2012年05月27日

多少婦人「45°」

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 謝る人をテーマにした変則的な2話オムニバス。冒頭部分の話が後半に続き、その間に別の話が挟まっているという構成。なんでそうしたのか意図はよく分からなかった。タイトルはおじぎの角度かと思ったが、ほぼ直角になってた。

 あるあるネタ的な部分とナンセンスギャグ的な部分が混在した、ゆるい笑いが続く芝居で、爆笑することはなかったが始終ニヤニヤ笑いながら観ていた。嫌いではない。劇中で使われていた音楽の歌詞がなかなか面白く、誰のなんという楽曲なのか後で検索しようと思ったらオリジナルで、終演後にCDを売っていたので購入した。

2012/05/27-18:00
多少婦人「45°」
OFF・OFFシアター/当日清算2000円
劇作・演出:酒井雅史
出演:山本しずか/遠藤夏子/石井千里/みかん/酒井雅史/小宮凜子/筑田大介/平山瑞代/鈴木洋二/小林知未/山村遊哲/大浦孝明/吉田有里
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青☆組「キツネの嫁入り」

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むかしむかしの、未来の昔。
ある村に、おじいさんと、おじさんと、少年と・・男ばかりが住んでいました。 おじいさんは山へ芝刈りに、おじさんは川に水浴びに、少年は人間の住めなくなった森へお嫁さんを探しに行きました。
(チラシより)

 未来の昔話。なんで未来なのかと思ったら「千年前に閉鎖された廃工場と、毒のある金属」が語られるのだ。それは恐らく原発のことと思われるが、最後までそれは明確にはならない。物語の内容上必要がないのと、登場人物の誰もそれを知り得ないからだろうが、それがまた切ない。

 登場人物はいかにも昔話風で、難しいことはわからないが実直に生きている。女の子が生まれなくなり、草木が花を咲かせなくなっても、ただ仕方ないこととして受け入れ、そういう島でどうやって生きていくか模索している。

 その原因がなんであれ人類はやがて衰退し、いつか滅亡の日を迎えるだろう。人類最後の一人がいつどこでどんな風に生まれて死ぬか、それを題材にした作品は過去にもあったが、SF的なものが多かったように思う。この作品は優しい優しいおとぎ話だった。

 優しすぎて前半少し眠くなったし、後半も特にクライマックスがあるわけではないけれど、じんわりと温かみが伝わってくる舞台。スパイスのように練りこまれている風刺は決して前面に躍り出ることはなく、それゆえに観る者の反省を促す効果を持っていたと感じられる。

2012/05/27-15:00
青☆組「キツネの嫁入り」
こまばアゴラ劇場/当日清算2700円
作・演出:吉田小夏
出演:荒井志郎/福寿奈央/林竜三/藤川修二/大西玲子/高橋智子/石松太一/田村元/東澤有香
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2012年05月26日

劇団鋼鉄村松「西暦2222年2月22日の22時22分22秒」

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西暦2011年11月11日11時11分11秒。
デジタル時計の表示に同じ数字が12個並ぶ、人類史上初の奇跡の瞬間。
物語はそこから始まる。
デジタル時計のゾロ目に執り憑かれた男、モリシタ。
彼は4秒だけ過去に戻れる不思議な能力を持っていた。
この宇宙の物理法則をねじまげる奇跡の力でありながらも、
その効果時間の短さから彼には何も取り戻せない。
彼の手をすり抜けた大切な者も、言うべきでなかった言葉も、
のびてしまったカップラーメンすらも。
現実にはほぼ役にたたないその奇跡の力を中心に、
人々の現在と過去が交錯していく。
そんな中、過去によってデジタル時計のゾロ目に執り憑かれた男は、
その力を未来の為に使おうとした。
(チラシより)

 4秒だけ戻れるタイムトラベラー、遺体の冷凍保存技術を開発する胡散臭い会社、警備会社のボディガード、怪しげなジャーナリスト、一本気な研究者‥‥と、ありがちな感じの設定やキャラクターが居並び、小劇場としてはかなりストレートな作品だった。

 しかしストレートなりにきっちり構成されていて、脚本は良かったと思う。特に、ギャグとシリアス、かっこいいのと弱っちいのが巧みにすり替わるところはちょっとウルッときた。

 ただ舞台装置の質感が安っぽく、役者もしばしばセリフを噛むことがあったので、舞台の完成度は今ひとつだった。脚本が良かっただけに残念だ。

2012/05/26-19:00
劇団鋼鉄村松「西暦2222年2月22日の22時22分22秒」
シアターグリーンBASE THEATER/当日清算2500円
作・演出 バブルムラマツ
出演:ボス村松/ムラマツベス/村松かずお/サラリーマン村松/村松ママンスキー/藤本かな子/山村誠二/福満瑠美/藤堂巧
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アマヤドリ「幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい」

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小田ユキヒト、星野カズユキ、仁村ヒトミの三人は都内で一軒家を借りてルームシェアをしている。星野はある日、長期監禁から逃亡してきたという女、三谷クミコとコンビニで遭遇。たまたまそれを保護する。星野から彼女を警察に連れて行くよう頼まれた小田は、ふとしたきっかけから自分自身で三谷クミコを守りぬくことを決意してしまう。そうして始まった奇妙な4人暮らしは段々と歪みを見せはじめ……。
(チラシより)

 ひょっとこ乱舞が大爆破と称する最終公演の後、アマヤドリに改名して最初の公演。何か作風の変化があるかもと、期待半分不安半分でドキドキしながら観に行ったが、脚本は2009年に上演した「モンキー・チョップ・ブルックナー」を改訂したものであるためか、特にガラリと変わった印象はありませんでした(2009年のは観ていませんが劇団の作風として)。

 また、前回吉祥寺シアターで満席に近かった劇団がSTスポットで大丈夫なのか(客数的にも演出的にも)心配でしたが、それも問題なく。2009年にはシアタートラムだったようですが、むしろSTスポットの空間の方が作品に合っているように感じたのは演出の上手さによるものでしょうか。

 ひょっとこ乱舞は人の心の脆い部分をピックアップするような話が多い気がします。この作品は世間知らずの童貞が変な女に引っかかってのぼせあがった挙句、友達もなくして人の道も踏み外していく話というところでしょうか。彼が彼女にそこまで没入してしまうきっかけ部分はあまりはっきり描かれていないので想像に任されていますが。

 群舞のシーンのキレの良さは相変わらず惚れ惚れします。そこだけ集めたDVDが出たら買うかも。それを大画面でずっと映してるバーがあったら通いたい。

2012/05/26-14:00
アマヤドリ「幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい」
STスポット/当日清算2500円
脚本・演出:広田淳一
出演:笠井里美/松下仁/田中美甫/稲垣干城/糸山和則/小角まや/榊菜津美/中村早香/広田淳一
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2012年05月20日

イキウメ「ミッション」

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ある地方都市の一角、金輪町。

神山清巳は優秀な会社員。
幼い頃から常に周囲の期待を背負い、応えてきた。
兄の清武も、出来る弟の平凡な兄、という立場に慣れきっていた。
清巳はある日、自宅裏の斜面を転がってきた拳大の落石を頭部に受け、入院してしまう。
十日程して会社に戻ると進行中の企画チームを外されていた。
不条理な出来事に苛立つ清巳を両親は慰めるが、久しぶりに会った叔父の怜司は違った。

「自分にしかできない仕事なんて存在しない、本当の仕事を教えてやる」
怜司は主夫業の傍ら、密かに「本当の仕事」を持っている。
それは世界のバランスを取る重要な使命、と怜司は語る。
世界からの「呼びかけ」に応え、行為に移す。
その行為はどう見ても荒唐無稽で無意味だが、清巳にはその馬鹿馬鹿しさが新鮮だった。
(サイトより)

 内なる衝動に従って行動することで「世界のバランスをとっている」と語る叔父さん。彼はキャリアウーマンの妻と結婚して専業主夫になっている。ヒマにまかせて奇行に走る彼によって周りの人々が翻弄される。

 これまでの作品を観た感覚で臨むと肩透かしを食う。イキウメといえば超常現象と人間ドラマを融合した物語が定番だが、今回は超常現象なのかそうでないのか微妙な話だった。すべては叔父さんの妄想としても説明はついてしまうのだ。

 彼の言葉は本当なのか、ただの妄想にすぎないのか、それは最後まではっきりしない。それなら超常現象などではないと解釈する方がいいだろう。彼は妄想に従っていただけだが、それでも人を動かしたのだ。いいことか悪いことかは別として。

 エンターテイメントとして、この作品はさほど面白いものではなかったと思う。しかし色々な示唆に富んでいた。超常現象に頼らない物語だからこそ、リアルに自分の生き方を振り返らせる力があったと気がするのだ。

2012/05/20-18:00
イキウメ「ミッション」
シアタートラム/ぴあ事前購入4200円
作:前川知大
演出:小川絵梨子
出演:渡邊亮/浜田信也/井上裕朗/岩本幸子/安井順平/太田緑ロランス/盛隆二/伊勢佳世/森下創/大窪人衛/加茂杏子
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乞局奇譚集2012「EXPO」

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万博を巡る、5つの回顧録。
'70 日本万国博覧会(大阪万博)
'75 沖縄国際海洋博覧会
'85 国際科学技術博覧会
'88 さいたま博覧会
'96 世界都市博覧会
(チラシより)
 1970年代から日本で開催された万博を題材に、それぞれの時代に生きる人々の空気を絶妙に描いていく異色の舞台。作家はこういうアイデアをどうやって思いつくのだろうか、実に感心する。自分の記憶と重ねられるのは概ねバブルの頃からだが、いかにもという印象で笑ってしまった。

 乞局の短編集の第二弾であり、従来の不気味な作品とはだいぶ趣向が異なる。趣向としては正直なところ従来の方が好みだが、今回は墨井鯨子のすごさを堪能できたのが大きな収穫だった。いやもうほんとにあの人は素敵だ。

 自分が観た回には本編終了後におまけで「蜂」が上演された。こちらはちょっと気持ち悪い系の内容だが一人芝居としての質は高かった。

2012/05/20-14:00
乞局「EXPO」
スタジオイワト/当日清算2700円
作・演出:下西啓正
出演:石田潤一郎/岩本えり/墨井鯨子/三橋良平/浅井浩介(わっしょいハウス)/伊藤俊輔/田中のり子/中島佳子
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2012年05月19日

はえぎわ「I'm (w)here」

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何を思ってかグアムに行く。3時間30分。広島より近い。テレビなどでよく見るよな白い砂浜と透明な海があっさりと目の前にあり、顔を浸ければ色とりどりの魚たちがサンゴに群がっている。水中対応のデジカメを1万も出して買い、脳裏に焼き付けるより先に撮りまくる。
"バカンスに暮れる人々は日本人ばかりで、彼らはみな母国にいる時よりもほんの少し生命力が上がっているように見える。現地の人々も軽妙に日本語を話すものだからして、一瞬ここがどこだかわからなくなる。くらくらする。連れがプールで泳ぐ。ホテルの部屋からそれを撮る。地上10階。落ちたら即死だな。でも僕は落ちない。落ちないのだ、絶対に。
I’m here. "
(チラシより)

 演劇というよりライブパフォーマンスのようなスタイルだが、物語らしい物語も一応ある。その表現スタイルはいわゆる現代口語演劇とはまったく違う前衛的なものだ(前衛的という言葉の使い方は多分間違っている)。

 はえぎわの舞台を観たのは初めてで、個人的にはあまり肌に合うタイプではなかった。こういうのが好きな人も少なからずいるのはわかるし、前回の作品が岸田國士戯曲賞を受賞したのも不思議ではないと思う。

 しかし私が好きなのはもう少し普通の演劇なのだ。こういう作品はどうしても眠くなってしまう。ところどころ面白いのだけど、やっぱりいくらか寝てしまった。

2012/05/19-19:00
はえぎわ「I'm (w)here」
ザ・スズナリ/カンフェティ事前購入指定席3500円
脚本・演出:ノゾエ征爾
出演:井内ミワク/町田水城/鈴真紀史/滝寛式/竹口龍茶/踊り子あり/川上友里/鳥島明/富川一人/山口航太/ノゾエ征爾/金珠代/鈴木将一朗/笠木泉
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箱庭円舞曲「どうしても地味」

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参加していた政治運動がなんとなく上手くいってしまい、
求め続けていた新しい「今」を手に入れた活動家たち。
手に入らないからずっと求めてきたはずのものなのに、
手に入れた瞬間から、いつの間にか飽き始めていたことに気付く。
自分たちは、本当にこんなものを求めていたのであろうか。
(チラシより)

 東京から少し離れて目立った産業もない田舎の町に住む男が、線香花火を名産品にしようとするところから物語が始まる。町のみんなで協力しあって作った花火はそれなりに人気となる。でも、みんなの気持ちがひとつになるかというとそうでもなく、微妙に、あるいは明確にすれ違う。

 煙草が非合法化されていたり中国人が迫害されているなど、現実より少し極端に走った社会。そこから少し距離をおいて生きている登場人物は、ほぼ全員がどこか歪んでいたり非常識だったりしていて、聖人君子はいない。寺の坊主が一番腐ってる。そして田舎の町で暮らす人々のずるさと正直さと、めんどくさいけど捨てがたい人間関係。

 箱庭円舞曲の作品の多くで、こういった感じの設定があるが、今回もそれが熟した印象だ。ジワジワと状況が明らかになるに連れて濃くなっていく味を楽しめる作品だった。

 余談だが、布団に入った人物が出てくると別人になっているシーンがあり、どうやって入れ替わったのかまったくわからなかった。抜け穴があったのだろうが、その後どう見てもわからず、話の本筋から意識がそれるくらい不思議だった。

2012/05/19-14:30
箱庭円舞曲「どうしても地味」
駅前劇場/当日清算3000円
脚本・演出:古川貴義
出演:小野哲史/須貝英/爺隠才蔵/片桐はづき/菊池明明/木下祐子/磯和武明/神戸アキコ/小島聰/笹野鈴々音
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2012年05月12日

miel「 ま ○ る 」

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 6人の作家が戯曲を提供し、それら全てを金崎敬江が演出するという趣向。逆に同じ戯曲を異なる演出家が手がけるタイプの公演は過去に観たことがあるが、その逆パターンとでも言えるか。

 比較はしにくいが、戯曲と演出のどちらが強く自分のカラーを出せるか競っているような印象を受けた。その勝敗は五分五分というところか。どちらが良いというわけではないが、圧倒的に戯曲が支配している作品もあれば、演出によって初めて面白くなっていると感じる作品もあった。同時進行で異色の作品を次々演じる役者も大変だっただろう。

 終演後に配役表が配られたが、残念ながら各作品の内容や登場人物の配役までは書いていなかったので、顔と名前が微妙に一致しない役者がいて、それが残念。作品のタイトルは正直なところ関心がないのです。

2015/05/12-15:00
miel「 ま ○ る 」
ザ☆キッチンNAKANO/当日清算3000円
脚本:上野友之(劇団競泳水着/TOKYO PLAYERS COLLECTION)/佐々木なふみ(東京ネジ)/登米裕一(キリンバズウカ)/ハセガワアユム(MU)/ほさかよう(空想組曲)/吉田小夏(青☆組)
構成・振付・演出:金崎敬江
出演:北村圭吾/佐野功/末原拓馬/阿久澤菜々/石井舞/杉亜由子/金崎敬江
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2012年05月06日

リュカ.「天使たち」

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祈りと願いと、ささやかな希望──────
(チラシより)

 音楽や美術や文芸などのアーティストを目指す若者に寄り添うように居る、天使という存在。宿主と触れることで心を交わすことができる。人間には姿が見えない。宿主を選べる。たまに人間になってしまう。そんな存在の話。

 舞台はアーティストたちが集まるアパート。だから天使たちも集まっている。天使同士も仲が微妙だったり、状況に適応できなかったりする。そしてアーティスト志望の若者なんて十中八九は途中で挫折するもので、基本的にはうまくいかない状況がほとんどの中、天使たちもまた挫折する。

 それでも必死こいてがんばってる人々への応援というより慰めのようなお芝居。自分はアーティストではないのでピンと来ない部分も少なくなかったが、状況的には決して明るくない話なのに暖かい気持ちになれる不思議な舞台でした。

2012/05/06-14:00
リュカ.「天使たち」
王子小劇場/当日清算3000円
脚本・演出:渡邊一功
出演:池田ヒロユキ/こいけけいこ/増戸香織/境宏子/倉田大輔/サキヒナタ/佐藤祐香/小寺悠介/中田顕史郎/奥田ワレタ
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