2012年02月26日

電動夏子安置システム「君には頭がさがる」

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昭和初期のとある山村。
近年発展めざましいこの国でも、通信交通の行き届かない山村では
未だ不可解な習慣に囚われている。
村の祭りでは数年に一度、籤によって村人を一人選び出し、
神様への供儀とするため川に流すという。
ある年、男は幸か不幸か籤を引き当てた親友の身代わりとなり自らその役目を買ってでる。
祭りの日、男は申し訳なさそうにする親友の顔を尻目に、川に流されていった。

そしてそのまた数年後。
「誰か一人の命と引き換えにしなければならない」事態が村に降りかかる。
それが核戦争だったのか隕石だったのか宇宙生命体だったのかはよくわからない。
もっとくだらない事だったかもしれない。
村の寄合では連日、誰を人身御供にするかの議論が交わされるが、誰一人として進み出る者はいない。
彼らの脳裏には、一人の男の顔が浮かんでいる。
「あいつみたいな奴がいれば」と。
(チラシより)

 古い風習や伝説が残る田舎の村の話‥‥だが物語はどんどんゲーム性を帯びてくる。前回見た「シャハマーチ」は全体がゲームの中だったが、今回も俯瞰してみると似たような構図があった気がする。

 テンポ良く進む多人数漫才のような会話が心地よい。登場人物は決して少なくなく、途中からだんだんややこしくなっていくが、どうにか置いていかれずに着いて行けたと思うが、ラストだけは「あれ?」という印象を受けた。じっくり考えると確かにそういう伏線はあったが、それはちょっとなあ‥‥

 この作品が描いていたものは色々と奥深そうであるが、あまりそこには深入りしない。表面しか観ていないのかもしれないが、それでも十分に楽しかった。

2012/02/26-19:00
電動夏子安置システム「君には頭がさがる」
シアターグリーン BASE THEATER/当日精算2800円
脚本・演出:竹田哲士
出演:渡辺美弥子/小原雄平/道井良樹/澤村一博/なしお成/じょん/高田淳/田口愛/堤千穂/林佳代/谷仲恵輔/古川健/片桐俊次//小早川知恵子
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MONO「少しはみ出て殴られた」

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建物の中に国境線がひかれた─ 何も変わらないはずだったのにね。
ある時ヤツがふざけて言った。「この線から出たらダメってことにしよう」
私はわざと線から手を出してやった。ヤツは笑いながらその手を押し返した。そんな戯れを繰り返した。それからどれくらい経ったっけ?
遊びたくなったので、私は笑いながら手を差し出した。すると……ヤツは突然殴り掛かってきた。一切の笑顔を消して。
見えない線。線とは何かを巡る寓話。
(チラシより)

 架空の国の刑務所の中。政変が起きて国が分割された。囚人たちは自分の出身地でどちらの国に属するか決める。他愛のない冗談で始めたことのはずなのに、次第に本物の「線」が生まれていく。友達だったのに。仲間だったのに。本気で憎み合い始める。

 実にいやな話だ。人間の歪んだ面がジワジワと露出していく。後半は沈痛な面持ちで観ていたと思う。染み入ってくる作品だった。

 発想自体はありがちだろう。しかし普通の劇団がやったら説教じみた陳腐な芝居になってしまうであろうテーマを、MONOはこんなに明るく切なく苦しく描いてみせる。結末はかろうじて救われる。でも救いすぎもしない。MONOは本当にいい芝居を見せてくれる。久しぶりに実感した。

2012/02/26-14:00
MONO「少しはみ出て殴られた」
吉祥寺シアター/当日精算4000円
作・演出:土田英生
出演:水沼健/奥村泰彦/尾方宣久/金替康博/土田英生/岡嶋秀昭/諏訪雅/中川晴樹
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2012年02月25日

劇団サンプル「女王の器」

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言葉が強迫観念的にまとわりついたり、福音のように響いたりするのは
ツールとして優れているわけではなくて、弱点じゃないかと思うことがある。
もっと言葉はバイアスのかかっていない状態で消費されるべきじゃないかと。
もう少し地味にというか、物事一つにつき、言葉一つ、二つの状態が望ましいのでは?
(以下略)
(チラシより)

 名前はよく見かけたが観劇するのは初めて。なんだか抽象画のような舞台だった。一応、軸となる設定や物語はあるものの、そこから派生するエピソードもしくはパフォーマンスが豊かすぎて、どういう視点で観るべきかつかみかねた。なんとなくすごい感じだけど何がすごいのかわからないという気分だ。

 松井周は前作「自慢の息子」で岸田国士戯曲賞をとっているし、多分好きな人にとってはすごくいい舞台なんだろうけど、残念ながら私の肌には合わなかったようだ。

2012/02/25-19:00
劇団サンプル「女王の器」
アルテリオ小劇場/当日券3500円
作・演出:松井周
出演:古屋隆太/奥田洋平/野津あおい/岩瀬亮/羽場睦子/稲継美保/川面千晶/菊池明明/とみやまあゆみ/師岡広明
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コマツ企画「レイプの夜」

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あの男が私を乱暴したんだ。被害者は私だ。私は被害者だ。
女の部屋に一人の男。
(チラシより)

 いかにも釣りっぽいタイトルとチラシ画像。しかしまあ中身はそんな直球でもあるまいと思ったらやっぱりそうだった。エロい要素も悲劇性も社会性もほとんどなく、変な人たちのとぼけた会話劇。

 柿喰う客からの客演で主役?の深谷由梨香は、高音なのにハスキーな独特の声質で、会話している時は好きなのだが叫ばれると耳が痛い。コマツ企画のホームページにあるように、深谷由梨香以外はほぼ無名の役者だったが、いずれもなかなかいい演技をしていて良かった。基本的にみんな気持ち悪いんだけど。

 この劇場はいつもそうだが二面座席で、今回は私のいた方が「横」だったみようだ。残念ながら役者の背中を見る場面が多かった気がする。その見極めがなかなか難しい。

2012/02/25-14:00
コマツ企画「レイプの夜」
小劇場楽園/当日清算3000円
作・演出:小松美睦瑠
出演:深谷由梨香/西本泰輔/木田毅祐/吉川順子/小松美睦瑠
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2012年02月19日

TRASHMASTERS「狂おしき怠惰」

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美しい人間であろうとすれば
騙される

損をしたくないと思っている人間ほど
搾取される

マイペースに生きたいと願えば
時間に追われ

世の中がおかしいと叫べば
嘘つきだと呼ばれる
(以下略)
(チラシより)

 二幕で三時間越えの大作。一幕は現在の病院を舞台に現場から、二幕では近未来の製薬会社の応接室を舞台に政治的な視点から、それぞれ日本の医療問題を描き出す。

 社会派でものすごい力作なのはわかるが、長時間の上にあまりにも熱血の正義感すぎる主人公がしばしば大声で演説をぶつので、観ていてだんだん疲れてきた。駅前劇場のパイプ椅子で三時間休憩なしは辛い。

 幕間で完全にセットを入れ替えるためかなり長い時間があり、そこを利用してふたつの場面の間を埋めるストーリーがスライドとナレーションで足早に語られる。しかしこんなことするなら休憩にしても良かったのではなかろうか。

 まあ、この劇団はいつもこんな感じとのことで、そういうところがあってもいいとは思うけど。

2012/02/19-18:00
TRASHMASTERS「狂おしき怠惰」
駅前劇場/当日券4000円
作・演出:中津留章仁
出演:カゴシマジロー/ひわだこういち/吹上タツヒロ/龍坐/阿部薫/星野卓誠/川ア初夏/林田麻里/片山享/粟島瑞丸/山崎直樹
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セカイアジ「熱の華」

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スクラムを組む足音
怒号と歓声
迸る水しぶき

朝日があたる部屋の窓から
遠くの戦いの気配が入ってくる

ぼくたちはこの部屋にロージョーして
戦いの準備に余念がない

ぼくたちはただ、むしばまれることで再生を願った
そしてそれを、革命とよんだ

アジトで蔓は青々と茂る

きっと毒々しい色の華が咲いて
汚れたこの土地を
あっという間に浄化するんだろう

ぼくたちはただ、むしばまれた世界で成長を願った
そしてそれを、未来とよんだ

ぼくたちはただ、むしばまれることで種を蒔いた
そしてそれを、希望とよんだ
(チラシより)

 時代背景は60年代頃か?まだ学生運動が盛んで、革命を目指す活動家が公安当局から目を付けられている。お金持ちっぽいリーダーが借りた大きな屋敷で、なにやら怪しげな植物の栽培を試みている。その植物の蔓がスルスルと不気味に成長していく。

 過去にその屋敷に住んでいた女性が失踪した話と、植物を扱う学生たちが研究している話があるのだが、どうも時系列がわかりにくく、今演じているのはどの時点なのかと混乱した。また人間関係も後から後から「実は‥‥」みたいな展開になり、まさに「不条理なサスペンス」だった。

 舞台上にある大きな窓の向こうがテラスになっており、上の階で栽培されている植物の蔓が降りてきている。よく見るとその蔓が成長しているので、蔓の量を見ることで時間的順序はつかめたのだが、そのことに気付くのが遅かったため、観ている最中はしばしば頭の中が???という状態になった。

 リーダー役の星耕介がなんとも狂気じみた表情で良かった。髪型と体型のせいもあるだろうけど、よく似合っていた。

2012/02/19-14:00
セカイアジ「熱の華」
OFF・OFFシアター/当日券3000円
作・演出:杉田鮎味&星野多過去
出演:仗桐安/西山聡/墨井鯨子/アダチヒロキ/金沢涼恵/前田花男/新田えみ/星耕介
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2012年02月18日

ドリルチョコレート×qui-co.「世田谷童貞機構」

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「もし日本が戦争に負けていなかったら。」
昭和86年(西暦2012年)。大日本帝国は超日本帝国になりました。
戦争に負けなかった帝国民に西洋化の影響は無く「恥」の文化が栄えました。
それはもう過剰なまでに。
テレビ、ラジオ、雑誌、インターネット。すべての媒体からエロが根絶されました。
帝國は「恥の概念」を利用し国民の統制を図っていたのです。
しかし、帝國の繁栄とは人口を増やすこと。
帝國の首都、東京は区ごとにイロマチと呼ばれる性の解放区を設立しました。
そこでだけ、人々は「恥」を捨てることができます。
年齢を問わず、肉体的な成熟さえあれば、誰でも立ち入り、性交の機会を得られるのです。
イロマチ条例の施行により、東京都民は爆発的に増えました。
これは、そんな世界の、とある日常。
変わらぬ若者の青春の爆発です。
(チラシより)

 上に書いてあるのはあらすじというより設定。別にそこまで必要ないような気がした。物語はこの体制に反抗する童貞の集団がなにやらエロいイタズラを繰り広げており、そこにスパイらしき男が潜入してくる。

 童貞というか、中学生から大学生にかけてのモヤモヤした感覚を引っ張って大人になっている感じ。変な人ばっかりいっぱい出てくる苦笑系のコメディ。女性二人がうまいこと?男どもを翻弄している様子が面白かった。

2012/02/18-19:00
ドリルチョコレート×qui-co.「世田谷童貞機構」
サンモールスタジオ/当日券3300円
原案:小栗剛
脚本:櫻井智也
演出:櫻井智也と小栗剛
出演:小栗剛/櫻井智也/本井博之/凪沢渋冶/宮本奈津美/三科喜代
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Minami Produce「僕らの心象風景における、いくつかの考察」

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『あらすじにかえて"僕"のひとりごと』
〜彼女との出会いにおける考察より


僕は思い返している。彼女との出来事。

お母さんの胸で眠っていたひだまりとか、
友達が失恋のぐしゃぐしゃの時にくれた
一本のチョコレートスティックとか、
妹の結婚式で泣いちゃったこととか、
先生が卒業式のときにくれたばらの花とか。

どれもとっても幸せな思い出で、
多分計算式にしちゃったら
僕の人生はプラスなんだけど、彼女がいない。

僕は思い違いをしてるんだ。
僕だけでなく、
いろんな人がささいな思い違いをしているんだ。

記憶を書き換え、連鎖、上書き保存に
フリッピング・ザッピング。
僕は、僕が想いならどこへでも飛べる。

記憶と記憶を紡いで思い出にする旅が始まる。
(チラシより)

 案内役となる主人公の飼い犬を演じた芝原弘が良かった。運命のあの人に会うために過去の現実を変える話なので、どのエピソードも現実と幻想が入り混じるようなもの。二本足で立って言葉を話す犬がその境界線を象徴しているのだと思う。しかしそんな意味付けは後で気づいた。単純に彼の演技が面白かった。

 観ていて楽しい舞台ではあったが、作品全体としてのまとまり、しっくり感がいまいち。断片的なエピソードが綴られ、それぞれはなんとなく染み入るところもあるが、エピソードを繋ぐ説明に欠落が多すぎる印象を受けた。想像で補うには欠けすぎ。AとBの二つのストーリーがあり、私が観たのはAのみなので、恐らく両方観ないと完成しないのではないだろうか。Bを観てないので断定はできないが。

 このように複数バージョンから成る公演は時々見かけるが、両方観て完成するのなら最初からひとつにまとめてほしい。お金や時間の問題もさることながら、いわば不完全な状態で提示することになるからだ。

2012/02/18-14:00
Minami Produce「僕らの心象風景における、いくつかの考察」
新宿眼科画廊/当日清算2700円
作・演出:南慎介
出演:大柿友哉/信國輝彦/芝原弘/霧島ロック/藤尾姦太郎/だてあずみ。/田中千佳子/李そじん/安田友加
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2012年02月11日

国分寺大人倶楽部「ハローワーク」

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舞台は工場。延々と続く流れ作業。2人の社員と、7人のバイト。
無断欠勤の多い27歳♂。男手一つで子供を育てる43歳♂。夢をあきらめた29歳♂。
夢と現実に揺れる25歳♂。その彼女24歳♀。童貞フリーター35歳♂。
人生なめてる21歳♂。人生なめてる20歳♀。その姉22歳♀。
それぞれの、一夜。それぞれの、人生。それぞれの、ワーク。ハロー、ワーク☆
(チラシより)

 工場で働く若者たちの物語。仕事のミスで揉めたりカップルや横恋慕があったり、今時っぽい若者たちだ。サラリーマン的には、お喋りばかりでろくに仕事してない彼らにイラついてしまう場面もしばしばだったが、それは流すところなのだろう。描いてるのは仕事ではなく、人間関係だ。

 登場人物1〜2人ずつ紹介するような形のエピソードが連なる。舞台両脇にディスプレイが置かれていて、語られている人が自宅にいる時の様子が映し出されている。この演出はいまいち意図がつかめなかった。家でくつろいでいる時と働いている時の雰囲気の対比を描いていたのだろうか?特にその辺の説明はなかった。

 個々のエピソードは面白かったり気持ち悪かったりムカついたりで、トータルとしてはなにが残ったんだろうか? この作品は再演であり、国分寺大人倶楽部はこれで活動停止とのこと。なんだかムズムズする作品だった。

2012/02/11-19:00
国分寺大人倶楽部「ハローワーク」
テアトルBONBON/当日券3500円
脚本・演出:河西裕介
出演:後藤剛範/加藤岳史/大竹沙絵子/林竜三/西園泰博/片桐はづき/江ばら大介/根本宗子/金丸慎太郎/松下結衣子/井ノ上羽菜
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2012年02月09日

ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」

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そこには真っ白な道があって旅人たちはそれぞれの逃れられない個性を背負って旅をしていた。西遊記・水戸黄門・イージーライダーにあの一世風靡した番組企画のバックパッカーまでもが飛び出して我先にと道を急ぐ痛快ロードムービー!しかし誰もこの先に待ち構えている急転直下の運命を知らなかった。間抜けどもが!この世の終わりかってくらいに笑い泣け!
死に物狂いの珍道中と、それに無関係ではいられない淡い恋の物語。ここでキスさらせ!この世は敵が多すぎた!
ぬいぐるみハンター版「ノーカントリー」というにはあまりにも馬鹿すぎる!
「あんたのセックスのダメなところをひとつひとつあげてってやろうか?多分2000個目くらいでどっちか死ぬよ。」
(チラシより)

 ぬいぐるみハンターといえばガチャガチャしててキュートでポップ。しかし今回はそうと見せかけて実は違った。前回の「軽快にポンポコと君は」で以前と変わったと言われたのは物語性が膨らんだからだと思うが、今回は完全に全体の作り方が変わったと思う。

 テーマもどこかで見たことがあるような話で、手法としては決して新しいものではない。どちらも過去に観た芝居で同系統のものがあれこれ思いつく。しかしまさかぬいぐるみハンターがそういう演出手法を使うとは思わなかったので、完全に意表を突かれて衝撃を受けた。

 作中のドタバタポップはそのままに、しっかりした結末を用意したことで今回は非常に面白かった。今まで作ってきた作品がこのための伏線だったと思えるほどのできだった。だから、次の作品が正念場だろう。今回と同じ手はもう使えない。次回作でも同じくらいビックリさせてもらえるかどうか、とても楽しみだ。

2012/02/09-19:30
ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」
駅前劇場/当日券2800円
作・演出:池亀三太
出演:神戸アキコ/浅利ねこ/石黒淳士/猪股和磨/竹田有希子/浅見臣樹/浅見紘至/黒木絵美花/でく田ともみ/町田水城/松本大卒/満間昂平
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2012年02月05日

MU「今夜だけ」他

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 新作1本と再演2本の3話オムニバス。すべて人妻が主役。

「×」
あの女が多摩川の廃屋に火をつけようとしたので、素行調査のつもりが探偵は声をかけてしまう。「罰(ばち)が当たりますよ」と諭すと、女は「これは罰(ばつ)なの」と返して来た。川の漂流のようにぐるぐると人が流れる、罪と罰の小さな物語。MU初期のレアな短編を再演。

 三作の中では一番すっきりした作品。元過激派でエコなホームレスの小屋で中学生に勉強を教えている人妻は、性的に奔放で劇団を潰した経歴を持つ女性。彼女の夫に雇われた探偵、今時のカップルのエピソードなどが絡み合う。テンポは良いし激しい動きもあるのだが、なんとなく気だるい雰囲気のお話。

「ママさんボーリング」
南栗橋の倦怠が渦巻くなかで生活する主婦達は、ボーリング場でストレス発散とフェロモン補充を行なっていた。思い切って裕気は店長へ声をかけるが・・・。脚本提供した短編で初演時には観客より「聴いていた想像の3兆倍くだらなかった(笑)」とツイッターでつぶやかれる、デザートのようなコメディ。MUでは初演出の短編。

 いかにもヒマを持て余した主婦といった風情の女性たちがボーリング場でくだらない話をしている。そしてイケメン(?)の店長にザワザワしている話だが、途中からあまりにも下らなく、唖然とするような結末を迎える。いや、事前にものすごく下らないという初演の評判のことを読んでいたのだが、それでもビックリするくらい下らなかった。でも嫌いじゃない。

「今夜だけ」
「叫び」を募集する深夜ラジオに妻は夢中。愛犬を亡くし、嗅覚を失った夫とのどこまでも噛み合ない夫婦喧嘩を彼女はメールで投稿し毒を吐き出し続けるが、行き場のない毒は家庭に溜まってゆく・・・。MU、完全新作のホームドラマ。

 ホームドラマというが、サスペンスかスリラーに近い印象。力の入った作品だが、人間関係が濃すぎだったり激昂する場面がわざとらしくて気持ちがついていかなかったりで、イマイチ楽しめなかった。オムニバスの最後ということもあって疲れていたのかもしれない。

2012/02/05-17:30
MU「今夜だけ」
駅前劇場/当日清算(プレミアシート)4000円
脚本・演出:ハセガワアユム
出演:西岡知美/吹原幸太/渡辺まの/古屋敷悠/浜野隆之/太田守信/神谷亜美/小西耕一/前園あかり/橋本昭博/塩原俊之/前有佳/橘麦/堀晃大/丸石彩乃
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らくだ工務店「火葬」

kasou.jpg

燃え上がるのは肉体か
それとも魂なのか
 本人にしか言えない言葉がある。
 例えばバナナの皮で転んだ人の「マジ滑るぜ」
 例えばファーストキス直後の「なんか、ゴメン」
 それは生々しく、経験した者でなければ解らない。
 リアルであり、同時に永遠でもある。
 世界新記録直後の「チョー気持ちいい」
 腹を撃たれた男の「なんじゃこりゃ」
 初めて宇宙から見た時の「地球は青かった」
 そして無口な父が病床の母に言った「愛してる」
 僕にも、今だから言える言葉がある。
(チラシより)

 冬休みに入る終業式の日、中学校の体育倉庫に六人の教師が閉じ込められてしまった。誰が鍵をかけたのか、生徒なのか教師なのか、故意か偶然か、故意なら目的は? 助けを呼べない状況でじわじわと明らかになって行く、教師たちの焦りと疑心暗鬼、人に言えない生徒との関係や教師同士の葛藤。

 特異な状況だが、教師たちのキャラクターは学園ものなどにありがちな典型的パターンを踏まえている印象だった。若い熱血教師は裏で生徒と交際していたり、だらしない雰囲気の教師が実は一番生徒から信頼されていたり、責任者は保身に走るし、女教師はいじめられっ子をかばうあまり道を外れかけているなど、ドラマチックな秘密がいっぱい。

 そういった人間模様がゆっくりと描き出されていく演出はなかなかのもの。役者も実力派を揃えた感じで安心感があった。ただラストシーンの意味が若干理解しきれない。それまでの流れとあまりマッチしないショッキングな場面でいきなり終わってしまった気がする。

2012/02/05-14:00
らくだ工務店「火葬」
OFF・OFFシアター/当日清算3800円
作・演出:石曽根有也
出演:林和義/古川悦史/河相我聞/大路恵美/中村真知子/今村裕次郎/岡まゆみ
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2012年02月04日

オーストラ・マコンドー「ロンググッドバイ」

 原作は萩原朔太郎『猫町』とのことで、観劇後に青空文庫で読んだ。前半こそかなり忠実であるが、後半はその幻想的な雰囲気を引き継いでまったくオリジナルなストーリーが展開する。現実のすぐ隣にある夢の世界といった趣だ。

 主人公は私立探偵。「影」と一緒に仕事をしている。やってくるのは裏社会のチンピラや、ヤクザみたいな刑事、それに謎の女と男。とてもハードボイルドな雰囲気。ファッショナブルでかっこいい舞台だった。

 会場のJORDI TOKYOは渋谷駅から少し歩いた場所にあるギャラリー。大通りに面したビルの一階で、正面はすべてガラス張りになっている。そこにブラインドも閉めずに上演するため、ずっと外から丸見えの状態だ。なぜこんな場所で、こんな状態で進めるのか?という疑問はすぐに氷解する。

 外から中が見えるなら、中から外も見える。役者が時々外へ出て路上で演じるのを、室内から見るのだ。しかもそこは普通の歩道であるため、怪訝な顔で通り過ぎる無関係な通行人までもがまるで演出のように溶け込んでいる。いや、芝居が路上に溶け出していたというべきかもしれない。

 私が観たのは夜の公演で、始まる時はまだ夕暮れで明るいのだが、上演中にどんどん暗くなって行く。室内の灯りが消える場面では、表の街灯の光がガラス越しに室内をかろうじて照らす。こういう部分も実にかっこいい舞台だった。昼の公演がどんな風だったのが気になるところだ。

2012/02/04-19:00
オーストラ・マコンドー「ロンググッドバイ」
JORDI TOKYO/当日清算2200円
原作:萩原朔太郎『猫町』
演出:倉本朋幸
出演:小宮一葉/白井珠希/カトウシンスケ/松永大輔/伊佐美由紀/大石憲/鹿野浩明/武本健嗣/照井健仁/川村大輔/内堀太郎
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ラックシステム「体育の時間」

taiikunojikan.jpg

「太ももを人目に晒すなんて恥さらし。」
日本女子スポーツ界は
まだまだ暗闇の中にあった。

昭和8年、大阪にある
日本女子体育高等師範学校。
そこにはオリンピックを目指す
熱き少女たちのがあった。
彼女たちの未来は!?
日本女子スポーツ界が
夜明け迎えるのはいつなのか?
(サイトより)

 笑って、考えさせて、感動させて、やっぱり笑わせて締めくくる。お芝居の王道のようなお芝居。この話の何割くらいが史実に基づいているのかわからないが、まるっきりの創作というわけでもないだろう。こういう題材をどこから見つけてくるのだろうか。

 スポーツに打ち込む女子(=ごっつい?)をむさくるしい男が演じるというのは、さほど珍しくもないだろうが、本作はテーマの中心になっており、最後までやり切った印象。

2012/02/04-15:00
ラックシステム「体育の時間」
ザ・スズナリ/当日券4500円
作・演出:わかぎゑふ
出演:/野田晋市/千田訓子/うえだひろし/谷川未佳/祖父江伸如/西岡香奈子/三上市朗/北沢洋/中道裕子/小椋あずき/森崎正弘/坂口修一/早川丈二/山藤貴子/荒木健太朗/わかぎゑふ
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