
“グラスフィッシュという魚がいて、透明なその魚を、アクアリウムに飼っているのね。(サイトより)
直射日光はダメだから、夕方、日が沈む直前の、一番赤い西日がさす頃に、すこしだけカーテンを開けてやる。そうすると。水槽も、水も、グラスフィッシュも、淡いオレンジ色にきらきらする。
夜が来ると魚たちは、蛍光灯に照らされて、青白く止まっている。魚は、浮いたまま眠るの。”
とあるシェアハウス物件。男女数名、組んずほぐれつ暮らしている。鳥とワニが逃げ出し、一人の青年が戻ってくる。ふとっちょとガリの刑事二人が部屋を訪れ、静かに警察手帳を見せた。先日起こった殺人事件の、犯人を探しています。部屋にはとても美しい、アクアリウムが置かれている。赤い西日に貫かれて、オレンジ色にきらきらと光っている。住人の一人が、ふと気づく。私たちの共通点。もう一人が思い出す。17年前に起きた、14歳の殺人事件。もう一人は考え続ける。逃げ出した鳥とワニの行方を。
今を生きる僕たち私たちは、何にのっとって生きていこう? キレる14歳、あるいはキレる17歳、あるいはもっとストレートに酒鬼薔薇世代と呼ばれた僕が改めて問い直す、「おれたち一体、何だっけ!?」ものがたり。
作者が自分の「世代」を題材として描いた物語だが、世代もまた、ひとつの集団として扱われることが多い。家族や親戚は遺伝的に近い者の集団であり、町や国は空間的距離が近い者の集団であるとすれば、世代は時間的距離が近い者の集団とでも言えようか。
少し前に脱法ハウスの関係で話題になったが、シェアハウスという住居形態は家族でない人々が家族のように一緒に暮らすもの。擬似家族である彼らは、必然的に同じ地域の住民である。そこに世代という集団要素を注いで煮込んだのだから、実にこってりした仕上がりになっていた。
じっくり考えるとどんより暗い気分になってしまうような話に、ワニと鳥とアクアリウムが優しさを供給しているようだった。それはとても弱い、物事を解決するわけではない優しさではあるけれど。
2013/12/07-18:00
DULL-COLORED POP「アクアリウム」
シアター風姿花伝/当日券2500円(プレビュー公演)
脚本・演出:谷賢一
出演:東谷英人/大原研二/中村梨那/堀奈津美/百花亜希/若林えり/一色洋平/中林舞/中間統彦/渡邊亮
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