2012年07月30日

クロムモリブデン「進化とみなしていいでしょう」

sinkatominasiteiideshou.jpg

人間味を取り戻せ!
指名手配され逃亡生活を送っていた男女。
自首しようと数年ぶりに街へ出たら人々の様子が変化していた。
相手の気持ちが分からないようだ。
気持ちが分からないからか皆おしゃべりさんである。
こんなにうるさかったっけ世の中って!
これが進化の形なのか?
(チラシより)

 今までに観たクロムモリブデンの作品の中では一番心に響いてきた。振り返ってみればいつもそうだったのだろうけれど、青木秀樹の感性と筆力はすごいのだと初めて理解できた気がする。社会問題をモチーフに取り入れてただ風刺っぽく騒いでいるのではなく、その奥というか裏側にある何かをしっかり見据えているのだろう。

 父親を殺されて引きこもりなって、小説を書きはじめた少年。頭の中に警官がいてむりやり解決している女性。どちらが現実でどちらが想像の産物なのかごちゃまぜになっていく。女性の頭の中にいる警官は人の心がわからないので言葉をただ文字通りに解釈する。

 ちなみに森下亮と幸田尚子が演じたこの警官達、劇中では世田谷症候群とか杉並症候群とか名前がついていたけれど、現実にもある病気のはずだ。病名は忘れたが、脳神経外科医でエッセイストのオリバー・サックスが書いた『妻を帽子と間違えた男』というエッセイ集にそんなエピソードがあった。

 もちろんこの芝居の登場人物がその病気というわけではないだろう。芝居が表現しているのは現代人の(脳ではなく)心の問題だと思われる。こう書いてしまうと一気に陳腐化するが、普通なら「嘆かわしいこと」として描かれるであろうことを「進化とみなしていいでしょう」と言い切ったのだ。

 この他にも「作家の苦悩」みたいなテーマも描かれていたと思うが、自分は作家ではないのでその部分はさほど印象に残っていない。おそらく、観る人によってポイントは違うのだろう。

 過去に観たクロムモリブデンの作品ではそこまでテーマや主張を感じなかったが、単に見逃していただけかもしれない。再演しない劇団なので劇場で見直すことはできないから、DVDを買うべきだろうか。

2012/07/30-19:30
クロムモリブデン「進化とみなしていいでしょう」
赤坂レッドシアター/事前入金3000円
作・演出:青木秀樹
出演:奥田ワレタ/ゆにば/久保貫太郎/花戸裕介/佐藤みゆき/武士太郎/手塚けだま/森下亮/幸田尚子/小林義典/渡邉とかげ/金沢涼恵

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2012年07月28日

トランスパンダ「folklore(フォークロア)」

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 おしゃれなカフェに滑り込むおとぎ話の空間。リーディング公演の予定が普通のお芝居になっていましたが、トランスパンダの優しい世界が丁寧に作られていました。ずっと昔にいなくなった少女の幻影?を独特の空気を持つヤマサキエリカが好演していました。

 can tuktu(ジャン・トゥクトゥー)での上演。名前は知っていましたが足を運んだのは初めてです。意外と広い空間をゆったり横長に使い、全体が見やすいわけではありませんが適度な距離感でした。大阪時代にもっと来れば良かった。

2012/07/28-20:00
トランスパンダ「folklore(フォークロア)」
can tutku/当日清算1800円
作・演出:ナカタアカネ
出演:秋津ねを/後藤七重/寺本多得子/ののあざみ/前田晃男/ヤマサキエリカ
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2012年07月22日

非シス人「血は立ったまま眠っている」

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「一本の樹の中にも流れている血がある そこでは血はたったまま眠っている」
寺山修司が23歳の時に書いた一編の詩から生まれた戯曲。
   *
1960年、転がるドラム缶、どこかから、猫の鳴き声──。
公衆便所の前では、「子供」が死んだ子猫を持ち歩く。
悲鳴のようなブルース。
倉庫には革命を目論む若いテロリストがふたり。
殺伐としながらどこか牧歌的なふたりの時間が流れる。
寂れた「床屋」の主人。
前科者が持ってきた闇取引の話に加われず、いらだちを隠せない。
集まる娼婦たち。
インチキな占いを繰り返す女。首吊死体を見上げる女。
麻薬中毒の元ボクサー、靴紐売り。
ぐずぐずとした日常をすごしている人々。
詩を書く少女。
男と少女が恋に落ち、それまで平穏だった日常が歪み始める。
そこにひとりの「男」が訪れる。
ダイナマイトを見せ、英雄になりたくないか、とふたりのテロリストに迫る。
そしておこる悲劇──。
(チラシより)

 記憶に間違いがなければ寺山修司の作品が上演されているのは初めて観た。今観るとアングラっぽく時代性を感じさせられる作品だが、1960年を舞台にしたこの作品自体が1960年に書かれているのだから、当時としてはあくまでも現代劇だったのだろう。

 非シス人(こう書いて“ナルシスト”と読む)という劇団も初見。vol.15で5周年記念公演とも銘打たれているが、どういうタイプの劇団かまったく予備知識無しに劇場に入った。役者によってややレベルに差があったが全体としてよく雰囲気が出ていたと思う。

2012/07/22-13:00
非シス人「血は立ったまま眠っている」
サンモールスタジオ/当日券3800円
原作:寺山修司
構成・演出:間天憑
出演:竹下優子/飯田千賀/重井貢治/末廣和也/若狭愛子/平田将希/長島竜馬/石井健土/石川利恵/上杉綾/矢澤深雪/小川友子/久永廣士/宮本英喜/天憑
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2012年07月21日

芝居流通センターデス電所「神様のいないシフト」

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菅原ミチルは弱っていた。
バイトに行きたいのに行けないのである。
ミチルはバイト先に休ませて欲しい旨を伝える。
しかし急な欠勤はバイト先だって困るのだ。
シフトが滅茶苦茶になる!
しかしどうしてもミチルにはバイトを休まねばならない事情があった。
ミチルの恋人、ナツミが宙に浮いているからである。
しかも、眠ったまま。
そう。
ミチルの恋人は悪魔に憑かれていたのです。
そんな中、教会から悪魔祓いのスペシャリスト、
勅使河原神父がやってきて悪魔と対峙する!
ナツミに憑いた悪魔はおちるのか?
どうして悪魔が憑いてしまったのか?
勅使河原神父は神の力を借りることができるのか?
そしてミチルは、バイトを休むことができるのか?
「神様、次いつ入ってくれんの!?」
(チラシより)

 チラシに書かれた上記のあらすじは少々変更されているようで、バイトはそんなに話の中心ではなくなっていた。彼女に憑いた悪魔は本物なのか狂言なのか、霊感のある友人が連れてきた神父は本当に悪魔祓いの力があるのか。どこまで嘘でどこから本当なのかめまぐるしく転換する。

 前回のジョギリ婦人は比較的一本道でどんどん話が深く重くなっていったのに対し、今回はオカルトとコメディを行ったり来たりする印象で、観劇のスタンスが取りづらく感じた。どんでん返しは2回以上重なると疲れてしまう。

2012/07/21-19:00
デス電所「神様のいないシフト」
駅前劇場/事前入金3300円
作・演出:竹内佑
出演:岸潤一郎/山村涼子/丸山英彦/豊田真吾/浅見紘至/國武綾/四宮章吾
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ニットキャップシアター「ピラカタ・ノート」

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「古事記」が好きです。
命や性に関して残酷な描写、
現在では許されないような表現が多々あって、
最初は過激に思えたものですが、
今ではその過激さも稚拙で大らかなものに思えてきました。
そしてその大らかさのなかにあたたかさすら感じてしまい、
暇があれば読むようになりました。
「古事記」によると人間は草だそうです。
どんなに愛そうと苦しもうと草である。
この情感に深く共感して
「ピラカタ・ノート」をつくりました。
残酷さだけで終わらない、
美しさと強さを感じていただければ幸いです。
───ごまのはえ
(チラシより)

 上記のように古事記になぞらえた国生み伝説から始まるが、並行して現代の家族やコミュニティのドラマも展開する。関西のベッドタウンとして作られた枚方の団地で暮らす夫婦。彼らが飼っている魚の水槽。京阪電鉄の神様。悪ガキにいたずらされる少年とその姉。多様な物語がシームレスに語られていく様子はとても素敵だった。

 深く読めば残酷なところもあるが、残酷なことであっても全部許容するような懐の暖かさを感じる舞台だった。特にこれといった起承転結があるわけではないが、それでも物語を感じさせる巧みで優しい演出を堪能した。

2012/07/21-14:00
ニットキャップシアター「ピラカタ・ノート」
アトリエ春風舎/事前入金3000円
出演:門脇俊輔/高原綾子/澤村喜一郎/市川愛里/織田圭祐/藤田かもめ/ごまのはえ
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2012年07月15日

悪い芝居「カナヅチ女、夜泳ぐ」

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真夜中。潮の香り。爆音。煌々と照らされる白い顔。
海の近くに生まれ育って、潮の香りを嗅ぐとイヤでも青春を思い出しちゃう。
その思い出す青春の風景っていうのは、電気消して闇に潜り込んで色んな動画を見て過ごした夜の部屋なんだけど、夏場に窓を開けてたから、そこから入り込んでた潮の香りがフラッシュバックして青春を思い出すんだ、きっと。
実家からすぐの浜には、海なのになぜか河童が住んでるとか言われていて、まあ誰も信じてないわけだけど、高校生くらいのときに、その浜に浮浪者のオバサンが住み着くようになって、
町の人間から魔女だとか呼ばれてた。
河童は信じてないくせに、オバサンは本当に魔女だと思ってた。
「愛に溺れてるのよん。こんなでもまだ自分に期待してるのよん。」
魔女のオバサンは口癖のように言っていた。(続きは劇場で)
(チラシより)

 30歳になる女性が東京に出てきてからの10余年を振り返る話だが、回想と妄想が混然一体となっている上にカオスとしか言いようのない舞台美術と照明に飲み込まれて、だんだん頭がボーッとしてきた。観劇の体感としては悪くない。

 女性が10余年を振り返ることから、トープレの「IN HER TWENTIES」を思い出した。比較するようなものではないが、トープレの描き方があまりに斬新だったので、悪い芝居がオーソドックスに見えてしまった。

 河童の話は妄想なんだろうか、それとも本当に河童という設定だったんだろうか。そこがよくわからなかったが、演じた吉川さんが実に魅力的だった。サイトの説明に「紆余曲折を経て少しばかりセクシーさが増した」と書かれていたが、確かにそうだと思う。

 悪い芝居はだんだん評価が上がっているようだけど、個人的にはもっとぶっ飛んでいた昔の方が、観ていて腹が立ったけど面白かったように思う。

2012/07/15-14:00
悪い芝居「カナヅチ女、夜泳ぐ」
王子小劇場/劇場支援会員
作・演出:山崎彬
出演:池川貴清/植田順平/大川原瑞穂/呉城久美/畑中華香/宮下絵馬/森井めぐみ/山崎彬/村上誠基/大塚宣幸/渡邉圭介/吉川莉早
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2012年07月14日

劇団ジャブジャブサーキット「死ぬための友達」

sinutamenotomodachi.jpg

死ぬための友達は
本当のトモダチ
果たせなかった
夢のカケラを
笑いながら葬ってくれる
優しい友達

死ぬための友達は
本当のトモダチ
明日のランチの
話などしながら
不意に命すら奪ってくれる
力強い友達

死ぬための友達は
本当のトモダチ
もしかしたら
最期の刻まで
友達だと気づかせもしない
頼もしい友達

  ───ナト族の古い詩歌より
(チラシより)

 福島の立入禁止地域のそばにアトリエを借りた病気の画家とその主治医。そこにジャーナリストや国会議員になった旧友、路頭に迷いかけていた女芸人達などがやってくる。

 最初は何の話かよくわからなかったが、少しずつ原発と隠蔽に関するものだとわかってくる。批判や風刺というよりも、強烈な憤りが台本の裏側でふつふつと湧いているような印象を受けた。比較的現地から遠い岐阜の劇団がこれを作って東京で演じることには勇気がいったのではなかろうか。

 ラスト近くなってから主人公が本当の目的─現地への潜入調査─を始めるのだが、それまで彼がさほど語らなかったのでやや唐突だった。それは周囲を欺くためのことだったかもしれないが、この場合に観客まで欺いてもしょうがないのではなかろうか。

 総じて、作者の思いは何となくわかりながらも、作品としてのメッセージは少々受け取り辛いものになっていた。

2012/07/14-19:30
劇団ジャブジャブサーキット「死ぬための友達」
ザ・スズナリ/当日精算3300円
作・演出:はせひろいち
出演:栗木己義/はしぐちしん/荘加真美/コヤマアキヒロ/小関道代/岡浩之/なかさこあきこ/相川出后/野村美幸/田中里実/柿野正人
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範宙遊泳「東京アメリカ」

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東京都世田谷区船橋3丁目に家族がいる。
家族は演出されている。
家族が演出されているのを、演出する人がいる。
(チラシより)

 演劇の稽古場をそのまま舞台化したような作品。芝居への情熱みたいなものの隙間からドロっとした人間関係がこぼれる姿が苦笑いを誘う。だんだん本当に稽古してる所を観ているような気分になってきたが、実際はあくまでもそういう「芝居」だ。こういう形でのリアリティというのはちょっと反則な気もするが、アイデアとしては良いだろう。

 実際の練習風景がどこまでこんな感じなのか自分にはわからないが、所詮人間の集まりである以上だいたいこんな風になるのではないか。演劇やってる人ならなおさら面白いだろう。嫌な体験を思い出してしまうかもしれないが。

 途中で休憩が入ってその間に舞台上に舞台が設営されるが、名古屋公演では本当に観客も休憩になったらしい。東京ではあくまで芝居の中での休憩時間だった。公演を繰り返しながらそうやって変化していく所も含めてかなり実験的だとが、考えてみたら範宙遊泳の作品はいつもメタ演劇だ。

2012/07/14-14:00
範宙遊泳「東京アメリカ」
こまばアゴラ劇場/当日清算2500円
作・演出:山本卓卓
出演:大橋一輝/熊川ふみ/埜本幸良/浅川千絵/斉藤マッチュ/高木健/田中美希恵/福原冠/緑茶麻悠/山脇唯
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2012年07月08日

エビス駅前バープロデュース「葬式クラス2012(28期生)」

「中学時代の同級生がまた死んだ」
自分のまわりにまとわりつく「死」の匂いを感じながら
バカみたいにパーティーを続ける人たちの物語
(当日パンフより)

 数年ごとに誰かが死んで、葬式が同窓会のようになっている元クラスメート達の話。こんな設定なのにミステリーではないところがまた面白い。登場する人物は誰も死なない。会場がエビス駅前バーなので、彼らが集まるバーが舞台になっている。

 親友だったり仲が悪かったり、恋心を抱いていたりホモだったり、まあそれぞれ単純ではない学生時代の人間関係を引きずりながら大人になっていく。いくつかの話のオムニバス?になっており(つまり毎回誰かの葬式)、2年おきくらいに時間が進む。

 縁起の悪い話だが飲んだくれの一員としてバーの芝居は好きだ。自分は地元を離れて久しく、高校までの友人はほぼ連絡が耐えているため、未成年の頃から付き合いのある飲み仲間はほぼ皆無だ。だからこの話の登場人物達のような付き合いにはちょっと憧れる。この作品の場合あまり仲間入りはしたくないが、眺めている分には微笑ましかった。

2012/07/08-17:00
エビス駅前バープロデュース「葬式クラス2012(28期生)」
エビス駅前バー/当日清算2500円
脚本:米内山陽子
演出:広瀬格
出演:岡見文克/金崎敬江/篠原あさみ/伊藤信隆/萩山博史
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まごころ18番勝負「錯惑の機序、或いはn質点系の自由度 The Slight Light Like Sleight of Hand.」

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事故で引退を余儀なくされたマジシャン。
再起をかけたイリュージョンの最中、惨劇は起きた。
衆人環視の密室殺人、そして更なる被害者が――
まごころ18番勝負、一年半ぶりの本格ミステリは、
絶海の孤島を舞台にした連続密室殺人事件!
(チラシより)

 なんちゃってではなく本気でミステリーものの作品。初見の劇団なのでいつもこんな感じなのかわからないが、小劇場系の演劇としてはちょっと珍しいと思った。

 とぼけているようで実は切れる探偵と、頑張ってるけどちょっと抜けてる助手。やたら怯えまくる女の子とかニヒルな医者、過去を秘めたマジシャンと訳ありなアシスタント、パニックを起こすタレントと冷静な業界人など、ミステリーを構成するためのパーツとして過不足なくキャラが配置され、もはやベタと言ってもいいくらいだ。

 探偵がずっと飴を舐めているのはキャラ作りとしてやりすぎな気がしたが、総じて悪い意味のベタさではなく、基本に忠実にしっかり作り込まれていたと思う。完全には謎を解ききらず余韻を残す終わり方も良かった。あれはどういうことだったんだろう?などと振り返って考えるのもまた楽しい。

2012/07/08-13:30
まごころ18番勝負「錯惑の機序、或いはn質点系の自由度 The Slight Light Like Sleight of Hand.」
王子小劇場/劇場支援会員
脚本・演出:待山佳成
出演:稲村優奈/大久保藍子/小田久史/川原元幸/榊原仁/谷田部勝義/さこうひとみ/鈴木健太/中村豆千代/簗木由貴/ゆきを
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2012年07月07日

燐光群「宇宙みそ汁/無秩序な小さな水のコメディー」

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地球に向かってただ一人、パラシュートで降り立っていく
エプロン巻きつけ 私が降り立ったのは
現代詩の新たなる野心が、台所の野戦基地から劇空間に舞い降りる!
(チラシより)

 「宇宙みそ汁」は清中愛子の詩集を舞台化した作品。戯曲として書かれたわけではない詩をテキストとして上演したものだが、決して単なるリーディングではなく立派な舞台作品になっていた。

 テキスト自体はすべて詩集および清中愛子の語った言葉であり、坂手洋二による追加はないという。しかしそうであることによるぎこちなさは微塵もなく、これはこういう戯曲なのだと言われても疑うことなく納得してしまう仕上がりになっていた。パンフレットには坂手洋二が清中の文章の“強度”を賞賛する言葉が連ねられているが、むしろ演出の力を見せつける所業だったようにも感じられた。

 「無秩序な小さな水のコメディー」は、さらに3つの作品に別れたオムニバス作品。くじらの話が2つと、水の話がひとつ。放射能のことか、自然破壊のことを扱っているのだと思うが、なんだか煮え切らない踏み込み方でスッキリしなかった。

2012/07/07-19:00
燐光群「宇宙みそ汁/無秩序な小さな水のコメディー」
梅ヶ丘BOX/事前購入3300円
(宇宙みそ汁)
  作:清中愛子
  構成・演出:坂手洋二
(無秩序な小さな水のコメディー)
  作・演出:坂手洋二
出演:円城寺あや/中山マリ/猪熊恒和/松岡洋子/樋尾麻衣子/川中健次郎/鴨川てんし/杉山英之/鈴木陽介/武山尚史/横山展子/田中結佳/桐畑理佳/福田陽子/加藤道子/永井里左子/小林尭志/宗像祥子/
声の出演:宮島千栄/武山尚史/小林尭志
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風琴工房「記憶、或いは辺境」

kiokuaruihahenkyo.jpg

「覚えます。これから覚えます。
あなたの国の言葉。
覚えようともしなかった。
あなたが日本語を話すのを
どこかで、
当然のことだと思っていました。」
一九四五年、樺太。
当時、日本統治下にあった朝鮮。戦時下の樺太には日本人も朝鮮人も同じ日本人として労働に来ていました。日本の敗戦によって朝鮮は日本国の属国ではなくなります。しかし樺太はソビエトに占領され、日本人は内地に帰ることができましたが、朝鮮の人々は、帰ることが許されませんでした。
「記憶、或いは辺境」は、その歴史的事実を背景とした、床屋を営む日本人一家と朝鮮人たちとの友情と愛情の物語。個人のちいさな営みが、大きな歴史の矛盾にすりつぶされていく姿を描いた劇団代表作の再演です。
(チラシより)

 太平洋戦争中の市民を描いた作品は多々あるが、樺太が舞台というのは初めて観た。「さようなら、さようなら、これが最後です」という言葉は有名だが、そこでどんな人達がどんな街を築きどんな風に暮らしどんな形で終わったのか、詳しいことは何も知らなかった。そこに朝鮮人労働者がいたことなど全然知らなかった。だからこの作品がどの程度まで史実か分からないが、風琴工房のことだから、7割くらいかなと勝手に想像している。

 物語自体はさほど奇抜な物ではなく、当時の日本人と朝鮮人は他の土地でもこんな風に接していただろうと思われる、差別や偏見が見えつ隠れつする日常が描かれている。敗戦の後にソ連が攻めてくる時期の混乱は、中国大陸でも似たようなものだったろう。そしてそういう極限状況ではきっと、この作品に出てくるような個人的な友情はより緊密になったのではなかろうか。

 登場人物の喋る言葉が方言と朝鮮語と片言の日本語だが、これがまたなんとも秀逸だった。私は朝鮮語を知らないのでそれが正確か否かは判断できないものの、違和感はなく感心した。戯曲を書いた作家にもそれを引き受け切った役者人にも脱帽する。

2012/07/07-14:00
風琴工房「記憶、或いは辺境」
シアターKASSAI/当日清算3300円
脚本・演出:詩森ろば
出演:香西佳耶/浅野千鶴/伊原農/ワダタワー/津留崎夏子/阪本篤/岡本篤/石村みか/金丸慎太郎
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