2012年03月25日

燐光群「ALL UNDER THE WORLD」

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気づいてると思ってた。この世界、とっくの昔に海の底。
並に消えた国境、地上なき世界。
がらくたとたましいの区別はない。
星からの指令はあなたの記憶。
風の日も、水の日も、土の日も、火の日も。
エンドゲームは、もうはじまっている。
(チラシより)

 戯曲を解体し再構成しているという、いわゆる実験的な舞台。従って物語は分解されていて掴めない。演劇をモチーフにした舞踏のようなものだと言えるだろう。

 正直、さっぱりわからない。視覚的には変化や強弱があって眠りに落ちることこそなかったものの、私の感覚には合わなかった。

2012/03/25-19:00
燐光群「ALL UNDER THE WORLD」
笹塚ファクトリー/当日清算3200円
構成・演出:リアン・イングルスルード/坂手洋二
演出補:相澤明子
オリジナル・テキスト:坂手洋二
出演:円城寺あや/宮島健/Benjamin Beardsley/中山マリ/鴨川てんし/川中健次郎/猪熊恒和/杉山英之/松岡洋子/樋尾麻衣子/桐畑理佳/安仁屋美峰/西川大輔/鈴木陽介/武山尚史//横山展子/加藤道子/福田陽子/田中結佳/声の出演 : 大西孝洋/宮島千栄
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芝居流通センターデス電所「ジョギリ婦人」

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大鋏が実にお似合いで御座います、マダム。

ご婦人足るもの、大鋏で細部を刈り取るのは嗜みと言っても差し支え御座いませぬ。
虐げられ、身体の細部を切り取られて死んだ婦人は世を憎み、
「ジョギリ婦人」として刈込鋏を手に都市を闊歩します。
婦人と出会ってはいけません。
出会ってしまったらすぐに指を全部隠して──。
(チラシより)

 ‥‥という都市伝説をモチーフにした物語。いつものように血が流れ人が殺し殺され死んでいくスプラッタな話だが、最近のデス電所の作品の中ではとても切なさや悲しさがしっかり描かれていたと思う。

 前作「ストライクバック先輩」は“嫌な奴”が前面に押し出されていたのに対し、今回は“かわいそうな親子”、とりわけ悲嘆にくれながら狂気に走った母の話だったと思う。結末はある意味救われたとも言えるが、逆に完全に地獄に堕ちたという解釈も可能だろう。

 比較的小さな劇場でしかも最前列で観たことが印象の違いになっているのかもしれない。次回からはもっと前で観るようにしたい。

2012/03/25-14:00
芝居流通センターデス電所「ジョギリ婦人」
「劇」小劇場/当日清算3500円
作・演出:竹内佑
音楽・演奏:和田俊輔
振付:豊田真吾
出演:山村涼子/田嶋杏子/丸山英彦/豊田真吾/福田靖久/浅見紘至/根田亜夢
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2012年03月18日

DULL-COLORED POP「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」

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父が死に、母は見えない猫を飼い始めた。母・よし子、61歳。くろねこちゃんとベージュねこちゃん。煙草の匂いの消えた実家は発泡スチロールみたいに荒涼として、僕は知らない。僕は知らなかった、幽霊みたいな自分たちの正体を。妹と口をきくなんて、一体何年ぶりだっけ?

くろねこちゃん、どこにいるの? ベージュねこちゃん、どこにいるの?
母さんそれ猫ちがう、それ何だ、何だろうこの素敵な世界は!
(チラシより)

 基本的に家族の話は苦手で、特にあからさまな「家族の愛情」を描いているものは勘弁してほしいと思っているが、この作品はまったく美しくない家族の話なので良かった。家族に干渉することでしか自分の存在を確立できない専業主婦の母は、それによって家族から敬遠されてしまう。そして子供が自立して夫が死んだ後はどんな心境になり、どんな行動を取るのか。

 この芝居で描かれていたのは痛々しい姿ばかりで同情する気持ちも湧いてこないのだが、見限って出ていったとしても母を傷つけたいわけではない家族たちの迷いがひしひしと伝わってきた。父の遺言を読む場面とそれに続く兄妹の会話がそのクライマックスだろうか。

 アフタートークの中で、この話はハッピーエンドなのかバッドエンドなのかという話題が出て観客に問うたところ、多数派はハッピーエンドだったがバッドエンドと解する人も少なくはなかった。確かにどちらとも取れると思う。私自身はハッピーエンドに挙手した。状況はちっともハッピーじゃないけど、状況の受け入れ方は前向きだったと思ったからだ。

 しかし後味は甘辛い。

2012/03/18-14:00
DULL-COLORED POP「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」
アトリエ春風舎/当日清算2500円
作・演出:谷賢一
出演:東谷英人/大原研二/塚越健一/なかむら凛/堀奈津美/百花亜希/若林えり/佐野功
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2012年03月17日

FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」

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助手席で笑ってばかりいる私 片側だけの愛を教わる 順子
みんなで一人旅。
(チラシより)

 楽しくて賑やかでセンスのいい奇妙なミュージカル。全体を通じた物語があるのかないのか、あっても別に重要じゃないのかよくわからなかったが、断片的なシーンの連続として観ても十分に面白かった。

 FUKAIPRODUCE羽衣という団体名は以前から知っていたが、どういうタイプなのかわからず観ていなかった。初めて観て、こんなに面白いならもっと早く観れば良かった!と後悔することしきり。

 もんもんとした少年時代、大人になって旅に出る頃、夜の繁華街で出会う男女、そして子供を育てる母たち、全体を通じて家族とか恋人とか人の繋がりがテーマになっていたと思う。いつもならその手の作品は苦手なんだけど、今回はとても楽しかった。

 その理由はおそらく、「こういう関係が素晴らしい」という価値観の押し付けがなかったからではないだろうか。とにかくもがいて模索して失敗したり成功したりしている人々の悲喜こもごもの姿を面白おかしく描くことだけを徹底していて、結論は特に示していない。だから誰でも楽しめる作品になっていたのだと思う。

2012/03/17-19:00
FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」
こまばアゴラ劇場/当日清算2800円
プロデュース:深井順子
作・演出・音楽:糸井幸之介
出演:深井順子/日高啓介/鯉和鮎美/高橋義和/寺門敦子/澤田慎司/伊藤昌子/西田夏奈子/加藤律/幸田尚子/並木秀介/金子岳憲
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2012年03月11日

アガリスクエンターテイメント「異性人/静かに殺したい」

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「静かに殺したい」
大学生の連続殺人犯、笹井涼介。
ある日、彼がいつものように一目惚れした女性の死体を
解体している、そこに酔っ払ったサークル仲間が、
大勢で部屋に押しかけてきた!
何も知らずに部屋を物色する友人たち。必死に追い返す涼介。
果たして彼は、死体を隠し通すことができるのか…?
(チラシより)

 アイデアは特に目新しいものではないが、展開の運び方は面白かった。ベタなんだけど上手に構成していたと思う。ラストにちょっとしたどんでん返しがあり、感の鋭い人なら早い段階で気づいたかもしれないが、私は最後まで気づかなかったので結構感心した。

 ただ、全体的に演技演出は学生演劇っぽいガチャガチャしたもので、あまり洗練された印象はない。もっと上手い役者とセンスのある演出が揃えばかなりの秀作になりうるのではないだろうか。

「異性人」
「宇宙人」と名乗る集団が世界各地に出没しはじめ早一年。
彼らは皆、成人男性の姿をしており、
そして二人で手を繋いで活動していた。
とある事故で命を落としたはずの青年が目を覚ますと、
自称「宇宙人」の謎の男と手を繋がされていた。
 “お前を蘇生させるまで、
   私が新しい相棒を見つけるまで、
    我々は手を繋がなければならない”
片割れを失った宇宙人に告げられた、一方的なルール。
周囲の誤解を恐れた青年はその様を隠して暮らそうとするが、
噂はどんどん広まっていき…
(チラシより)

 こちらは割と斬新なアイデアの作品。宇宙人役の人が本当に人間じゃないっぽい雰囲気を出していて面白かった。そして荒唐無稽な設定の中に、差別や偏見に関するドロっとしたものを混ぜ込んでいたようだが、それが説教くさくなる寸前でコメディの枠に収まっていた。いやちょっとだけはみ出ていたかもしれないが、あくまでコメディだった。

2012/03/11-19:30
アガリスクエンターテイメント「異性人/静かに殺したい」
シアター・ミラクル/当日券2500円
脚本・演出:冨坂友
出演:浅越岳人/鹿島ゆきこ/塩原俊之/江本和広/如月せいいちろー/木村ゆう子/甲田守/後藤慧/斉藤コータ/菅谷和美/細井ひさよ/望月雅行
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2012年03月10日

桃園会「blue film」

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あの崖の下の海は暗くうねって、
途方も知れぬ深さを誇っていたというのに、
今はすっかり引き潮で
ごろごろと無様に転がる岩の間を
麦わら帽子を被った家族連れが
潮干狩りなんかを楽しんでいる。
そら、遠くてこちらを睨んでいるのは
あれはなんて名前の鳥だったか。遥か沖合に立つ影は
まっすぐ伸ばした私の小指くらいの大きさで、
さて、どれ程の背丈なんだか、果たして鳥なんだか。
私は相変わらず旅行鞄一つ提げ、ぼんやりと、
はて、何処に立っているのか。連れの猫もいないので、
私とさっきから話してる人に聞いてみた。
見よ。
遙か遠く、何処までも続く、白い波、ひとすじ。
光速に至り、過去に届くか。
(チラシより)

 どこかの駅で電車を待つ数人の男女。思い出の中にある子供時代と、法事から帰る大人たち。それは震災から七年後。誰の思い出なのか、回想なのか夢なのか、はっきりしないまま物語が描かれる。何か幻想的な物語。

 震災と言ってもそれは阪神淡路大震災の方。大阪の桃園会が今この作品を東京に持ってきて再演した意図は色々と想像が可能だ。関東の人は今まさに震災を抱えている。この作品に出てくる人たちの境地に達するのはもう少し先のことになるだろう。

 七年後にまた観てみたい作品だ。その時自分はどんな心境にあり、どう受け止めるだろうか。

 ちなみに、この作品にblue filmというタイトルが付いている理由はよくわからない。

2012/03/10-18:00
桃園会「blue film」
ザ・スズナリ/当日券3300円
作・演出:深津篤史
出演:はたもとようこ/亀岡寿行/森川万里/長谷川一馬/橋本健司/寺本多得子/原綾華/福良千尋/大江雅子/奥野彩夏/小野亮子/阪田愛子/神藤恭平/速水佳苗/久保田智美
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ひょっとこ乱舞「うれしい悲鳴」

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今回は『感度』を巡る舞台です。
痛がりとか、くすぐったがりとか、鼻が利くとか、耳がいいとか、あるいは、敏感肌とか、アレルギー体質とか、他人の痛みが「わかる」とか「わかんない」とか、無感動とか、不感症とか、「イッちゃうイッちゃう」とか、「マジ痛ってえ」とか、
そういう、皮膚の内側と外側をつなぐ火花の「感度」に着目した舞台を作ります。
物語は「痛覚のない男= 無鉄砲野郎」と「感度の良すぎる女=イキ過ぎ女」を中心に進みます。
二人は「感度」について常識から大きく外れてしまっていて、他人との間に埋められない溝を感じています。
お互いを「発見」してしまった二人は、世界に全く新しい何かを見出して、周囲の人間を大量に巻き込んでどこまでも突き進みます。
若気の至りの猪突猛進の果てに、うれしい悲鳴のこだまする狂喜と乱舞と絶叫の場所を目指して、進みます。
もう集大成みたいな作品は去年作ったので、ひょっとこ乱舞としての最後、行き止まりまで行ってみます。
(チラシより)

 現在の団体名での最終公演。前回公演で初めて観劇し、これは素晴らしい、今後は毎回観ようと思ったらいきなり最終公演。大爆破というので解散かと思ったら名前が変わるだけのようで一安心しました。

 物語の設定はかなり奇妙なものですが、こだわることなくあっさり説明することですんなり受け入れさせてしまう説得力がありました。別にそういう点の本当らしさを観にきたわけではないからかもしれませんが。

 前回もそうでしたが、装置や演出にとても澄んだ印象があります。整然と乱雑が交互にやってくるダンスシーンは不思議とワクワクし、観ながらニヤけてきました。

 特異な状況にあるキャラクターの独特な感情にさほど違和感なく共感できるのは、ダンスの美しさだけでなく演技力または戯曲の巧みさが寄与しているもだろうと思いました。

2012/03/10-14:00
ひょっとこ乱舞「うれしい悲鳴」
吉祥寺シアター/当日清算3200円
作・演出:広田淳一
出演:中村早香/笠井里美/根岸絵美/松下仁/糸山和則//田中美甫/渡邉圭介/稲垣干城/広田淳一/倉田大輔/西川康太郎/伊藤今人/荒井志郎/永島敬三/小角まや/熊谷有芳/榊菜津美/鈴木由里/杉 亜由子/荒木昌代/片山/ひょい/太田旭紀/山森信太郎
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2012年03月04日

川崎インキュベーター「ハイパーアトラス」

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神奈川県川崎市川崎区にとても似ている区域、「カワサキ区」
そこはドームに覆われ、
何人たりとも出入りを許されていない。
しかし区民は、ドームの中で幸福に暮らしていた。

旧JR川崎駅に研究施設を置く「メルカトル研究所」、
旧ラチッタデッラに機関を置く「カワサキスキー財団」、
そして財団の下部組織である、スーパーレスキュー隊「ハイパーアトラス」が
感情処理装置「ディスポーザー」を操り、
区民たちの負の感情を「感情ゴミ」として処理することで、
区民たちを支え守っているからだ!

だがある日、ドームの外から来たという男が現れ、
人々の生活は変わってしまう・・・!

川崎インキュベーターがお送りする第4回公演は
地域密着型SFファンタジー!
(チラシより)

 川崎インキュベーターという団体がどういうものか知らないのですが、地元の文化芸術振興団体のようなものでしょうか。合同公演ということで、普段からこのメンバーで活動しているわけではなく、イベントとして集まって作ったようです。そういう経緯と出演者35名という規模から、まあ発表会的なものかな?と思いながら観劇しました。

 予想は概ね当たっていたと思いますが、出演者の演技力にばらつきがあるのを本格的な音響と照明でカバーしており、展開はちょっとベタな気もしますが見せ場も多くて良くできていたのではないでしょうか。

2012/03/04-18:30
川崎インキュベーター「ハイパーアトラス」
ラゾーナ川崎プラザソル/当日券3000円
脚本:河田唱子
構成・演出:笹浦暢大
出演:綾水月夜/安藤友美/石戸サダヨシ/伊藤綾佳/伊藤優希/大山武史/岡朝子/蔵重智/斉藤慎介/三枝ゆきの/佐藤みつよ/里見駿/宍戸麻衣/島貫晶江/清水智未/須藤旭/田辺敬太/田原慎太郎/辻創太郎/ナラハナミ/根生夏美/ひとみまさこ/深尾尚男/藤井雅貴/布施晃/古川結衣/増渕清美/三木美毅/三森伸子/南ちえみ/森田竜介/柳田清孝/吉永麻美/龍谷真紀子/高島正典
ゲスト出演:桑野東萌/井上麻里奈/森澤碧音
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2012年03月03日

あひるなんちゃら「まあまあだったね」

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喫煙所で語る宇宙とロマン。でも、タバコは吸わずに、男だらけで、70分。
(チラシより)

 いつも通りまったりというかダラダラした会話の連続。まして今回は場所が喫煙所だから、なおのことしょーもない会話が続く。元同僚が宇宙に行ったという話はいきなり荒唐無稽な感じもするが、結局出てくるトークは脱力するばかり。

 なんというか、飲み会で友達がしゃべっているのを半分眠りながら聞くとはなしに聞いているような感覚で観劇していた。たまに眠くなって落ちかける。でもそれで良いのだと思う。あひるなんちゃらはそういう劇団だろう。マジメに聞くほど中身のある会話でもない。

 今回は男性ばかりということで、いつも締めている黒岩さんがいなかったのは残念だが、まあそういう時もあっていいさね。

2012/03/03-15:00
あひるなんちゃら「まあまあだったね」
OFF・OFFシアター/当日券2500円
脚本・演出:関村俊介
出演:根津茂尚/関村俊介/江崎穣/佐藤達/澤唯/三瓶大介/永山智啓/堀靖明/三枝貴志/渡辺裕也
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