2012年11月18日

トリガーライン「カラスの楽園」

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a time to love and a time to hate, a time for war and a time for peace.
(チラシより)

 ケネディ大統領暗殺事件をモチーフにした作品。しかしフィクションとノンフィクションを程よく織り交ぜているため、結末がどうなるかは予測できない。この混ぜ具合は良かった。

 よく見れば純和風な役者が割とうまいこと1960年代のアメリカ人になり切っていたのが立派。あの時代のアメリカのエリート層は多分あんな感じの会話をしてたんじゃなかろうか。常時ヒステリックに喚き立てるジャクソン(経塚よしひろ)はややデフォルメしすぎな気もしたが、結果的にはそんな演技がとても良かった。悪役ってそれでいいんだと思う。ただ金髪女性のダンサーは(顔や体型は和風なので)やはり滑稽な印象を否めなかったが。

 小劇場楽園は直角方向の2面客席で、その間に大きな柱があって視界が分断される。お世辞にも見やすいとは言いがたい劇場だ。特に舞台の正面が定まらないため演出も難しかろう。この作品はそのテイストから言っても普通の額縁舞台の方が合っていたのではないだろうか。

2012/11/18-14:00
トリガーライン「カラスの楽園」
小劇場楽園/当日精算3500円
脚本・演出:林田一高
出演:林田一高/藍原直樹/重松宗隆/瀬川諒平/吉田真理/経塚よしひろ/小坂実夏子/大迫健司/染谷歩/ヨシケン/三上雄大/森尾繁弘/寺内文人/三上正晃/和田武/野々目良子
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2012年11月17日

ブラジル「行方不明」

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真夜中の電話。不吉な予感。

「たまには会いたいな」
照れくさそうにアイツは言った。
俺は仕事が忙しいと断る。いつものことだ。

仕事をクビになり、妻の浮気が発覚して、全てを失って、
思い出したのはアイツのことだ。

虫のいい話だ。

アイツの携帯は通じなかった。
会いに行ってみると、アイツはいない。
はじめから存在しなかったかのように。

行方不明なのは、アイツなのか───俺なのか。
(チラシより)

 コメディタッチのドラマからだんだんオカルトになっていく過程が、引きずり込まれていくようでゾクゾクした。櫻井智也の演ずる主人公は、適当に生きてるようでいていざとなると力強い、いかにも主人公だ。幾多の不幸や困難に見舞われながら果敢に前進し、友を探す。

 しかしそれにも増して印象的だったのは幸田尚子の怖いまでの美しさ。それがなかったら終盤の怪しい空気は成立しないだろう。他の役者さんの演技も素晴らしかったが、綺麗だったー。そして怖かったー。

 ただ、幸田尚子は主人公の妻との二役なので、後半に登場した時は別れた奥さんがアレになったのか無関係の別人なのか判断がつきかねた。名前も麻理子とマリコなので、わざと混乱を狙っていたのかもしれない。結果的には同一人物のはずがないのだが、なにしろ物語がどういうジャンルに落ち着くのかすら途中ではわからないので、同一人物という展開もありえるだろう。

2012/11/17-18:00
ブラジル「行方不明」
赤坂レッドシアター/当日清算3000円
脚本・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:櫻井智也/辰巳智秋/西山聡/諌山幸治/若狭勝也/仗桐安/哲人/宮島朋宏/幸田尚子/ザンヨウコ/内山奈々/ハマカワフミエ
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シアターノーチラス「その名はブルー」

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誰もその姿を見たことがない
姿なき犬の行方を追いかけて、
探偵は、街を駆け抜ける
(チラシより)

 犬探しに定評のある私立探偵事務所だが、実は自分たちで飼い犬をさらって隠して依頼を受け、見つけたふりをしていた。怪しいと睨んだ警察官も出入りするが尻尾を掴めない。そんなある日、いつもの様に犬をさらおうとしてそのまま逃がしてしまう。しかも犬の鳴き声は聞いたが姿を見ていない。そして飼い主の家族もどこか様子がおかしい。

 ミステリー風のお話だが、そもそも解かれるべき謎が何なのかはっきりしないまま謎解きを迎え、しかもオカルトじみた結末はいささかミステリーとは認めづらい。台詞回しはお約束っぽいものが多いし、主役の滑舌もあんま良くなくて、いまいちな印象だった。あと、自称宇宙人の子と白い服の少女は配役が逆の方がしっくりきたんじゃなかろうか。

2012/11/17-14:00
シアターノーチラス「その名はブルー 指先から離れゆくものたちの最後の感触について
参宮橋トランスミッション/当日清算2300円
作・演出:今村幸市
出演:木村香織/冨永裕司/渡辺ゆりか/瀧澤由舞/丸山小百合/山田佳奈/川原真衣/村田望/三好雅人/小山内哲也
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2012年11月11日

劇団鋼鉄村松「高橋ギロチン」

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ぴぴるまぴぴるまぺろりんちょ、人権派弁護士になあれ!
(チラシより)

 死刑存廃論がテーマ。あるビルに突然現れたギロチンと、殺人犯、いわゆる人権派弁護士なるものとがドタバタ悲喜劇を繰り広げる。ビン底メガネの女性弁護士、メガネを取ると美少女、というほどでもない微妙な容姿が秀逸(バカにしてるのではなく、作中にそんな表現があったんです)。

 作中でも触れられているように、なぜ今死刑存廃論議をテーマにしたのかは判らない。しかしそれは別にどういうタイミングでもいいだろう。具体的な犯罪の裁判における刑罰を論議しているのではなく、制度の是非を論じているのだから。

 建設中のビルの一部屋に、ある日突然、絞首台が現れる。ほとんどの人にとって観念でしか接し得ない“死刑”が、物理的実体として目の前に提示される。まあ荒唐無稽な設定だが、議論を始めるきっかけとしては面白いセッティングだ。

 しかしその後の展開はちょっと浅いかなという印象もあった。もちろんあまり深入りしすぎるとエンターテイメントが成立しなくなるのでやむをえないかもしれないが、いっそ徹底的にやってもよかったのではなかろうか。

2012/11/11-14:00
劇団鋼鉄村松「高橋ギロチン」
王子小劇場/支援会員
作・演出:ボス村松
出演:ボス村松/バブルムラマツ/ムラマツベス/村松かずお/松井さん/村松ママンスキー/村松中華丼/後藤和/多田無情/福満瑠美/八幡眞理/児玉和巳/辻明佳/星野良明/菅山望/徳元直子/山名淳/山本タカ
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2012年11月10日

The end of company ジエン社「キメラガールアンセム/120日間将棋」

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君と将棋を指す。
ただし、一日一手ずつ、毎日23時59分までに一手を指す。
それ以上は手を早めないし、それ以上は手を遅めない。
(チラシより)

 いやはや疲れる芝居だった。観客をふるい落とすかのように攻め立てる同時発声、それも時間や場所も異なる会話が同時に繰り広げられるので、全部聞き取ることは困難を極める。そう言えば前回公演もそんな所が多々あった。

 最初は聖徳太子になろうと努力するが、やがて無我の境地になって耳に入ってくる声を受けとめる。するとなんとなく全体像が見えてくるから不思議だ。この劇団を観るコツを掴んだということなのかもしれない。

 一日一手ずつ指す将棋を進める男と、彼が出会ってきた女性たちの回想。こないだ観た「人間失格」にも似た雰囲気がある。舞台の背景はどうやら震災後、と言うか原発事故後の東京。現実よりもだいぶ深刻な状況になった東京だ(いや現実もこのくらい深刻なのかもしれないが)。女性が定期的に産科検診を受けるのは萩尾望都のSFにあったような気がするが、現実がSFにじわじわ近づいているのかもしれない。

 この主人公は決して羨ましい境遇ではないけれど、それでも彼に感情移入するとなんとなく楽しめてしまうのは芝居の成せる技だろうか。

2012/11/10-18:00
The end of company ジエン社「キメラガールアンセム/120日間将棋」
シアターグリーンBASE THEATER/当日清算2800円
作・演出:作者本介
出演:伊神忠聡/岡野康弘/萱怜子/川田智美/北川未来/清水穂奈美/関亜弓/中田麦平/信国輝彦/藤田早織/目崎剛/山本美緒
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箱庭円舞曲「否定されたくてする質問」

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そんなことないよ。って言われたいんでしょ?
(チラシより)

 二人の漫画家(片方は作家と漫画家のコンビ)と共通アシスタントが仕事場にしているマンションが舞台。やってくるのは編集者。売れたり売れなかったり、行き詰まったり行き詰まったり。ああいう職業の人は相当に精神が強くないと耐えられないんだろうなあ。

 箱庭円舞曲の初の再演。お得意の業界もの。初演当時も関東にいたのでチラシは見た覚えがあるが作品は見逃していました。再演ではありますが多少時事ネタもありましたのでそこは修正したのでしょう。原発事故との絡みを連想させる部分は初演でどうなっていたのでしょうか。

 物語が作れなかったり顔だけ描けなかったり、それぞれ苦手部分があって協業している状況はなんとなくリアルでありそうだが、二人の漫画家はお互いの仕事部屋に立入禁止だけどアシスタントは両方で仕事しているってのは現実にありうるのだろうか。取引先ならあるだろうけど。

2012/11/10-14:00
箱庭円舞曲「否定されたくてする質問」
駅前劇場/当日清算3300円
脚本・演出:古川貴義
出演:小野哲史/須貝英/爺隠才蔵/片桐はづき/村上直子/久保貫太郎/牛水里美/白石廿日/鷲尾直人
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2012年11月04日

DULL-COLORED POP「完全版・人間失格」

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「恥の多い生涯を送ってきました」
「私には、人間というものが、わからない。人間の営み、人間の生活、人間の喜び、人間の、」
「でも、私の知ってる葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、……いいえ、飲んでも、神様みたいないい子でしたよ」
(チラシより)

 言わずと知れた太宰治の小説。原作のテイストは生かしつつも単なる舞台化ではなく明瞭にオリジナルな世界を提示していた。主人公を男優が演じる男バージョンと元柿喰う客のコロさんが演じる女バージョンがあったが、私が観たのは後者。男優では不可能なレベルの色男を現出させていた。

 心の声らしきものを語るもう一人の私が効果的に使われたり、小道具が次々に上から降ってきて段々舞台上が雑然としていくなどと、演出の手法はかなり趣向を凝らしていた。とはいえ奇をてらうわけではなく、すべて必然を感じられるものだった。

 実は青山円形劇場を完全に円形で活用している舞台は観たことがなく、名古屋の千種文化小劇場の様に一方は使えないと思っていた。しかし本作でそうじゃないことを知った。なるほどこれは無くなってもらいたくないと思える劇場だ。この形、このサイズでこそ成り立つ演出があり得る。

2012/11/04-14:00
DULL-COLORED POP「完全版・人間失格」
青山円形劇場/事前入金3500円
作・演出:谷賢一
出演:東谷英人/大原研二/塚越健一/中村梨那/堀奈津美/百花亜希/若林えり/川村紗也/熊川ふみ/コロ/孔大維/西郷豊/細谷貴宏/堀川炎続きを読む:スタッフリスト
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2012年11月03日

弘前劇場「素麺」

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秋。
青森県津軽地方にある旧家。
現在の家主は、市役所に勤務する長女、
宮古を頻繁に訪れている次女、
教育実習を終えたばかりの三女の姉妹であるが、
一緒には暮らしていない。
空いている部屋を下宿として貸し出していたこの屋敷は、
代々の下宿人や家族が愛してきた書籍であふれている。
古くからの蔵の改修も終わり、あふれた書籍を片付けようと
家主である三人の姉妹、出入りの鳶衆、下宿人らが集まっている。
そして、その中には、座敷童子もいる。
しかし、この座敷童子。
どうやら、この家からいなくなろうとしているらしい。
なぜ、そして、どこへ座敷童子は行こうとしているのか・・・。
(当日パンフより)

 率直に言ってすばらしい舞台だった。スズナリの空間が旧家の広々とした書斎になり、左右の壁にそびえる高い書棚に積まれた大量の書物から、懐かしい紙の匂いが漂ってきた。

 最初は休暇に住み着いた座敷童子と家族の話かと思ったが、次第に震災の爪痕が見えてくる。書棚の書籍がどれも立てられておらず横にして積まれていることや、蔵を修理する鳶がずっと出入りしていることも静かにそれを示していた。あの時それぞれに何があったか、ゆっくりと語られる。

 しかし決して、震災をネタにしたお涙頂戴ではない。良い作品はどれもそうだが、結局は「人」と「人の関係」を描いている。それも実に繊細な心の機微が丁寧に描かれている。笑いが暖かく登場人物がみんなとても愛おしい。

2012/11/03-19:30
弘前劇場「素麺」
ザ・スズナリ/当日清算3500円
作・演出: 長谷川孝治
出演:永井浩仁/高橋淳/田邉克彦/林久志/藤島和弘/小笠原真理子/国柄絵里子/寺澤京香
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シンクロ少女「オーラルメソッド2」

新作短編(ダージリン急行とオーラルメソッド)の二本立てです。
上演時間は80分前後を予定しています。

『ダージリン急行』
ウェス・アンダーソン監督の映画「ダージリン急行」を少しアレンジしてそのままやります。

『オーラルメソッド』
口を使った、男と女のお話です。
(サイトより)

 「ダージリン急行」と「オーラルメソッド2」の二本立て。当日パンフレットによると前者には原作があるようだ。仲違いして疎遠になっていた三兄弟が、ヒマラヤの麓の村でトラ退治を始めた母親を訪ねてインドに向かう話。途中から素っ頓狂なミュージカルのようになる辺りで意表を突かれた一体どこまで原作にある展開なんだろうか。

 前半の会劇と後半のミュージカルのテンションの差がありすぎて、真面目に聴いたらいいのか笑うところなのかわからなくて困った。最初の方の役者がぎこちなく見えたのはコントラストをつけるためにわざとやっていたのかと思うくらいだった。

 二本目は役者がおおむね本名で登場し、女三人が濃いガールズトークを繰り広げる。ドロドロなんだか開き直っているのか、若者特有の苦悩みたいなものはあまり感じさせず、奔放な女子に振り回される男子たちが可愛かった。

 全体にそれほど完成度が高いとは感じられないが、着眼点というか作品の前提となる発想は面白い。特に一本目は優れた役者が演じたら結構すごいものになるような気がする。それでなくても脚本・演出・演技をそれぞれ磨けばもっとよくなると期待される。いわゆる「のびしろが大きい」ってやつか。

2012/11/03-15:00
シンクロ少女「オーラルメソッド2」
東中野レンタルスペース/当日清算2000円
作・演出:名嘉友美
出演:泉政宏/横手慎太郎/名嘉友美/浅井浩介/浅川薫理/坊薗初菜
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