2014年01月18日

こゆび侍「少年の日の思い出」

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正義のままでいられると思っていた、ずっと。

木漏れ日の下、足音をたてないよう、そっと蝶々に忍び寄る――もうすぐこれが自分のものになる。胸をぎゅっとしめつける気持ちを、少年たちは感じていた。
ぼくも他の少年たちと同じように、学校の時間も昼食の時間も忘れ、美しい蝶や蛾を探して捕まえて、古いつぶれたボール紙の箱に保管していた。裕福な家の連中にコレクションを値踏みされようと関係ない。それはぼくのなによりの宝物だった。

「エーミールがクジャクヤママユの羽化に成功したらしい」

クジャクヤママユは、古い蝶蛾図鑑でしか見たことのない珍しい蛾。ぼくは興奮を抑えられず、いてもたってもいられずエーミールの家へ――忍び込んだ。
部屋には、図鑑で見たよりもはるかに美しく、めったに手に入らないクジャクヤママユ。目をはなすのがおしかった。見れば見るほど艶めかしかった。
羽に描かれた瞳のような紋様が、じっと、ぼくを見つめていた。
(チラシより)

 原作をちゃんと読んでないのでわからないが、ヘルマン・ヘッセの作品をほぼそのまま舞台化したと思われる。いつの時代も若者の心の動きは変わらないのだと痛感させられる。

 主人公は小心者なのに、やっちゃいけないことをやってしまい、しらばっくれる度胸もなく、でも罪を告白して蔑まれるのも決して平気ではない。ああ、多かれ少なかれそういうことは自分の人生にもたくさんあった。その気まずい感覚が蘇ってきてグサグサと心を突き刺さって、たまらなかった。

 私が観たこゆび侍はこれまでオリジナルばかりだったので、原作ものをやるのは珍しい気がする。しかしとてもよく少年の心情が描けており、もっとこういうのを増やしてもいいのではないかと思う。

2014/01/18-19:30
こゆび侍「少年の日の思い出」
新宿眼科画廊/当日精算2300円
原作:ヘルマン・ヘッセ
脚本・演出:成島秀和
出演:廣瀬友美/島口綾/背乃じゅん/勢古尚行/藤井牧子/宮崎雄真/若林小夜
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2014年01月12日

The end of company ジエン社「ステロタイプテスト/パス」

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はなす事を、はなして。
かく事を、かいて。
かけてしまった私たちを、はなして。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 指で、他人の背中を、なぞっている。
 
 ぐっと力を入れつつ、慎重に、間違えないように、しかも、鏡文字を書くようにだ。
 こうでもしないと、僕は目の前で背中を向いて呆然と座っている老人に、何らかの意思を伝える事が出来ない。
 天才芸人孔子先生の虜囚は続いている。孔子先生はあの日以来全身が麻痺してしまい、目を覚ます事は無いように当初は思われたが、悪魔医師は「触覚だけならなんとか分かる」ので「身体をゆすったり、揉んだりしなさい」といい残した。
 しかたなく、僕らは交代で孔子先生の身体をゆすっている。孔子先生を蝕んでいる麻痺が、身体を覆ってしまわないように。麻痺に覆われたら、人の身体は死ぬし、彼の脳内にある様々な情報も死ぬ。彼の脳内にある情報とは、この町が仮の町になる以前の町の情報でもあるし、稲作についての効率のいい収穫法でもあるし、「イソップ」と呼ばれる擬人化した動物たちの寓話でもあった。
 元芸人という経歴を持つこの孔子と言う男の口からこぼれ出た物語は、読み書きもろくに知らず、ただある為政者の思想書を丸暗記することしか教育を施されなかった僕らにとって、新鮮な驚きと面白さがあった。
 特に、イソップ物語は面白い。
 キツネは、すっぱいと言って、ぶどうを罵倒する。兎は亀と瞬発力を競っていたはずが、いつの間にか眠りに落ちる。アリは、歌うキリギリスを、冷徹に拒絶する。

「こうし せんせい おしえて ください わたしに せかいの ことごとくを」

 僕は孔子先生の背中を、指で文字を書き、なぞる。孔子は何かいいだけに、麻痺に犯された口を開く。
「馬を羨んだロバがいてな……そいつは……」
 こうして今日も僕らはイソップと呼ばれる擬人化動物物語群を孔子から引きだす事に成功した。
 ステロタイプテスト/パス――文字を正確に書くことができた時、僕たちは動物たちが巻き起こす、不思議で面白くて、そしてためになる物語を、この政治運動に疲れきった小さな老人の背中から、聞く事が、出来るのだ。
(チラシより)

2014/01/12-13:00
The end of company ジエン社「ステロタイプテスト/パス」
d-倉庫/当日清算3000円
作・演出:作者本介
出演: 安藤理樹/伊神忠聡/岡野康弘/小見美幸/川田智美/清水穂奈美/鈴木遼/矢野昌幸/山本美緒/湯舟すぴか/横山翔一/善積元続きを読む:スタッフリスト
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2014年01月11日

クロムモリブデン「曲がるカーブ」

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まためぐる夏の日に心尖らす人がいる
いやー高校野球って観たら面白いんだけど
金賭けちゃダメっすよ皆さん!
高校生が正々堂々と戦ってんですから
いやー高校生は何と戦ってんすかねえ
ランナーに出てセカンドベースに立って
煙草吸いたくなったらどうするんだろうねえ
昨日の酒が残ってたら ボールがよれよれ
女子マネージャーのことも気になるし
インフィールドフライとは、無死または一死で走者が一・二塁または満塁の時
打者がフェアゾーンの飛球を打ち上げたとき内野手が…うるせー
わかんないよ頭悪いからさあ ルールなんかさあ
投げて打って走って取って盗んで殴って抗議して
揉めて揉まれて退場して罰金払って甲子園!
クロムモリブデン流、甲子園!
対外試合禁止でも試合してもいいですか?
10人で守ってもいいですか?
役者にデッドボール!お客さんにビーンボール!
(チラシより)

 本筋は甲子園を目指す高校野球部の話だが、野球はまったくしない。外野のそのまた外野で不祥事の嵐が吹き荒れ、見苦しくも滑稽になんとかしよう(ごまかそう)として右往左往する人々や、それも関係なく好き勝手してる人たちの話。いつもながらのクロム節で結末は大音響のカタストロフィ。

 女子高生を演じる葛木英と渡邉とかげがとても可愛らしかった。終盤、彼女たちがマウスみたいによいしょよいしょと野球場を回すシーンは実に素敵だった。意味がわからないよ。

2014/01/11-19:00
クロムモリブデン「曲がるカーブ」
赤坂レッドシアター/事前入金3500円
作・演出:青木秀樹
出演:森下亮/板倉チヒロ/奥田ワレタ/久保貫太郎/渡邉とかげ/小林義典/武子太郎/花戸祐介/葛木英/ゆにば
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posted by #10 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

青☆組「人魚の夜」

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ある日、父が、女を拾ってきました。
浜辺を散歩していたら、うっかり拾ってしまったのだと言います。
こんな海辺の田舎町ではあっという間に噂になるからと、たしなめましたが、その女、もう、戻れないと言うのです。

ほろ苦いペーソスと繊細さを持ち味に、市井の人々の営みを描き続ける青☆組。
最新作は、少しふしぎ(SF)な「未来の昔話」シリーズ。
喪失と、再生と、恋。日本古来の伝承をモチーフに描く、男と女の物語。
あなたの心の琴線をそっとなでる、大人の為の官能的なおとぎ話をお届けします。
(チラシより)

2014/01/11-15:00
青☆組「人魚の夜」
こまばアゴラ劇場/当日精算3000円
作・演出:吉田小夏
出演:荒井志郎/藤川修二/大西玲子/小瀧万梨子/田村元/渋谷はるか/佐々木美奈/吉田圭佑/井上裕朗
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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