
眠れない夜。(チラシより)
ずっと薄暗い天井を見つめて
いたが、さすがに飽き布団を出る。
部屋の隅には故郷から届いた大根の山。テーブルの上
には一通の手紙。突き刺すような寒さの中、やっとの
思いで着替えると手紙をポケットにねじ込み家を出る。
「なかなか人生が上向いてこない」。頭の中でつぶや
きながら、今日の担当車両ヘ向かう。
あるバス運転士の心の中を見つめる、
机上風景第20回目の物語。
田舎町の路線バスのドライバーの夢と回想。乗ってくる客がみんな知り合いというレベルの田舎だ。主人公は一度この町を離れてから戻ってきて運転手になったようだ。田舎の濃い人付き合いがあまり好きではないらしい。そして母親と死んだ兄との関係は複雑で微妙なものになっている。
運転手の心の声はスピーカーから流れるのだが、本人が舞台上にいるので当然それは録音だ。しかも彼のセリフの大部分が心の声なので、アフレコの逆をやっているような状態。せっかく生身の役者がそこにいるのだから、なんだか勿体無い使い方と感じた。
私が気付かなかっただけかもしれないが、物語の意味やテーマもあまり明確にはつかめず、かといって単純に面白くて楽しい観劇体験でもない。ラストも特に何かが解決することはなく、モヤモヤした感情を残す。これまでに観た机上風景の作品と違ってすっきりしない印象だった。
2012/04/29-15:00
机上風景「BUS DRIVER」
タイニイアリス/当日清算2500円
作・演出:古川大輔
出演:浜恵美/石黒陽子/長島美穂/平家和典/根津弥生/古川大輔
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