2013年01月27日

サンプル+青年団「地下室」

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東京の環状線と高速道路に挟まれた場所にある小さな自然食品の店。
そこに住んでいる店長と息子、そして店員たち。
彼らはその場所で小さな共同体を形成し、「水」や自然食品を販売し、
自給自足の暮らしをしている。
「水」を作っているのはその店の地下に住む息子である。
ある日、一人の女の子が働きたいと店を訪れる。
息子はその女の子と出会ったことで、「水」を作れなくなってしまう。
「水」は枯れる。
彼らの生活はゆっくりと崩壊していく。
(チラシより)

 Twitterで評判が良かったので観に行ったのだが、実は七年前にも同じような理由で観に行った作品の再演だった(→当時の感想)。会場が違うのでセットの組み方は違うし、小道具もちょっと時代が進んでiPadとか出てきたが、内容は大きく変わっていなかったと思う。

 七年前の感想では苦手な作品と書いているが、今観るとそれほどでもなかった。展開を知っていたからという面もあるが、この七年で自分も変わったのだろう。色々なことがあって多少のグロい話にも免疫が付いたのかもしれない。あるいは社会が変わったのかもしれない。

2013/01/27-14:00
サンプル青年団「地下室」
こまばアゴラ劇場/当日券3200円
作・演出:松井周
出演:辻美奈子/古舘寛治/古屋隆太/奥田洋平/野津あおい/たむらみずほ/小林亮子/折原アキラ/富田真喜/森岡望/山内健司
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2013年01月26日

時間堂「テヘランでロリータを読む」

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1995年。イラン。テヘラン。
イラン・イスラム革命の後、国民は政府の監視のもと厳しい道徳や規制を強制されていた。
彼らはうばわれた。好きな服を着る自由を。声をだして笑う自由を。
パーティ。ハムとチーズのサンドイッチ。外でアイスクリームを食べること。
恋をすること。手をつなぐこと。
外国の本を読むこと。『ロリータ』を読むこと。
木曜日の朝、彼女たちはやってくる。禁じられたナボコフを、ジェイムズを、オースティンを語るために。
カーテンはしめられ、コーヒーが香りたつ。
彼女たちはチャドルを脱ぐ。
(チラシより)

 革命後のイランでは、原理主義的なイスラムの戒律を遵守することが強制されるようになり、女性の権利や人権はひどく制限されているという。そんなイランの首都テヘランで、西側でさえ退廃的と評される「ロリータ」を女生徒たちが読む。それがどのくらい危険で勇気が必要でかつ魅力的なことなのか、想像するのは難しい。

 純粋に文学作品を研究するだけ、とはいかない。体制を支持する者や反発する者がそれぞれの立場や思惑を抱えて彼女たちに接する。初めのうちは弾圧する側の男たちが狂信的に見えたが、終盤、なんとなくその気持ちも判るようなところもあって、単純に善悪を決めつけることはできないと感じさせられた。

 現実のイランの人々がどう思ってるのか判らない。だが同じような道徳の強制は日本に当てはめることは可能だ。その社会において俗悪とされる行為を率先する人がどう扱われるか?日本は建前上自由のはずでも、実際はがんじがらめではなかろうか。その中で自分は、この芝居に登場する誰のように振る舞っているだろうか。

2013/01/26-18:00
時間堂「テヘランでロリータを読む」
ミニシアター1010/当日精算3000円
原作:アーザル・ナフィーシー
台本:オノマリコ
演出:黒澤世莉
出演:鈴木浩司/菅野貴夫/直江里美/ヒザイミズキ/阿波屋鮎美/井坂俊/木内コギト/猿田モンキー/樹香/平佐喜子/辻村優子/長瀬みなみ/原西忠佑/渡邊亮
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タカハ劇団「世界を終えるための、会議」

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 舞台はちょっとゆがんだ近未来。超高性能なコンピュータに繋がったスマホみたいな道具を誰もが持っていて、晩のおかずから結婚相手まであらゆる選択をその機械に委ねている。物語はそのコンピュータの中。すでに役目を終えた旧型のシステムが、現役の新型システムに挑戦する。

 コンピュータを擬人化するとどうしてもステレオタイプな人格描写になりがちなのに、一台のマシンの中に共存する12ものモジュール/人格を一気に登場させるのはなかなかのチャレンジャーではなかろうか。しかも大体全員の性格が書き分けられているのだから見事なものだと思う。

 物語はわかるようなわからないような展開。システムを設計し指示をするのはもちろん人間だが、そのエンジニアらしき人物はラスト近くにちょっと出るだけなので、大半はその意図がわからないまま進んでいく。それでラストに登場した彼がどんな秘密を明かすかと期待して観ていたのだが、結局あまり納得の行く説明ではなかった。

 途中の細かいエピソードのひとつひとつは面白かっただけに、それが伏線として生かしきれていなかったのが残念だ。

2013/01/26-14:00
タカハ劇団「世界を終えるための、会議」
駅前劇場/当日精算3800円
脚本・演出:高羽彩
出演:有川マコト/有馬自由/異儀田夏葉/石澤美和/大村学/かんのひとみ/岸井ゆきの/高畑こと美/山のえみ/町田水城/宮島楠人/山口森広
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2013年01月05日

サンモールスタジオプロデュース「最後の晩餐」

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「俺はビックになるんだ!」
妻子を残して単身上京してきた売れない芸人(櫻井くん)が交通事故で死亡した。
恋人であるBarのママ(クリスチャン)の発案で、キリスト教には意味の無い49日経ったところでお別れ会を開くことになった。
そして当日。彼との「最後の晩餐」にしようと関係者が集まった。
ところが関係者は関係者でも彼と『トクベツな関係を持った!』カンケイの女性たちが集まってしまったのだ。
さあ、バトルになるのか?和解になるのか?それとも冷戦になるのか・・・。
本人は「うぉーっ!!死んでて良かった!」と胸を撫で下ろしている筈である。
彼は誰を愛していたのか?彼の死は本当に事故なのか!?
謎はつきないがどうでもいい話であることも事実である(笑)
(チラシより)

 MCRの櫻井さんがリアルに演じる女ったらしの半生。いろんな女性と出会って付き合って別れ…ずにまた別の女性と出会って…。だめんず的だが女性を不幸にはしていないところがステキな下衆、と思いきや実は重大な秘密を抱えている。あくまでも櫻井さんが演じている「役」のはずなんだけど、なんだか本当にあのくらいの実生活を送っていそうと思えるのが彼の持ち味だろう。

 前半は女性たちとのエピソードが順に語られるが、後半はいわば種明かしのショータイム。舞台上で本当にステーキを焼き始めたのは驚いたが、それも良いつまみとなって佳境に入り、彼が過去に犯したとんでもない罪が暴かれていく。

 単なるコメディかと思っていたら急に重い話になり、それも含めてなお質を深めていく笑いのタッチは、実はものすごく絶妙な演出のバランスの上に成立する妙義なのではないだろうか。それはともかく終盤で語られる彼の「女の口説き方メモ」は、ぜひコピーをもらいたいと切に思いました。

2013/01/05-17:00
サンモールスタジオプロデュース「最後の晩餐」
サンモールスタジオ/当日精算3000円
脚本・演出:佐山泰三
出演:櫻井智也/みぎわ/松葉祥子/藤井沙央理/川添美和/綱木夏/仁瓶あすか/藤代知己/秦正二/富沢たかし
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SCARLET LABEL「4Q」

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人生や幸せに問いかける、4つのクエスチョン
(チラシより)

 去年クロムモリブデンに入った葛木英の過去作品3本と新作1本を、こゆび侍の成島秀和と声を出すと気持ちいいの会の山本タカが演出するオムニバス。長さはまちまちで、ほぼ中編というべき作品もあった。

 葛木英の作品は状況設定や登場人物が“現実にあり得ないわけでもない程度”に歪んでいて、不気味だが非日常性を醸し出すのが特徴と思う。今回は一部ファンタジー(もしくはオカルトかSF)的な要素が入っていたが、基本的には葛木ワールドが展開されていた。

 印象に残ったのは『廻〜お友達のうた〜』、自殺する人を見物するという悪趣味な秘密サークルの話。後味の悪い展開だが(褒め言葉です)、何度も何度もどんでん返しが繰り返されてウンザリした頃にそれまでの全体がひっくり返されるという、多重構造の展開が面白い。終わってもなおまだひっくり返るんかないかと疑ってしまう。

 世間的には一番話題となっていた『花〜向日葵のゆらゆら〜』は、震災で家族を失ったけれどその事実を受け入れられない絵本作家の話。葛木英と同時に最近クロムモリブデンに入ったゆにばの熱演がすごかったが、自分としてはあまり好みの話でもなかった。

2013/01/05-14:00
SCARLET LABEL「4Q」
シアター711/当日精算3500円
脚本:葛木英
演出:成島秀和/山本タカ
出演:井上みなみ/猪股和磨/小園茉奈/神谷亜美/櫻井竜/ゆにば/草野峻平/國重直也/服部紘二/宮崎雄真/宮ア優里/小山まりあ/加藤ひろたか/川田智美/諸田真実
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2013年01月04日

青☆組「初雪の味 -鎌倉編」

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これは、ある一家の4年間にわたる大晦日の夜を綴った物語。ひとつの戯曲、ふたつの土地の言葉。年を越え出会う、鎌倉と会津の冬。それぞれの夜のしじまを、ぜひ2本合わせてお楽しみください。
(チラシより)

 4年間の、鎌倉の家の大晦日。同じような会話が繰り返されながら、少しづつ状況が変わっていく様子が穏やかに描かれる。最初は田舎の古くて大きな家の話かと思っていたが、そうではなくもっと普通の住宅街の話だった(鎌倉編と会津編があって私が観たのは前者だけなので、後者は旧家だったかもしれない)。

 劇的なことが起こるわけではないが、ゆっくりと確実に変化していき、戻ることはできない切なさが醸し出される、しみじみした舞台だった。

 地域全体が一気に造成された住宅街は、住人の世代が揃っているため、街が一様に歳をとってしまう。これはまさに私の実家に当てはまる状況で、すっかり年寄りの街になっている。いつか自分もこういう状況になるんだなあと終盤に思い至ってグサリときた。

2013/01/04-19:00
青☆組「初雪の味 -鎌倉編」
こまばアゴラ劇場/当日清算3500円
作・演出 * 吉田小夏
出演:荒井志郎/福寿奈央/林竜三/藤川修二/大西玲子/羽場睦子
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