2011年07月29日

劇団鹿殺し「岸家の夏」

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「本日をもって、婚活終了いたしました。」
ある日、長女夕子が三指をついた。
 柔道場で生まれ育った岸家三姉妹。
      ──朝子・陽子・夕子
人生に迷い疲れ立ち向かう、
  三姉妹の勇姿をバカバカしくも
    ロックに歌い上げる夏の新作。
昨年度岸田國士戯曲賞
  最終候補作ノミネート後、
     初のおバカ二都市ツアー。
(チラシより)

 鹿殺しの作品はこれまで観た限りでは「情熱的だけど色々ダメな野郎ども」が主役で女性はマドンナ的に描かれることが多かったと思いますが、今回は「夏の女優祭り」とサブタイトルが付いているように、完全に女性が主役になっています。しかし女性でもやっぱりダメな主人公達。アラフォーで婚活に失敗して、酒に飲まれて乱痴気騒ぎ。それでもただ真っ直ぐでひたむきな性格が染みる。

 青山円形劇場で当日券だったため、席の位置は一番端っこに近く、舞台をほぼ真横から見る形になりました。お世辞にも見やすい位置ではありませんでしたが、わからなくなるほどでもなく十分楽しめました。

 実は大阪で観た鹿殺しはあれほどやかましいロックな舞台にも関わらず途中で眠くなることがあったのですが、今回は全然そんなこともなく、最初から最後まで食い入るように観られました。テーマ的に感じる所があったからかもしれません。

2011/07/29-19:00
劇団鹿殺し「岸家の夏」
青山円形劇場/当日券4500円
作:丸尾丸一郎
演出:菜月チョビ
音楽:入交星士/オレノグラフィティ
出演:菜月チョビ/丸尾丸一郎/オレノグラフィティ/山岸門人/橘輝/円山チカ/傳田うに/坂本けこ美/山口加菜/谷山知宏/千葉雅子/峯村リエ/水野伽奈子/鷺沼恵美子/浅野康之/峰ゆとり/江古田邦子/近藤茶
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2011年07月28日

犬と串「愛・王子博」

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大丈夫、きっと助けてあげる。
愛するものも信じるものも、どれにするかは自分で決める。
善意を押し売るこの世界から、あなたの心を解放したい!
早稲田で生まれた破戒劇団が、いよいよ王子に初進出。
超絶ポップ。超絶キュート。そして、超絶インモラル。
王子小劇場、首を洗って待っていろ。
(チラシより)

 激しくバカバカしい学生劇団の悪ノリ演劇。様々な時事ネタ(だいぶ古くなってるのもあるが)を叩き込みまくっているので、恐らく10年後の学生に見せたら半分くらい元ネタが理解されないだろう。それはそれでひとつのスタイルではあるのだが。

 物語は、学校で傍若無人に振る舞う三兄弟が、怪しげな宗教団体のある矯正施設に入れられたら、昔いじめた女の子がシスターになってて、長男と三男はすっかり牙を抜かれて腑抜けのようになっていたが次男は最後まで反骨心を失わずに壁を破壊していく、という感じ(ものすごく簡略化しています)。

 かなり危ないネタやタブー破りも織り込んでいてエネルギーは感じますが、なんだかそれらが自己目的化しているような印象を受けました。表現の手法を追求していった結果としてタブーを破ってしまうのは恐れるべきでないと思いますが、最初からタブー破りするために周りを整えたような作り方では、すぐに飽きられてしまうでしょう。

 その有り余るエネルギーを次はどういう形で発揮するかが興味深い劇団です。

2011/07/28-19:00
犬と串「愛・王子博」
王子小劇場/当日券2500円
作・演出:モラル
出演:満間昂平/鈴木アメリ/藤尾姦太郎/堀雄貴/萩原達郎/廣瀬瞬/石澤希代子/佐原裕貴/守屋雄介/椎木樹人/真嶋一歌 ほか
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2011年07月24日

+1(たすいち)「MARBLE!」

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光よりはやくても 何年ものじかんがかかる 途方も無いきょり
それでも絶対忘れない
もっと速く 時間を越えて 星の川だって渡ろう
(チラシより)

 小学生の時に仲良しだった6人組だが、大人になってからは疎遠になっている。しかしその理由が思い出せない。そして、タイムカプセルから取り出した写真に見覚えがない人物が写っている。どうして覚えていないのか? …何者かに記憶を書き換えられていると判断した彼らはタイムマシンで過去に戻り、子供の頃の自分に対面する。

 タイムトラベルで昔の自分に合うという流れはもう珍しくないけれど、子供から大人になる間にタイムマシンが実用化しているという設定はなかなか斬新な気がした。ただタイムパラドックスなどについてはかなり適当に片付けている印象を受けた。その辺は結構重要な気がするのだが。

 先生役を演じた永渕沙弥がとても好印象で、役柄にもよるのだろうけど、見た目も動きもとても華があった。大人の役者が小学生を演じる無理さの克服加減は役者ごとにバラツキがあったが、もう少し舞台が広ければもっと良い芝居ができたんじゃないかと思う。


2011/07/24-18:30
+1(たすいち)「MARBLE!」
シアターミラクル/前売券2200円
脚本・演出:目崎剛
出演:窪田裕仁郎/朝日望/大川大輔/川田ますみ/さいとう篤史/永渕沙弥/はやさかあや/原岡岳穂/百瀬とも/吉原早紀/竜史

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2011年07月21日

東京デスロック「再/生〈多田淳之介+フランケンズVer.〉」

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死に逝く人々の物語を連続して繰り返し、疲弊していく身体から圧倒的な“生”を描き出した’06年上演の『再生』が新たに『再/生』として再生します。各地の劇場、カンパニー、地域の志とのワークショップや合同公演などの企画にもご期待ください。
(チラシより)

 上記の解説も読まずに観に行ったため、最初は何だかわかりませんでした。しかし繰り返されることで描かれているのが死に逝く人々と気づいて、ジワジワと衝撃に襲われました。知っている人にはいまさらの話でしょうが、静かな演劇とかリアルな演劇に対する強烈なカウンターパンチだと思います。こんな表現の仕方があったんだと素直に嬉しくなった。

 再演でしかも私が観たのは東京デスロックではなくフランケンズのバージョンでしたが、終演後のアフタートークによると、東京デスロックバージョンがかなり初演と違う作品になっているのに対し、フランケンズバージョンは初演に近いとのこと。残念ながら東京デスロックバージョンは観に行けませんが、どんなものになったのかとても興味深い作品です。

2011/07/21-15:00
東京デスロック「再/生〈多田淳之介+フランケンズ ver.〉」
STスポット/当日券3000円
演出:多田淳之介
出演:【中野成樹+フランケンズ】石橋志保/小泉真希/斎藤淳子/野島真里/浩雄大/竹田英司/福田毅/村上聡一
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2011年07月15日

はらぺこペンギン!「愛の蟻地獄」

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集まった5人の男。彼らの前には書きかけの台本。そこに書かれていたのは、新宿2丁目を舞台にした切ない恋物語だった。彼らに与えられた任務は、この台本を完成させること。そして、真実を知ることだった。これは、ある男女を中心とした、愛と嘘の、まあ、言っちゃあ、ラブコメみたいなものです。
(チラシより)

 スキャンしたチラシ画像では表現しきれていませんが、実際のチラシは光沢あるハートマークが散りばめられた豪華なものです。内容もこんなイメージのチープなゴージャス感に溢れたラブコメディでした。

 あらすじにあるように新宿2丁目ですからオカマが出てくるわけです。いかにもと言った感じのステレオタイプなオカマ像。そして次第に明らかになってくる裏事情の数々。このコッテリした展開は小劇場の良さでしょう。くだらないとしか言いようのないネタも、この空間ならしっかり届きます。映画を観るような大劇場ではこうはいかないでしょう。

 唯一の女性出演者である時東ぁみは割とメジャーな芸能人らしいのですが、特別な扱いは全然なく、作品にスッキリ溶け込んでいました。

2011/07/15-15:00
はらぺこペンギン!「愛の蟻地獄」
OFF・OFFシアター/前売券2800円
作・演出:白坂英晃
出演:三原一太/立浪伸一/園田裕樹/川本喬介/村田康二/時東ぁみ/猪塚健太/絲木健太/山崎和如
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2011年07月14日

ぬいぐるみハンター「愛情爆心地はボクのココ」

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誰がみたって、おかしな家族と、おかしな路地裏で、おかしな出会いをして、ボクは生きていた。
もう泣かない、これで最後。

間抜けな奴らに見せ付ける、ストリートチルドレンの生き様!
みんなと居ればどんなにお腹がペコペコだって笑っていられた。
たまに衝突して傷つけあったりもするけど、それだって家族ってことだ。
ボクらは愛いっぱいの家族。誰も本当の家族ってものを知らないけど。
ボクらはこの集合体を家族なんだって叫ぼう!
いつもの路地裏で、排気ガス吹き込むビルとビルの隙間で、真っ暗でワクワクするマンホールの下で。
(チラシより)

 前作「くちびるパンツ」に続いて2度目の観劇となるぬいぐるみハンター。王子小劇場の構造を工夫してとんでもない奥行きを出した使い方は前作と同様。ずーっと奥の方からゴチャゴチャやってくるのが見えるとワクワクする。

 ファンキーな両親が離婚して捨てられた兄妹が、路頭に迷ってストリートチルドレン集団の仲間入りする。前作「くちびるパンツ」では宇宙が舞台だったが今回は路上。しかしどちらも特殊な形の「家族」の姿なのだろう。仲間っていいね、という。

 ただ、ストーリーは一応あるけれど、どこまで重視しているかはわからない。できごとの背景として理解しておけば、あとは次から次へと繰り広げられるナンセンスギャグに身を委ねればいいのではないだろうか。

 カラフルでガチャガチャしていて甘く切なくナンセンス、この感覚はチラシのデザインが非常によく表していると思う。まさにこんな感じの舞台だった。

2011/07/14-19:30
ぬいぐるみハンター「愛情爆心地はボクのココ」
王子小劇場/当日清算2500円
作・演出:池亀三太
出演:神戸アキコ/猪股和磨/竹田有希子/浅見臣樹/石黒淳士/片桐はづき/本山歩/八幡みゆき/伊比井香織/ナカイデソントン/永本彩香/久保ユリカ
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2011年07月08日

コメディユニット磯川家「きょうの日は」

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家族を大切にしているあなたにも、そうでないあなたにも
苺の絵。次女が大切にしたかったのは、かつての苺の絵
わたしがかえったときにはもうなくなってた。
なんで、あの時もっと大切にしてあげなかったんだろう。
どうして、あの絵を大切にしなかったんだろう。
おりこうさんだった私が唯一反抗したのは、スケッチブックに苺の絵を描いた事。
「もしかしたら2度と会えないかもしれないのだから大切にしなさい。」
あの時、これが最後だってわかってたら、もっと優しくしてあげられたのに。
「また会う日まで。」
(チラシより)

 ショッピングモール建設のため立退きを迫られている小説家の家に再婚した夫婦と四人の兄弟。その家に次女の婚約者が挨拶に来るところから物語が始まる。次女がどうしても立ち退きたくない理由は、亡くなった彼女の実母の想い出。

 複雑で賑やかな家庭を舞台とした、ものすごく正統派のホームドラマ。しかしラストは、この手のお芝居にありがちなパターンに行くと思わせて行かないフェイントが効いていた。それも含めて、家族で安心して観に行けるタイプの作品だ。

 実は磯川家を観るのはこれが初めてで、恐らく最初で最後になってしまうだろう。個々の役者の今後の活躍に期待したいところです。

2011/07/08-19:30
コメディユニット磯川家「きょうの日は」
シアターグリーンBOX in BOX THEATER/当日券3500円
脚本・演出:保木本真也
出演:斉藤コータ/岡洋志/菊池祐太/二宮瑠美/島岡亮丞/信原久美子/伊藤昌子/稲野杏那/黒木正浩/塚田まい子/前田友里子/村上研太/湯浅崇
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ハイリンド「牡丹燈籠」

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幼き頃殺された父の仇敵を果たしたい孝助は、
武家である旗本・飯島平左衛門の屋敷に拾われ、日や奉公と修行に励む。
親子と違わぬ情けと信頼で互いの絆を深め合う二人であったが
主の飯島平左衛門こそ、孝助の父を殺めたその人であった。
二人に訪れる義理義理の関係。
一方その飯島平左衛門の娘・お露と浪人・萩原新三郎。
一度の出会いで互いに強く惹かれ合い、想いを募らせてゆく。
夜な夜な燈籠片手に新三郎の元に足しげく通うお露。
逢瀬を重ねる新三郎は、彼女が既にこの世の者でない事など露知らず…。
複雑に絡み合う因果。
壮大な大河ドラマが最後に見せる鮮やかな顛末やいかに。
(チラシより)

 言うまでもなく江戸時代に書かれた落語の舞台化だが、落語の持つ展開の小気味良さと舞台のビジュアルの楽しさがうまく融合した、観ても聴いても面白い作品に仕上がっていた。ハイリンドとしての初演は5年前で今回が再演とのことだが、何度でも再演できる作品だろう。

 飯島平左衛門と孝助・お国と源次郎・お露と新三郎・伴蔵とおみね、それぞれの人情劇が並立しつつ絡み合っているため、全体像はかなり複雑だ。それを2時間程度に収めつつややこしさを感じさせなかったのは、もちろん原作の巧みさもあるだろうが、口上による説明と役者による演技のバランスの取り方が良かったからだと思われる。エンターテイメントのツボをきっちり抑えた構成と言えるだろう。

 しかし観ていて一番驚いたのは、多根周作が飯島平左衛門とおりえ(孝助の母)の二役を演じた点だ。この二人を同じ役者が演じたのはすごい配役ではないだろうか。おりえが登場するシーンではすべての女優がはけているのだから、普通だったら女優が演じるだろう。そこをあえて、孝助の仇敵である平左衛門と同じ役者を使った妙技と、見事に演じた多根周作の力量に脱帽だった。

2011/07/08-14:00
ハイリンド「牡丹灯籠」
d-倉庫/前売券3500円
作:三遊亭円朝
構成・演出:西沢栄治
出演:伊原農/枝元萌/多根周作/はざまみゆき/小林愛/阿川竜一/鬼塚俊秀/牛水里美/田中千佳子/小豆畑雅一
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2011年07月02日

MU「5分だけあげる」

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どこにでもある、ぶっ壊れた小学校の授業参観日。早朝の教室では、小さなロミオとジュリエットの2人が「この街を出よう」と誓いあっていた。副担任の小笠原は吐きながら職員室で電話のの応対をしていた。担任の梶浦は全員が揃い次第、爆弾の導火線に火をつけようとしていた。しかし学級崩壊の為、集ったのは親子を含めてたった6人。梶浦はいつもの口癖通り「みんなに5分だけあげよう」と微笑み、爆発までの道徳の授業が始まる。
(チラシより)

 厳格だが道徳のポリシーを持つ年配の女性教師と、ただ軽いノリの若い男性教師。早熟で反抗的な子供たちと、身勝手な親たち。上記のあらすじでは教師の仕掛けた爆弾が中心のようだが、実際に観た印象としては爆弾の存在感は薄く、教師自身の特異性とモンスターペアレンツの滑稽さが前面に出ていた。

 というか、教師が爆弾を持ち込んだ意図がいまいち伝わってこなかったのだ。別に爆弾がなくても物語は成立していたし、最初と最後以外では教師自身の行動も爆弾の存在を意識している感じがしなかった。

 女子生徒の母親を演じた大久保千晴の不気味な演技が印象的だった。おとなしい普通の奥さんに見えた彼女がジワジワと凶暴な本性を現していく変化はゾクゾクさせられた。また、小学校六年生の子供を演じた宮川珈琲と今城文恵のうち、宮川珈琲は体格がかなり大きいにも関わらず子供として違和感なく見えたので、上手い役者なのだと思う。

 どの登場人物もマトモではないという設定は割と好きな方だが、マトモじゃない程度はそれほどきわどくなかったので、ちょっと物足りない気もした。

2011/07/02-19:00
MU「5分だけあげる」
王子小劇場/当日券3000円
脚本・演出:ハセガワアユム
出演:久保亜津子/若宮亮/渡辺磨乃/藤田慶輔/宮川珈琲/今城文恵/大久保千晴/皮墓村
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タテヨコ企画「すくすく」

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コドモの場所で
オトナが遊ぶ。

舞台はどこかの幼稚園。集会室では保護者有志と職員で作るコドモ向けミュージカル「すくすく」の練習が連日続いていた。お披露目は一週間後。しかし皆忙しいのか遅刻したりセリフを覚えてなかったりとオトナたちの足並みは揃わない。そんな中、主人公のお父さんがぎっくり腰で入院!頭を抱えるオトナ達の目に映るのは偶然施設見学に来ていた若夫婦。二人にはまだ子供が居なかった・・・ 絵本「すくすく」の不条理で荒唐無稽な世界を立体的に織り交ぜつつ、ヤイノヤイノと交わさえる会話から今の時代にコドモと向き合うオトナ達の人間模様が見えてきます。果たして「すくすく」は完成するのか?そしてオトナ達の行く末は?
(チラシより)

 あらすじは上記の通り。コドモは別室にいる設定で全く登場せず、オトナ達の話だ。色んなタイプのオトナがいて、こっそり浮気していたりこっそりネズミ講的な商売してたり悪いところもあるけど、そんなに根っから悪者ってわけじゃない。不器用なオトナ達だ。

 スパイスとして効いているのが若夫婦。妻はこの幼稚園の卒園生だが、コドモを作るつもりはないらしい。その理由は母との確執‥‥。時折、お芝居なのか物語世界なのか、ちょっとした不思議ワールドに迷い込みながら物語は進んでいく。

 いや、進んでいくというほど進むわけでもないが、いろんなトラブルやら確執やらは、だんだん適度に解決して仲直りして気をとりなおして反省していく。それで、若夫婦の妻は母親との確執を崩そうと思い始めた様子。

 その妻がおもちゃの電話で話をするシーンが良かった。でもあれはどういうことだったんだろう。よくわからないけど、いいシーンだった。

2011/07/02-15:00
タテヨコ企画「すくすく」
吉祥寺シアター/前売券3500円
作・演出:横田修
出演:青木柳葉魚/大塚あかね/舘智子/舘野完/西山竜一/久行しのぶ/向原徹/遊佐絵里/青海衣央里/五十嵐明/伊藤真奈美/今村洋一/熊谷力丸/芝原弘/平佐喜子/ハマカワフミエ
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2011年07月01日

弘前劇場「家には高い木があった」

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 自分の持ち物が大きめのトランクにひとつで済んでしまう老人が死んだ。冠婚葬祭用の黒のスーツが1着、白いワイシャツが2枚、黒と白のネクタイが1本ずつ、フラノのズボンが2本、セーターが2枚、ベルトが1本、トランジスターラジオが1台、年金手帳が1冊、石鹸箱1個、靴下と下着がそれぞれ3日分、そしてオフホワイトのコートが1着。
 老人は仕事道具や寝具を別にして、それだけしか普段使っていなかった。老人が死んで、遺族はまず驚き、それから深く自分たちを恥じた。それだけで人はきちんと誇りを持って生きていけるのだと我が身を振り返った。
 井戸掘り職人だった老人は、毎日3合のコップ酒を飲み、たまには鰻も食べたがグルメというフランス語を知らずに死ぬまで自前の歯で通した。
 その残したものが全てを語っている。自由を貫くためには最低限の社会生活が必要であること。ズボンとセーターとコートがあれば寒くはないこと。文字を書き、ラジオを聞くことで娯楽は十分であることである。
 それ以外のものは基本的にはいらない。
 この遺品の残し方が現代社会に対する最大の批判であることを、残った遺族の全員が全身で理解していた。理屈ではなく体全体で理解した。
(チラシより)

 上記のあらすじほどしんみりした話ではない。祖父の葬式に集まった3兄弟。もうそれぞれ独立して家を離れそれぞれの土地でそれぞれの家族と暮らしている。大人になった兄弟は、子供の頃のように無邪気な仲間ではない。

 家族ものは基本的に苦手なのだが、それは多くの場合、家族の愛というものを無条件に肯定し表現しているからだ。しかしこの作品はそうでもなかった。確かに仲の良い家族だが、別に愛情に溢れているわけでもない。空疎な家庭では決してないが、ある意味自然な姿なのではないだろうか。

 劇的な事件が起こるわけでもなく淡々とその日の情景が描かれる舞台で、ゆっくりと日が暮れていく。舞台上に作られた家の部屋から客席の後ろを眺めている。そこに、大きな木がある。観客からは見えないその木の姿が語られる。別にどうしたというわけでもない、ただ大きな木がそこにある。

 なんでもない家族の話。どうということはないが、穏やかだった。

2011/07/01-19:00
弘前劇場「家には高い木があった」
ザ・スズナリ/前売券3500円
作・演出:長谷川孝治
出演:福士賢治/国柄絵里子/水下きよし/林久志/小笠原真理子/相澤一成/田邊克彦/猪股南/平塚麻似子/高橋和子/永井浩二/長谷川等/高橋淳
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