これがチェーホフ?!誰も知らなかった妄想世界(チラシより)
チェーホフが人生における大仕事として取り組んだが、未完に終わった博士論文。そこには民間伝承、いいつたえ、奇術、魔術など超自然的で観念的な事象に対して異常なまでに興味を示したチェーホフの姿が見て取れる。結局、論文を書き上げることなく生涯を終えたチェーホフだが、実際は様々な小説や戯曲の中にそれらの要素は散りばめられている。そのようなチェーホフが興味を示した幻視的世界を元・精神科医という特異な顔を持つ演出家タニノクロウが独自の視点で描き、異形の顔ぶれと生演奏を指揮する。これがチェーホフ?!と思うかもしれません。いや、これこそチェーホフ!!
茫漠とした荒野の歩く少年が、めくるめく幻想の旅をする。まさに幻視的世界。セリフは少なく、途中までほとんど音楽だけで描かれる。魔女の創りだした悪夢なのか、母を慕う子が思い描く夢なのか、なんだかわからないが美しい。
舞台装置は非常に少ないが、照明によってうまく演出される。時には役者が影絵のようになる光の使い方は絶妙だった。手前に設営されたオーケストラピットは割と深いのか、演奏者たちはほとんど見えない。
言葉で説明される物語要素があまりないため、正直な話、どこまで理解できたのかわからない。ぼんやりと観ていたので途中少し寝たような気がする。しかし作品そのものが夢みたいなものなので、半分眠ったような頭で観ているのは正解なのかもしれない。
2011/01/30-14:00
東京芸術劇場プロデュース「チェーホフ?! 哀しいテーマに関する滑稽な論考」
東京芸術劇場小ホール1/前売券4500円
作・演出:タニノクロウ
出演:篠井英介/毬谷友子/蘭妖子/マメ山田/手塚とおる