新しい基金を設立する人、戦う人、逃げ出す人、関係ないことで争う人、当てた宝くじを換金しに行く人、公共料金を払いに行く人、本当に好きな相手に気付く人、瞑想に耽る人、不倫を清算する人、理不尽さを享受する人、ブリーダーとして犬を育てる人、etc…
わたしたちの狂犬百景。
(チラシより)
基本的な内容は上記の通りで、狂犬に囲まれて身動きできなくなった東京の4つの場所が舞台となっている。
オムニバス形式のようだが、すべて同じ空間の別の場所を描いていると共に、1話から4話まで進行するに連れて時間が経っているのが感じられる。登場人物も一部重なっているので、オムニバスというより4幕の芝居として見た方がいいだろう。
狂犬に噛まれた人はゾンビみたいになっているようだが、その描写はごく一部だ。どちらかと言うと極限状態に追い詰められた人間たち自体の心理ドラマの要素が強い。日常がじわじわと非日常に喰われていく中で、人々がどういう振る舞いをするかに焦点を当てている。
出てくる人々は皆どこか歪んでいる。正義感を振り回す人にしても露悪的に犬を殺す人にしても、感情移入できる登場人物は誰もいなかった。強いて言えば、何も建設的なことはできずにうろたえるだけの人が一番共感できたかもしれない。実際、あんな状況になったら自分もそうなるだろう。
会場は原宿のVacantというギャラリーみたいな場所で、ここは以前子供鉅人が使っていたので来るのは二度目。原宿という場所は駅から東が全部アウェイな世界だ。この劇場も残念ながらお洒落すぎて中に入ってもアウェイ感がたっぷり。せめて椅子がもうちょっと座りやすければ良いのだが。
2014/11/24-13:00
MU「狂犬百景」
Vacant/事前入金3800円
脚本:ハセガワアユム/米内山陽子
演出:ハセガワアユム
出演:青木友哉/古屋敷悠/加藤隆浩/大久保千晴/井神沙恵/島崎裕気/宮崎雄真/森口美香/加藤なぎさ/沈ゆうこ/鍋島久美子/櫻井みず穂/富田庸平/菅山望/大塚尚吾/本東地勝/植田祥平/田坂秀樹/町田彦衞/とみやまあゆみ