2012年09月23日

アガリスクエンターテイメント「ナイゲン」

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会議は踊る、
外はもう夏。

かつては自主自律を旨とし生徒による自治を誇っていたが、今はそんな伝統も死に絶えたどこにでもある進学校、国府台高校。
ある夏の日、唯一残った伝統にして、やたら長いだけの文化祭の為の会議“ナイゲン”は、惰性のままにその日程を終わろうとしていた。
しかし、終了間際に一つの報せが飛び込む。
「今年は、1クラスだけ、文化祭での発表が出来なくなります」
それを機に会議は性格を変え始める。
―――――どこのクラスを落とすのか。
かくして、会議に不慣れな高校生達の泥仕合がはじまった…!
(チラシより)

 高校の文化祭に向けて各クラスの代表者が集まってそれぞれの実施内容を検討する「内容限定会議」、略してナイゲン。奇妙な名前の会議だが、何かモデルがあるのだろうか。自治とは程遠い、ただひたすら誰かが作ったルールに縛られるだけの高校生たちの会議が踊る。

 芝居としてはかなり面白かった。最初は退屈で不毛な会議が延々続くかと思いきや、途中から高校生特有の恋愛ネタが入り込むと爆発的に疾走し始める。話の緩急も各登場人物のキャラクターもよく際立っていて、戯曲として秀逸だと思う。再演を望む声が多かったというのも頷ける。
20代から30代の役者が高校生役を演じていたわけだが、違和感はほとんどなかった。本当の高校生が演じるより良いかもしれない。

 そこに描かれた内容については思うところもある。個人的には、学校側の要求を拒否すべきと主張し続けた三年生に共感する。あんな理不尽なことになんであの程度しか反発しないのかね(フィクションだけど)。

 自分はむしろ生徒の自主性をまったく尊重しない管理教育の高校で文化祭の実行委員をやったので、「いかにして自分たちのやりたいことを学校側に認めさせるか」が最大の課題だった。自主自律を重んじる校風なんていうのは、実際にはそういうものを養わないのではないかと思う。与えられた自由は、簡単に奪われてしまうのだ。

2012/09/23-14:30
アガリスクエンターテイメント「ナイゲン」
シアター・ミラクル/当日券2000円
脚本・演出:冨坂友
出演:甲田守/鹿島ゆきこ/金原並央/木村ゆう子/さいとう篤史/榎並夕起/長谷川一樹/斉藤コータ/淺越岳人/細井ひさよ/矢吹ジャンプ/信原久美子/塩原俊之
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2012年09月22日

柿喰う客「無差別」

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「罪悪を犯し禁忌を破り、運命を呪い現世を生きる。
 神も仏も獣も人も、無差別に陥る因果の罠。」
(チラシより)

 女体シェークスピア二作や国際交流活動などを挟んで一年半ぶりの新作長編ですが、それらを生かしてますます「太く」なって戻ってきた印象です。その間に劇団員の入れ替わりもあり、いなくなった人については惜しいところですが、新人もまたいい味を出していました。

 犬を殺して肉を売る家族が、その生業ゆえに虐げられる。そんな家に産まれた男が、妹だけは穢れ無きように“罪”から遠ざけて育てる。そのためには山の神さえ畏れない。言うまでもなく被差別部落を題材にしつつ、ラストは国産み伝説にも絡めた問題作だ。

 “タブーに挑戦する”なんてことを謳う作品はたくさんありますが、それ自体が目的化している場合は結局、タブーを利用して自分を売っているだけにしか見えません。本作品も一歩間違えれればそうなっていた可能性のある、危険な試みだったのではないでしょうか。しかし幸いなことにその一歩を間違ってはいなかったと思います。

 かなり珍しいことに期間中に2回観ました。2回目は演劇を観たことがないという人を連れていきましたが、衝撃を受けていました。初めての体験としてはちょっと強すぎたかなと思っています。

2012/09/15-14:00
2012/09/22-18:00
柿喰う客「無差別」
東京芸術劇場シアターイースト/事前入金3800円(15日)・当日券4300円(22日)
作・演出:中屋敷法仁
出演:七味まゆ味/玉置玲央/深谷由梨香/永島敬三/大村わたる/葉丸あすか/中屋敷法仁
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2012年09月16日

tsumazuki no ishi「HEAVEN ELEVEN OF THE DEAD」

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「ゾンビの出てこないゾンビのおはなし」
世界中の人々がゾンビになってゆく時、その人々の魂は、昇天できずに、あの世とこの世の中間世界で立ち往生していた。
自分が生きていたころには感じることもなかった、死について、生きるということについての感覚を、それらに戸惑いながら、一個の無垢な魂に還るまでに、それらを味わい受け入れる、群像悲喜劇。
(チラシより)

 上記のあらすじでは判りにくいが、つまりゾンビ化した人々の肉体は「この世」に留まり、その体を動かす意識は「中間世界」にいるという構造になっている。舞台は中間世界でのやり取りであり、肉体のあるこの世の状況は言葉で語られるのみだ。中間世界と言っても見た目は普通のコンビニの駐車場で、そこにたむろっている。彼らの姿は幽霊のように、一部を除く人間には見えない(唯一、コンビニ店員の一人には見えている)。

 よく考えると何故そこに生身の人間がいるのか不明だが、それよりもっと不可解なのは、精神のみの存在である彼らが肉体を遠隔操作するのにスマホや携帯を使っていることだ。どんなアプリなんだかわからないが、しきりに画面をタッチして見えない肉体を動かしている。いかにも最近の演出だが、どういう効果を生んでいたかはよくわからない。

 状況を飲み込むのに手間取って後から振り返って理解できた部分が多かった。それは別に構わないのだが、せっかく作った設定があまり物語として生かされていなかったように感じる。生かせたのは終盤、この世で植物人間になっている博識の男をみんなで襲う場面だけだったろう。その場面は確かに独特の緊迫感があった。視覚的には誰も暴れていないが、向こう側で大暴れしている様子が伝わってきた。しかしそれを生むためだけにそこまで話を引っ張ったわけでもあるまい。

 もうひとつ、終盤で明かされる設定というか真相(主人公の想像の産物だと思っていた女が、逆に主人公たちを含む妄想の主だった、のか?)もまた、さかのぼって何かを納得させるようなものではなかった。

2012/09/16-19:00
tsumazuki no ishi「HEAVEN ELEVEN OF THE DEAD」
ザ・スズナリ/当日清算3500円
作:スエヒロケイスケ
演出:寺十吾
出演:/亜矢乃/柿丸美智恵/津村知与支/西園泰博/舞山裕子/寺十吾/宇鉄菊三/日暮玩具/松原正隆/岡野正一/中野麻衣/佐藤健/大高洋
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ホチキス「クライシス百万馬力」

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こいつらに騙されるな。
欲望渦巻く街、裏唐町(うらからちょう)。
表向きは巨大な歓楽街、しかし裏の顔は、
マフィア達が牛耳る暗黒街。
今夜も起こる小競り合い。
負け犬達の起死回生の大勝負がはじまる!
これが、ホチキスのハードボイルド!!
(チラシより)

 これぞエンターテイメント。ホチキスはひとつのまとまった物語を描くのが上手だ。起承転結の枠にはまるわけではないが、まず人物や背景を描き、それから事件が転がり出し、意外な展開もお約束な展開も取り交ぜて膨らんでいき、いい感じに結末を迎える。この作品ではまさにそんなホチキスの巧みさが発揮されていた。

 かなり出演者の多い舞台だがメリハリの効いた構成でむしろスッキリした印象だ。それもこの顔ぶれなら当然と言ったところか。加藤敦は二枚目と三枚目を兼ねてかっこよく、小玉久仁子と神戸アキコの競演は清々しいほど面白い。存分に楽しませてもらった。

 ところでチラシの形が特徴的でずいぶん扱いに悩まされた挙句、結局上の画像はサイトから拝借した。金かかるだろうに、なんでまた。

2012/09/16-12:00
ホチキス「クライシス百万馬力」
シアタートラム/当日清算3800円
作・演出:米山和仁
出演:加藤敦/山崎雅志/小玉久仁子/村上直子/齊藤美和子/山本洋輔/ザンヨウコ/齋藤陽介/神戸アキコ/松本理史/annie/飯塚美雪/井場景子/今井夢子/上松みづほ/内山拓磨/大野清志/緒川真生/小沢道成/加藤隆浩/川畑舞香/小太刀賢/小寺悠介/坂口アミ/田中正伸/辻貴大/浜田えり子/藤田未来/宮崎雄真/結/李そじん
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2012年09月15日

アマヤドリ「フリル」

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けっこう、毎日は戦争だ

もうフリルなんかいらない
美少女フィギュアコレクターを夫に持つ主婦の「リコ」は、ある日、友人に夫の趣味を気味悪がられたことをきっかけにして彼の所有するフィギュアをすべて処分してしまいました。すると夫は、まるで魂が抜けたようになって一切のモノを所有・購買することを拒絶して暮らすようになってしまいました。やがて夫は、「僕には君を所有する意欲がない」と言い残して妻のもとを去っていきます。「リコ」は夫を理解しようと懸命に様々なマニアたちとの接触を試み、やがて裏原宿系のファッション・サークルのカリスマ的リーダー「アヤカ」と出会います。いつしかサークルの中核を担う実力者となったリコは、アヤカと共同でファッション・ブランドを立ち上げ、過激なスタイルを追求するそのブランドで少女たちの絶大な支持を得て嘘みたいな成功を収めます。自信を取り戻した「リコ」が冷やかしでかつての夫に会いに行くと、彼はなんと、「己の肉体のみを所有する」との理念をかかげる暗黒舞踏カンパニーのリーダーとなっており、遂にはすべてを所有しようとする「リコ」と夫との間に最終戦争が勃発したのでした。
(チラシより)

 ひょっとこ乱舞から改名?したアマヤドリの第0回公演。5月に横浜で「幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい」、8月には利賀で「しあわせな日々」を上演して事実上3回目なのにまだ0回とか言ってるのはどういうつもりかと思うが、好意的に解釈すれば改名に伴って作風変更を意図しつつもまだコンセプトが固まっていないので、模索中ということなのでしょう。

 明白な起承転結はないけれど、いくつかの組の人間関係(夫婦だったり同僚だったり)の微妙な機微を描いたもの。面白かったり辛かったり、楽しそうだったり悲しそうだったり、でも総じてただよう雰囲気は「滑稽」だったように感じた。悪い意味ではなく、愛すべき人々の滑稽さだ。

 王子小劇場を横向きに使って横長のスペースを作り、さらにそれを奥と手前で細く分けるように巨大なフリンジカーテンが横断するという舞台装置。役者は時折そのカーテンを通り抜けるし、向こう側に置かれた椅子などがうっすら見えるので、仕切られ方の緩さが面白い。

 冒頭ではひょっとこ乱舞を思わせるダンスもあったが、全体としては踊り控えめ。乱舞が好きだった自分としては物足りないが、これもスタイルとしては悪くないと感じた。アフタートークで主催が語る言葉からも、まだ方向性が定まっていないことが伝わってきた。今後に期待したい。

2012/09/15-19:30
アマヤドリ「フリル」
王子小劇場/劇場支援会員
作・演出:広田淳一
出演:松下仁/根岸絵美/糸山和則/田中美甫/渡邉圭介/小角まや/榊菜津美/伊比井香織/鈴木由里/長瀬みなみ/中村梨那
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2012年09月09日

桃尻犬「秋の霧、龍にまみれ、居心地がよく」

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・・・何して遊ぶ?
少年は楽しかったのです。
龍と遊ぶその日常が。
霧にまみれたその谷で、
龍と過ごしていた日々が。
いつまでもいつまでも、ただ龍と遊んでいたかった。
ミミズみたいにヌルッとした皮膚が
蛇のように大仰なその眼が
ずるっと覆われた感覚が
龍の長い尾と髪とその腕に包まれて
まどろみをむさぼっていた日々を
忌み嫌い
呪い
メキシコ人に窘められて
謳います
聞いてください
「ある恋の物語」
(チラシより)

 小さな小さな芝居小屋で、"Puff (The Magic Dragon)" をモチーフにした、子供の頃の想い出のほろ苦さとラテンの血とシモネタとサイケデリックとファンタジーが同居したお芝居を観た。ああ、こういうのが好きなのだ。役者さんはみな若いけど存在感があった。

 前回の桃尻犬の公演で度肝を抜かれた堂本佳世が出ていて、なぜか一切セリフなしで歌とちょっとした動きだけの登場だったけど、それでもうわぁって思うほど良かった。後でTwitterを見ていたら、ロ字ックの「鬼畜ビューティー」でセックスに奔放な妹を演じていたのも彼女だと知って、改めて女優の恐ろしさ(まるで別人)を感じた。

 色々と満足した。

2012/09/09-13:00
桃尻犬「秋の霧、龍にまみれ、居心地がよく」
新宿ゴールデン街劇場/当日清算2000円
作・演出:野田慈伸
出演:成瀬正太郎/渡邉晋/湯口光穂/野田慈伸/堂本佳世
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2012年09月08日

ラビット番長「消える魔球」

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「もうすぐ、彼と変わらないぐらい野球を愛する男が現れる。
そのために僕は野球を守る必要があるんだ……」
どんな時代でも、どんな状況でも。まっすぐで、あきらめない。
野球大好き“ラビット番長”がお贈りする
高校球児ととある大投手を巡る、熱い青春の物語。
第23回池袋演劇祭【大賞】受賞作品、待望の再演です!!!!
(チラシより)

 高校野球のヒーローがプロ入りするか大学に行くかで悩んでいる時、ある球団のスカウトマンが接触してくる。しかし記者会見の日に突然学校の屋上からタイムスリップして、チームメイトと共に戦時中の日本に来てしまう。

 スポーツ全般にほとんど興味がないのでこういう人物の心境はよくわからないが、自分が徹底的に打ち込んだものに対する愛情というのはどんな分野でも変わらない強さがあるのだろう。物語はわりと教育的な展開で、笑いあり涙ありの優等生的な脚本。最近の作品としては珍しくちゃんと起承転結になっている。

 正直、ちょっと優等生的すぎて私には物足りなかったが、きちんと作られた舞台だった。

2012/09/08-18:00
ラビット番長「消える魔球」
あうるすぽっと/当日清算3800円
作・演出:井保三兎
出演:大川内延公/野崎保/丸若薫/西川智宏/松沢英明/石川健二/岸本弘海/キンダイチ/西村麻弥/原幹治/大縄みなみ/よしだあゆみ/戸辺俊介/桐原伸明/竹村裕貴/右田隆志/千葉太陽/西垣心/鈴木志歩/皆川遥/肝付兼太(声の出演)
(一部ダブルキャスト。私が観たのはAグループ)
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Bobjack theater「それはエデンの東か西」

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38年という
そこそこに不幸な僕の人生を
ざっと振り返ってみれば
「サンキュー神様!」なんて
思わず神に感謝するような出来事は
残念ながらあるはずもなくて
むしろ
「神も仏もない」という出来事は
数えればキリがないほどにあった

そして今日

僕は決めかねている

あきらかに人生でナンバー1の非常事態の中で

神様、アンタを讃えるべきや 恨むべきや

ボブジャックシアターが送るSFといえばいえなくもない物語!
(チラシより)

 Bobjack theaterを観るのは三回目ですが、ここは正統派の「泣かせる芝居」。そういう芝居を斜に構えて観ても仕方ないので存分に泣かせてもらいました(前回は近くの席にいた女子高生の集団があまりにも号泣していて戸惑った)。

 タイトルの「エデン」は楽園のことかと思ったらそういう名前の喫茶店が出てくるので、店のことかと思わせつつ、多分両方の意味を持っているんでしょう。どの登場人物も優しさと過去の後ろめたさを持っていて、一筋縄ではいかない境遇ながらしっかりと歩んでいく物語でした。

 SF的な要素が終盤で用いられますが、そこはSFに逃げずリアリティのある方法で解決できたらもっと良かったんじゃないかと思いました。

2012/09/08-14:00
Bobjack theater「それはエデンの東か西」
シアターKASSAI/当日清算3000円
作・脚本:守山カオリ
演出:守山カオリ/扇田賢
出演:扇田賢/片岡由帆/宮井洋治/丸山正吾/渡辺宏明/八木橋里紗/民本しょうこ/佐々木仁/的場司/小島ことり/森尾繁弘/渡壁りさ/関口あきら/高原知秀/北川千晴/竹村彩子
続きを読む:スタッフリスト
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