2011年01月30日

東京芸術劇場プロデュース「チェーホフ?!」

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これがチェーホフ?!誰も知らなかった妄想世界
チェーホフが人生における大仕事として取り組んだが、未完に終わった博士論文。そこには民間伝承、いいつたえ、奇術、魔術など超自然的で観念的な事象に対して異常なまでに興味を示したチェーホフの姿が見て取れる。結局、論文を書き上げることなく生涯を終えたチェーホフだが、実際は様々な小説や戯曲の中にそれらの要素は散りばめられている。そのようなチェーホフが興味を示した幻視的世界を元・精神科医という特異な顔を持つ演出家タニノクロウが独自の視点で描き、異形の顔ぶれと生演奏を指揮する。これがチェーホフ?!と思うかもしれません。いや、これこそチェーホフ!!
(チラシより)

 茫漠とした荒野の歩く少年が、めくるめく幻想の旅をする。まさに幻視的世界。セリフは少なく、途中までほとんど音楽だけで描かれる。魔女の創りだした悪夢なのか、母を慕う子が思い描く夢なのか、なんだかわからないが美しい。

 舞台装置は非常に少ないが、照明によってうまく演出される。時には役者が影絵のようになる光の使い方は絶妙だった。手前に設営されたオーケストラピットは割と深いのか、演奏者たちはほとんど見えない。

 言葉で説明される物語要素があまりないため、正直な話、どこまで理解できたのかわからない。ぼんやりと観ていたので途中少し寝たような気がする。しかし作品そのものが夢みたいなものなので、半分眠ったような頭で観ているのは正解なのかもしれない。

2011/01/30-14:00
東京芸術劇場プロデュース「チェーホフ?! 哀しいテーマに関する滑稽な論考」
東京芸術劇場小ホール1/前売券4500円
作・演出:タニノクロウ
出演:篠井英介/毬谷友子/蘭妖子/マメ山田/手塚とおる
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2011年01月29日

ハイバイ「投げられやすい石」

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美大生時代に「天才じゃ天才じゃ」と言われた佐藤君と、
その友人のいたって凡人、山田
ある日、佐藤が忽然と姿を消す。

「海外に修行に行った」

「あまりの芸術性の高さに発狂した」

「もともといなかった。」等の適当な憶測が飛び交うが、

誰も事実を知らずに年月だけが過ぎる。
そして2年後のある日、山田は佐藤に呼び出される。
「会って、話したいことがあ る〜ん」
受話器越しの声に、不安にかられる山田
しかし行くしかない。
約束の場所に着くとそこには変わり果た佐藤の姿。
なんとか会わないで逃げ出したくなる山田!

才能を持つ者、持たなかった者、失った者、の間を愛と打算
ビュンビュン飛び交う。
ラヴストーリー
(チラシより)

 青春ラヴストーリーじゃないだろう。最初の短いシーンでは、新進気鋭のイケてるアーティストとして佐藤が登場する。そして再会のシーンでは、何かの病気でやつれてしまったような姿。体もさることながら心がすっかりやつれてしまっている。その対比がなんとも激しい。

 昔世話になったことのある友人だから突っぱねて帰るわけにもいかない山田の戸惑い。後はひたすら、あちゃー、うわー、帰りてーという山田の心の叫びを舞台全部で表現したような作品だ。ひたすら気まずい、居心地の悪い雰囲気。

 佐藤のボロボロっぷりを鑑賞すべきなのか、山田の優しさに関心すべきなのか、観客としてどこをどう評価したらいいかわからない話だ。ただ、そういう複雑な心理を表現する役者の演技力あるいは演出の工夫は見事なものだ。

 毒々しい世界の味を楽しめる人なら楽しめるだろうが、痛々しく辛かったというのが私の正直な感想だ。技術の高さは認めたい。でも観ていて楽しくないのだ。

2011/01/29-18:00
ハイバイ「投げられやすい石」
こまばアゴラ劇場/当日券3500円
作・演出:岩井秀人
出演:松井周/内田慈/平原テツ/岩井秀人
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ぬいぐるみハンター「くちびるぱんつ」

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ぬいぐるみハンターのがちゃがちゃした、めちゃんこ可愛いやつ。

今回は残念ながら女の子のパンツを脱がせる話ではありません。
むしろ、パンツを履かせる話です。

わがままなんだけど、果てまでピンクの宇宙でお菓子みたいに現職の星を眺めながらチューをしたい!
「これだけやったら死んでもいいや」が世界に蔓延したら地球は爆発的な速度で回転し、
その遠心力は重力を上回ってみんなみんな生身のままで宇宙に投げ飛ばされるんだって!
そんときだって僕はあのコのパンツをしっかり握って離さないから!
そんなぶっちぎり悪天候の中でお送りする初恋と宇宙と憂鬱についての話。
(チラシより)

 ただひたすら、観ていて楽しかった!そのままずっと浸っていたかった。

 話の中身はまったくしょうもない。故郷の星を持たずに宇宙を旅し続ける宇宙船の乗組員達が繰り広げるてんやわんや。なんとなく宇宙家族カールビンソンを思い出したが、宇宙人というわけではない。ラスト近くではどうやら彼らのルーツらしきものが明かされている?ような?場面もあるが、それを解き明かすのはむしろ野暮というものだ。

 宣伝通り、がちゃがちゃした、めちゃんこ可愛いやつだ。不条理な設定と展開、ダンスをはさむ演出などは一昔前に流行したスタイルのようにも思うが、別に古いわけではなく、こういう作品を求めるニーズはずっと存在するのだと思う。私自身、“静かな演劇”よりこっちの方がずっと好きだ。

 王子小劇場を通常と逆向きに使い、ロビーを舞台の奥行きとして活用。ずーっと向こうから役者が出てきて、去っていく。小劇場でそういう演出はなかなかできないので、斬新だった。

2011/01/29-14:00
ぬいぐるみハンター「くちびるぱんつ」
王子小劇場/前売券2500円(台本付き)
作・演出:池亀三太
出演:神戸アキコ/猪股和磨/竹田有希子/安藤理樹/浅利ねこ/浅見臣樹/桐村理恵/藤吉みわ/丸石彩乃/熊川ふみ/沖山麻生/加藤諒/萱怜子/こじまゆき/長瀬みなみ/八幡みゆき/湯口光穂
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2011年01月23日

ミナモザ「エモーショナルレイバー」

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今日も男たちはコツコツと電話をかけ続けている。
彼らの“仕事”は「振り込め詐欺」。
そこへひとりの女が「仲間に入れろ」とやってくる。
男たちは「女にはできない仕事だ」と相手にしない。
しかし、その集団にはすでにもうひとり女がいた。
(サイトより)

 振り込め詐欺集団と、そこにいる女性二人の物語。現実の詐欺集団がどんなものであるかは当然わからないが、にも関わらず随分「リアル」な印象だった。おそらく演技力に加えて舞台美術の質感が非常に高かったからだと思われるが、視覚的にもとてもよくできていた。

 登場人物は皆、まともな人生を歩めなくなった落伍者だ。一緒に働きながらも結局他人のことなどどうでも良い。なにしろ詐欺師の集まりなのだ。うまく行っている時は仲良くしていても、いざヤバくなれば耳を削ぎ落とすといった非情な振る舞いに出る。そういう人々のヒリヒリした人間関係が実に巧みに描かれる。

 最初に一人の中年女性の長いモノローグから始まる。この女性はその後ほとんどしゃべらないが、モノローグで語られた背景がよく効いており、セリフを必要としないのだ。逆によく喋る若い娘の方は、なかなかその本心が見えてこない。しかし最後にこの二人の重要な会話によって、救いようのない人々の物語がうまく昇華していく。

 若い娘を演じたハマカワフミエはつい先日、国道五十八号戦線の解散公演の時にも見たが、その時とはまったく違った印象の役を見事に演じていた。終演後に配役を見直すまで同じ人とは気付かなかった。立派な女優だと思う。

2011/01/23-14:00
ミナモザ「エモーショナルレイバー」
シアタートラム/前売券2500円
作・演出:瀬戸山美咲
出演:宮川珈琲/井上カオリ/中田顕史郎/印宮伸二/ハマカワフミエ/林剛央/坂本健一/小西耕一/柳沼大地/斉藤淳
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2011年01月22日

舞台芸術集団地下空港「OLと魔王」

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戦争はお好きですか?
 とある豊島区の一軒家・泡野家。実家ぐらしのOL・ミサオと、離婚寸前の母・倫子が暮らす。とある夜、ミサオの彼氏・守が泊に来ていたが、夜中に別れ話をし、守はそのまま失踪。その朝、泡野家のリビングに、凶悪奇怪なる大魔王・ルシファーが降臨!倫子にとある危険な契約を持ちかけるのであったが・・・。
(チラシより)

 情けない魔王と快活なOLという組合せはありがちだが、魔界の勢力争いと人間家族のめんどくさい付き合いを上手に絡め、緩急のあるいい感じのエンターテイメントに仕上がっていた。悪魔たちもコミカルな場面が多いのだが、それがここ一番のシリアスなシーンを引き立てている。

 衣装も工夫を凝らしたもので質感も悪くない。ただ一点疑問なのは、床を真っ白にしていたことだ。明るすぎて閑散とした印象を受けてしまった。もっと暗くするかなんらかの模様を満たしたら全体がもっと詰まった雰囲気にできたのではないだろうか。

2011/01/22-19:30
舞台芸術集団地下空港「OLと魔王」
シアターグリーンBIG TREE THEATER/前売券3500円
作・演出:伊藤靖朗
出演:青山友里恵/今村洋一/川根有子/土岐泰章/手塚けだま/野田孝之輔/野村真理/藤田みか/伊達MATT玄四郎/美舟ノア/免出知之/横山大地/大島翠/岡崎康記/三都乃炯
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ehon「SWEETS」

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 一人目の父親が行方不明になってから、ぼくは部屋に引きこもり、モンスタークレーマーになった。
 二人目の父親が行方不明になってから、連れ子だった姉は滅多に家に帰らなくなり、耳の聞こえない恋人に罵声を浴びせるようになった。
 三人目の父親がやってきてから、母さんは風水や妙なセミナーにのめり込み、家に他人を出入りさせるようになった。

 ドロドロに甘いお菓子の家に住むぼくの家族は、訪問医師やセミナー講師、ルポライターを巻き込んで、ぼくを家から出そうと、殺し合いを始める。泣きながら。

 死亡したのは3.5人、死体は5つ。
 どこにでもあるような家族のどこにでもあるような、愛を言い訳にした、“何か”のお話。
(チラシより)

 メタリック農家の主催だった葛木英が新たに立ち上げたユニットの第一回公演。じわじわとくる狂気を描く筆致は変わらない。ひきこもりの少年(もう二十歳だから青年か)を抱える家族の苦悩と崩壊を描いているわけだが、善意のような狂気、攻撃のような防御、それらの合わさった気持ち悪さが心地良い。

 “異常者の近くにいる正常な人が実は本当の異常者だった”というパターンはさほど目新しいものではないし、この作品では中盤辺りからなんとなくその気配が強まっていったのでクライマックスの意外性は低いが、むしろ傍観者だと思ってた人がわりと首謀者の一人だったことに意外性を感じました。そこを狙ってたわけじゃなさそうですが。

 主人公の姉を演じていた佐藤みゆきは何気に4度目ですが、毎回全然印象が違うのですごい役者なんだと思います。今後も注目していきたい人。

 座・高円寺1の舞台は横幅が広く高さもあるため、上下左右に空間を使って複数の場所のセットを組んでいた。視覚的には必ずしも見やすいわけではないが、場面転換による間延びがなくて良かったと思う。

2011/01/22-14:00
ehon「SWEETS 「可哀想」にたかる蟻たちの話。
座・高円寺1/前売券3500円
作・演出:葛木英
出演:福山聖二/佐藤みゆき/古山憲太郎/成松慶彦/佐々木潤/久保亜津子/幸田尚子/瀧川英次/本井博之/廣瀬瞬/北見有理/葛木英
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2011年01月16日

ドリルチョコレート「テスタロッサ」

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マコト君はあずきちゃんが大好き。
あずきちゃんもまた、マコト君が大好きで仕方ない。
未消化のまま体内に蓄積されている恋愛遍歴なんぞを抱えつつ、
二人はガッツンガッツンぶつかりながら歩いていくのであります。
そんな、見た目とは裏腹の、可愛い恋の話。
と、
そんな二人を取り巻きつつ二人の恋の終わりがこの世の終わりとリンクすると信じて疑ったり疑わなかったりする人達の、
交通事故にあったと思うしかないような出会いとか別れなんかを品がなくなるほど品良く喋り倒す恋愛情緒。
そんな、二人の間だけで匂い立つような、可愛い恋の話。
と、
その周りを衛星のようにグルグル回る、男の話。


 ロックバンド仲間の男3人とそれぞれの彼女たち。ラブラブ、倦怠期、クレイジー、間抜けなやり取りの応酬だがある意味で典型的なカップルの心情を3つの角度から描いている。基本的にキャラクターの面白さを前面に出す芝居なので、物語として複雑なことは特に出てこない。

 自分はただ傍観者として笑っていたが、付き合ってる人がいれば3組のどれかを自分に重ねて観られるのかもしれない。近藤美月が演じたクレイジーでロックな彼女が一番面白いが、自分が付き合うのは疲れそうだ。

 なんにせよ、理屈抜きでケラケラ笑っていられる舞台。

2011/01/16-15:00
劇団MCR ドリルチョコレート「テスタロッサ」
こまばアゴラ劇場/前売券3000円
作・演出:櫻井智也
出演:有川マコト/小椋あずき/ 中川智明/近藤美月/櫻井智也/石澤美和
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2011年01月15日

南河内万歳一座「ラブレター」

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 コインランドリーの洗濯機から始まる、「巡る」を巡る物語。登場人物はみな濃くて熱い。以前観た唐組とも似た、おおげさな台詞まわしと激しい動きで、いかにも芝居らしい芝居。大衆演劇というのだろうか?変に芸術的なてらいはなく、おそらく万人受けする作風だ。観ていてとても楽しかった。

 とんがって既存手法に対するアンチテーゼを謳う若手劇団が散見される中、真正直に王道の芝居を作っていると感じた。しかし結果的に両者は同じようなスタイルになっていく可能性もある。なぜなら、少し前に流行した「静かな演劇」自体が古典的な芝居へのアンチテーゼであり、最近出てきた若手劇団がさらにそのアンチテーゼを志せばかなりの確率で古典的な芝居に回帰してしまうからだ。

 もちろん、どちらかが正しいわけではなく、芝居のスタイルもまたぐるぐると巡っていると言えるだろう。観る方としては、巡る位相がほどよくずれてくれれば様々なタイプの芝居が楽しめるのでありがたいことだ。

2011/01/15-19:00
南河内万歳一座「ラブレター」
ザ・スズナリ/前売券3500円
作・演出:内藤裕敬
出演:河野洋一郎/鴨鈴女/ 藤田辰也/荒谷清水/三浦隆志 /前田晃男/ 重定礼子/ 福重友/中津美幸/皆川あゆみ/岡ひとみ/鈴村貴彦/倉重みゆき/手嶋綾乃/松浦絵里/藤川央子//内藤裕敬 ほか
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悪い芝居「キョム!」

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「あーあ、棄てられる前に逃げればよかった!」
(チラシより)

 悪い芝居は常に演劇の枠を突き破ろうとしているように見える。今回もまた「やっちまった」感にあふれた舞台だった。設定を簡単に言えば、「劇場に寝泊りしているホームレスとそこに集まる高校生などが、自分たちに起きた事件──ある仲間の死──を社会に伝えるために企画した演劇」というものだ。

 単なる劇中劇ではない。劇と劇中劇の境界線がぼんやりしているため、現実と劇の境界線まであいまいになり、客席を飲み込もうとしてくる。ぎっしり雑然と詰め込まれた舞台装置は視覚的情報量が多すぎて、これまた圧倒される。入り組んだ構造は、自分がどこまでちゃんと観れているのかわからなくなる。恐らく見落としている部分や気づかなかった意味も多々あるだろう。観客として相当に気力を消耗する作品だった。

 この作品が好きか嫌いかと問われたら、嫌いだと答える。私が芝居に求めているものとは違うからだ。こんな風に疲れるために劇場へ行くわけではない。しかし強いインパクトがあることは否定しない。この劇団がこのまま挑戦を続けたら将来どんな作品が飛び出してくるか、楽しみではある。

2011/01/15-15:00
悪い芝居「キョム!」
駅前劇場/前売券2500円
作・演出:山崎彬
出演:植田順平/大川原瑞穂/進野大輔/西岡未央/山崎彬/浅田奈緒子/池川貴清/太田綾香/大原渉平/北川大輔/谷井佳輔/名越未央/宗岡ルリ
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2011年01月09日

柿喰う客「愉快犯」

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源平争乱の時代より、
ハッピー&ラッキーな歴史を歩んできたノリノリ一族「琴吹家」!

幸せボケしちゃってる彼らのもとに、
どーゆーわけか突如「最悪の不幸」が襲いかかり始める!!

愛娘の事故死! 祖母の病! 母の不倫!! 
―え? ってか、娘は事故じゃなくって他殺なの!?

どうするどうなる琴吹家! なんとかしやがれ三世帯! 
ご先祖様も草葉の陰でテンパってるよ!!

結成5周年を迎えた「柿喰う客」が、
謹んで新年のお慶びを申し上げながらお送りするのは
ドメスティックなハピネスを求める愉快×痛快×おめでた喜悲劇!!
(サイトより)

 毎回趣向を変えた演出を魅せる柿喰う客だが、今回は新春公演ということで和風というか歌舞伎風の動きやセリフ回しを多用したスタイルで攻めてきた。最初から最後まで勢い良く、一気呵成に演じきったという印象だ。役者すべての個人的能力の高さと、それを生かす作演出の技量を感じさせる逸品。観ていて楽しくてたまらない。

 作演出の中屋敷法仁は「反・現代口語演劇」を標榜しており、徹底的にフィクションを練り上げる。いわゆる「静かな演劇」や「リアルな芝居」に対するアンチテーゼなのだろう。その姿勢は個人的に好みだ。ただ、だからと言って独自の新しい表現手法を生み出しているわけではないので、作品ごとに味付けがまったく違う。これは長く見続ける上で楽しみになる反面、人に勧めるときは作品ごとにしか語れないという弱点にもなりそうだ。

 とはいえ、観劇していてこんなにワクワクする舞台はそうそう出会えない。たっぷりとその一瞬を堪能させてもらった。

2011/01/09-18:00
柿喰う客「愉快犯」
東京芸術劇場小ホール2/前売券2800円
作・演出:中屋敷法仁
出演:七味まゆ味/コロ/玉置玲央/深谷由梨香/村上誠基
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シベリア少女鉄道スピリッツ「もう一度、この手に」

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ピンからキリまで
(チラシより)

 この劇団はいつも単なるストレートプレイでは終わらない。内容について触れるのはどうしてもネタバレになってしまいそうだが、今回も多重構造を持った作品だ。8編のオムニバス公演と見せかけているが、当然のように全体のテーマというかネタが仕込まれている。

 しかし、こういう楽屋オチみたいな笑いが好きなのは、“普通の演劇”を飽きるほど観てきた演劇マニアに限られるのではないだろうか。最終章はやや蛇足気味だったし、正直なところ途中で飽きてしまった。

2011/01/09-14:00
シベリア少女鉄道スピリッツ「もう一度、この手に」
王子小劇場/前売券3000円
作・演出:土屋亮一
出演:石田剛太/大杉さほり/加藤雅人/上福元沙織/篠塚茜/高松泰治/藤原幹雄/吉田友則/町田マリー(声のみ)
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2011年01月08日

みきかせプロジェクト「空中回転ブレンド」

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「体じゃない、でも声だけじゃない」
そんな、演劇体験。

「what's みきかせ」リーディング企画公演。
現在、一線で活躍をしている劇団さんに、あえて「リーディング」という手法にて、ご出演をお願いし、今まで観た事のない、その劇団のカラーを表現して頂く!という、非常に我儘な企画です。
(チラシより)

 モカとアロマという二つのバージョン(ブレンド)があり、私が観たのはアロマ。こちらは劇団エリザベスとMrs.fictionsが参加していた(モカはplay unit-fullfullと今夜はパーティー)。劇団エリザベスは恐らくドラクエをモチーフにした作品(ドラクエやったことないので想像だが)、Mrs.fictionsはウルトラマンの話(商標的にまずいかも)。

 リーディング公演とは言いつつかなり動きもあるスタイルでの表現。劇団や役者にとっての負担が通常の公演より軽いかどうかはわからないが、セリフを覚えることが苦にならない役者だったらあまり変わらないかも知れない。どうせなら新作ではなく既存戯曲でやってもらっても面白いと思われた。

 しかし2劇団で1時間半程度というコンパクトな作品でやるなら、4劇団とも1回に収めてほしかった。15 Minutes Madeがリーディングではない上演を6劇団が1回で実施しているのだから、少し工夫すれば十分に可能だろう。今後も繰り返していくとのことなので、改善を期待したい。

2011/01/08-19:30
みきかせプロジェクト「空中回転ブレンド」アロマブレンド(劇団エリザベス、Mrs.fictions)
ワーサルシアター/前売券2000円

劇団エリザベス「雨、稀に晴れ。」
作・演出:k.r.Arry
出演:佐伯将太/長谷美希/遠藤友香理/加藤エン/熊野善啓/下地尚子/武田篤/手塚裕介/長野慎也/平川奈渚子/平田栞

Mrs.fictions「ウルトラマンPRADA」
作・演出:中嶋康太
出演:岡野康弘/志水衿子/久我真希人/鈴木アメリ
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劇団Ugly duckling「凛然グッドバイ」

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始まりがあれば終りがあるサ。
これで見納め。
人生終わるわけじゃなし、
さよならいつか。
また会う日まで。
(チラシより)

 生命の存在が期待される他惑星の探検と、沈みゆく地球と詩人──詩人の素質20%と言われた女性と180%と言われた少女──詩人の数は決まっていて、一人の詩人が亡くなると新たな詩人が生まれるという──。

 春眠バージョンと冬眠バージョンがあり、伊丹公演では両方上演されたが東京では春眠のみ、福岡では冬眠のみとなっている。私は東京で観劇したので春眠バージョンだった。聞くところによると両バージョンでは同じ戯曲ながら全く違う演出になっていたそうだ。

 宇宙の彼方にある星の話と、滅び行く地球の物語が交錯する。時間軸も行ったり来たりするので、最初はシーンの意味がわからないこともあったが、段々飲み込めてくる。バージョンが2種類あることも含めて、2度観るべき作品だったかもしれない。

 ラストでかなり長くダンスを踊るのだが、これが何とも奇妙な動きで、ロボットがぎくしゃく動いているようだった。一体どういうコンセプトで振付したのだろうといぶかしく思いながらも、観ているうちに涙が出てきた。何か気付かないうちに自分の心の琴線に触れたのかもしれない。

 結局この劇団は2作品しか観られなかったが、SFともファンタジーとも違う異次元の世界観をちゃんと構成した上で、その滅びや諦観を表現する作風だと感じた。最終公演ということでもっと役者がたくさん出てくるかと思ったら意外にもほぼ二人芝居。作品の作り方にブレがないことの証だろう。お疲れ様でした。

2011/01/08-14:00
劇団Ugly duckling「凛然グッドバイ」
駅前劇場/前売券3000円
作:樋口ミユ
演出:池田祐佳理
出演:(春眠バージョン)出口弥生/ののあざみ
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2011年01月03日

渡辺源四郎商店工藤支店「大きな豚はあとから来る」

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 ATMで困っている男に銀行員の女性がアドバイスをすると、彼は中東のシャリバールから来たと言う。次にマクドナルドで再開すると、国の王子と結婚してくれと言い出す・・・。

 登場人物はほぼ二人(わずかにもう一人)。いかにも怪しげな男と、田舎っぽい純朴な女性。単純にいえば結婚詐欺師の話だが、はっきり詐欺と明かされるわけではない。そんな話を信じる方がどうかしていると思うような荒唐無稽な話を、信じてしまったというより信じたくなってしまった女性の雰囲気が絶妙。そして怪しい外国人を演じた男性の怪しさ満点度合いも非常に良かった。

 また、場面転換の時に挿入される夫婦の会話が全体の流れをうまく引き締めていたと思う。それが何を意味するのかはっきりしないまま最後まで繰り返されることで良い余韻を残していた。

2011/01/03-18:00
渡辺源四郎商店工藤支店「大きな豚はあとから来る」
こまばアゴラ劇場/知人から支援会員チケットのお裾分け(通常は当日券2300円)
作・演出:工藤千夏
出演:工藤由佳子/大林洋平/山藤貴子(別の日に天明留理子)
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