
〜私たちは私たちの隣で生きているその人のことをよく知らない。〜(チラシより)
「怪物はどこだ。」
人が人よりも優位に立ちたい、っていう話をなんだかずっと書いてきたような気がしています。
思えばそういう競争の中にいた四半世紀でしたから、 そういう物語を書くことの環境的な条件は整っていた気もします。
で、僕はこの「人よりも優位でありたい」という欲は半ば本能だと思ってまして、 本能だからこそ、ちゃんと飼い慣らせば、どうとでも付き合える気がしています。
仰々しく言ってみましたが、普段そんなことばっかり考えているわけもなく、 言うて僕も割と博愛主義の善良な一市民だと思っています。真剣です。はいそこ笑わない。
ただ、ふとした瞬間にひょんなことでとんでもないことを口走ってしまうことがあって、 そういう時に、この本能の怪物っぷりを考えます。
ちっちゃいですが、確実にいます。
今回は、そういうものと闘うための演劇をやります。
ちょっとだけ枠を広げて、日本人、というところで語ってみようと思います。
13人、の、日本人たちの会議劇。劇場でお待ちしています。
昔から在日トメニア人が多く住んでいる町で、お祭りを開くことになる。会合に集まった人々はそれぞれの生活の中で様々な形でトメニア人と関わっている。トメニア人学校の先生、トメニア人が働く工場の経営者、トメニア人学生による万引きに悩まされているスーパーの店主、刺青のあるトメニア人とトラブルになった銭湯の経営者、ただ仲良くしてほしいと願っているカフェ店員、などなど。
理解と交流を深めようと企画されたはずの祭だが、詳細を詰めるに従ってボロボロとほころびが出始め、次第にむき出しの感情がぶつかり合う。
トメニアという国は架空(多分某映画から取られたもの)で、実在の在日外国人といえば最初にイメージされるのはコリアンだが、それ以外の国と思われるエピソードも多数取り入れて独特なトメニア像が構築されていた。トメニア語という言語を作って字幕まで出していたのはすごいが、キリル文字っぽかったので東欧系の言葉を使っていたのかもしれない。
実際に起きた時事ネタを数多く織り込んでおり、それらをニュース等で聞いた時に自分がどう感じたかを思い出しながら議論に聞き入っていた。いや、議論と呼べるようなものではないだろう。あのカオスな状況は、議論下手と言われる日本人の典型的な会議の姿かもしれない。
思うところは多々ある。実際にそういう町で暮らすことになったら自分はどういう態度を取るだろうか。綺麗事では済まないのだろう、恐らく。
舞台両側のスクリーンに韓国語とトメニア語の字幕が映写されていたが、私の位置からではよく見えなかった。舞台上では日本語で会話しているのだから問題ないかと思っていたのだが、ラストで多分大事な会話がトメニア語でなされて日本語字幕となり、そこがほとんど読めなかったのが残念。あれはどういう内容だったのだろうか。
カムヰヤッセンは気になりつつタイミングが合わずかなり見逃していたが、久々に観た本作はとても良かった。今後はなるべく見逃さないようにしたい。
2014/10/25-19:00
カムヰヤッセン「未開の議場」
王子小劇場/支援会員
脚本・演出 北川大輔
出演:小島明之/辻貴大/工藤さや/小林樹/ししどともこ/橋本博人/小角まや/宍泥美/島野温枝/杉原幸子/新名基浩/安藤理樹/小沢道成
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