2010年11月28日

トリガーライン「トリアージ」

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涙をもって種まく者は、喜びの声をもって刈りとる。
種を携え、涙を流して出ていく者は、束を携え、喜びの声をあげて帰ってくるであろう。
(チラシより)

 尼崎のJR福知山線脱線事故を題材にしているが、登場する鉄道会社の名前は変えているのであくまでもフィクション。登場するのは医師、救助隊員、新聞記者、乗客として娘と共に事故に遭った牧師と鉄道会社職員。

 物語の中心は事故そのものではなく、救助にあたった人々の葛藤だ。タイトルになっているトリアージとは選択。救命不可能な被災者には黒タグを付け、一切の治療を行わない。多数の被害者が出る大災害で救命できる数を最大にするため必要な選択だが、黒タグを付ける医師、付けられた被災者の遺族の気持ちは、簡単に割り切れるものではないだろう。この作品ではまさにそこに焦点を当てて描いている。

 エピソードのいくつかはNHKスペシャル「トリアージ 救命の優先順位」で触れられていたものなので、タイトルから言ってもこの番組から着想を得たと思われる。しかし、ドキュメンタリーではなく物語として非常にうまくまとめられており、胸打たれるものがあった。

 実際にあった事故をモチーフにしている点で少し前に観た「葬送の教室」と通じるものがあり、恥ずかしながらどちらもかなり泣いた。実話を利用しているのはある意味で反則技でもあるが、両作品に共通しているのは「悪い奴」が出てこないことだ。みんな間違ってないし、みんな苦しんでいる、それでも不幸はやってくる。

 できれば今度は、実話を利用せずにこれだけ泣ける作品を観てみたいものだ。

2010/11/28-19:00
トリガーライン「トリアージ」
小劇場楽園/当日券3000円
作・演出:村田一高
構成:水端兄
出演:北川竜二/藍原直樹/瀬川諒平/大迫健司/重松宗隆/柘植裕士/小角まや/久津佳奈/小坂実夏子/吉田真理/横山仁美/遠藤良子/江里奈/野々目良子/尾川止則/和田武/林田一高
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岡崎藝術座「古いクーラー」

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某ビルの、某部屋のクーラーは古い、もうずっと昔設置したままみんな、燃費悪い冷え冷え寒いと出ていってしまった、省エネの適温の空間に行った仕事したり談笑したり誰もいなくなった部屋で、クーラーはでも壊れていない、でも燃費悪い冷え冷え全力で

初冬なのにクーラーのはなし
(チラシより)

 古いクーラーをテーマというかキーワードにしたパフォーマンス?正直よくわからない。一貫した物語は多分、なかった。順番に役者が出てきて、なにやら語る。動きながら語る。ダンスというほど洗練された動きではなく、激情にかられた躍動とでもいうような。さて?

 この劇団の作品を観るのは初めて。どうやら固定ファンがいるらしい。しかし私の心にはあまり響いてこなかった。じっくり見ればきっと面白いのだろう。でもよくわからない。

2010/11/28-15:00
岡崎藝術座「古いクーラー」
シアターグリーンBIG TREE THEATER/前売券2500円
作・演出:神里雄大
出演:武谷公雄/召田実子/宇田川千珠子/菅原直樹/中林舞/NIWA/菊川恵里佳/森本華
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2010年11月27日

スパイラルムーン「夜のジオラマ」

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もしかしたら
  ただ「時間」だけが
 彼女を救えるかも知れない
   という希望的観測。
    地球までは、
     救えないけど。
(チラシより)

 脚本はジャブジャブサーキットのはせひろいち。現代と近未来が舞台でアンドロイドが出てきたりするのでSFのような雰囲気ですが、基本的には人情劇というべきでしょう。普通だったら「“現在”に残る謎を解く鍵が“過去”にある」という構成にしがちなところを、それぞれ“未来”と“現在”にしている形です。

 異なる時代の描写が説明抜きに切り替わりながら進んでいくため、最初のうちは状況を把握するのが大変ですが、ちゃんと見ていればだんだんわかってきます。解き明かされた謎そのものはそれほど驚くものではないのですが、構成の巧さでじんわり伝わってくる感じでした。

2010/11/27-18:00
スパイラルムーン「夜のジオラマ」
「劇」小劇場/前売券3500円
作:はせひろいち
演出:秋葉舞滝子
出演:最上桂子/七味まゆ味/岩井太郎/山本真嗣/磐田健二/村岡あす香/滝沢信/武藤奈央子/河嶋政規/南雲則治/秋葉舞滝子
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2010年11月20日

乞局「果実の門」

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その町のヒト達は、元々そこの出身ではなく、大多数の人間が外からやってきたという。
きっと何か秘密を抱えていて、隣のおばさんなんか、きっと元看護師のクセに2回ヒトを殺してるだろうし、
かたや向かいの家のオッサンは、記憶障害の妻とその兄を殺して逃げて来たかも知れないし、
今自分がこうして住んでいるアパートの一階には、それこそ昔は金持ちだったのに、
落ちぶれてしまった女性が住んでいるし……。
何故、秘密らしきものを抱えているのが窺えるのかというと、彼らは一様に善いヒトだからだ。
善い人間はそんなにいない。私たちを取り巻く人間はそのほとんどが悪なのだ。
そんな土地へ私たち家族は引っ越して来た……。
(サイトより)

 乞局と言えば救いようのない歪んだ人物が多数登場する不気味な作品という印象があるが、今回はそんな過去作品の中から特に歪んでる人物が集まっている。この作品は独立したものではあるが、やはり特別公演的な印象は否定出来ない。観た公演もあれば観ていない公演もあり、知っている人物ほど深く感じ取れたので、もっと多く観ていればさぞ楽しめる作品だっただろう。

 しかし全体として、これまでに観た通常の作品に比べると毒々しさが薄かった気がする。それぞれに毒のある人物がバラバラと集まってしまっているため、個々の毒をどん底まで掘り下げて描くことができなかったのではないだろうか。

2010/11/20-19:30
乞局「果実の門」
こまばアゴラ劇場/前売券2800円
脚本・演出:下西啓正
出演:石田潤一郎/岩本えり/三橋良平/浅井浩介/佐野陽一/シトミマモル/鈴木浩司/田中佑弥/永山智啓/黒岩三佳/澁谷佳世/島田桃依/中島佳子/吉田聡子
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2010年11月13日

bobjack theater「天国レイン」

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「大丈夫」
たとえ僕たちを引き裂くのが運命だとしても
「私たちは」
僕は運命よりも
「いつかまたどこかで必ず出会う」
彼女を信じる
「なんかそんなふうになってるのよ」
そう言ってあざやかに微笑む彼女のことを

児童養護施設で育った神野睦月は「絶対の幸せ」を探していた。
それが自分を捨てた親への復讐だと信じて。
しかし、現実はそう甘くはなくて…。

一寸先はきっと光!
ボブジャックシアターがお送りする前向きな悲劇。
(チラシより)

 なんか雰囲気に既視感があると思ったら、少女マンガの王道路線なのだ。私が知っている少女マンガは20年近く昔のものばかりなので最近のはどうか知らないが、主人公の生い立ちと性格、特殊能力と葛藤、事件への巻き込まれ方、等々。この劇団を観るのは初めてだが、他の作品も同様であれば、固定ファンが付きやすいだろうと思う。

 役者については主役の二人が極端に芝居じみている印象を受けた。他の人はそうでもないので、わざとそうしていたのだろうか。

2010/11/13-19:00
bobjack theater「天国レイン」
アトリエフォンテーヌ/前売券2500円
作・演出:守山カオリ
出演:丸山正吾/扇田賢/宮井洋治/民本しょうこ/片岡由帆/小島竜太/関口あきら/藤原真紀子/森尾繁弘/渡辺宏明/ヤノキョーコ/江島朋洋/清水麻美
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ひげ太夫「マドロス豹十郎」

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黒豹丸が波止場へ入りゃ
雲間で月がニンマリ笑う。
「父ちゃん、あのお船、カレーの匂いがするよ」
「ふふふ、マドロス豹十郎が来たのさ!」
純情、大食い、力こぶ。
マドロス一匹、港、港で大暴れ!
その身一つで、酒場から恋心まで!
組み体操で綴る、痛快大活劇。
ベンガル虎がじっと見守る中、
今、大冒険が始まる!
(サイトより)

 今回で30回目の公演となるひげ太夫、私が前に観たのはもう4年以上前ですが、ワクワクする楽しい出し物感は変わっていませんでした。

 気弱な王子様と奔放なお姫様、ちょっと間抜けな海賊、自己陶酔のミュージシャン、そして勇ましい海の男たち。キャラクターはベタですが、全てを組体操で表現するひげ太夫によって迫力と芸術のスペクタクルに仕上がります。

 小劇場としては観客の年齢層が高めで、子供連れもチラホラ見られました。お芝居というよりアトラクションのような作風なので家族で観るのに良いでしょう。

 それにしてもあれだけ動きの多い舞台で息が上がってる様子もなく、技術だけでなく体力的にもスゴいと感心します。

2010/11/13-14:00
ひげ太夫「マドロス豹十郎」
テアトルBONBON/前売券3300円
作・演出:吉村やよひ
出し物師(出演者):吉村やよひ/成田みわ子/永井ひとみ/林直子/鈴木のぞみ/倉橋みづえ/中野彬子/東海紗希/伊藤貴子/宮内里沙/白石トモコ
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2010年11月09日

助成金とか税金とか

<以下は、11月8日の夜にTwitterで書いた内容の転載です>

 この話について思う所を酔っ払ってつぶやくよ。 RT @kogurenob: [exblog] 「文化団体や文化への金の流れから国家は身を引いて下さい」

 劇団や劇場に出す補助金の額を増やすのではなく寄付に対する税制改革を、という指摘は一理あるとは思う。エコカー減税やエコポイントがメーカーではなく消費者を補助する方式をとったことに通ずるだろう。

 僕は芸術家ではなく観客なので、観る演目を自由に選ばせてもらった上でチケット代を補助してもらえればありがたいし、税制的な優遇があるなら本気で応援したい団体には寄付するのも良いだろう。

 しかし食料品に対する消費税すら免除されないこの国で、文化に対する税制的な優遇が実現するだろうか。そうすることが必要あるいは有益であるとする説得力ある理由づけが不可欠になる。

 文化芸術振興の受益者はすべての国民である、とは言うが、しょせん娯楽ではないか? エンターテイメントを国が優遇するのか? そんな余裕があるなら生活必需品の消費税を免除しろよ、って話になるだろう。

 つまり、劇団や劇場に直接補助するのも、税を減らすことによって間接的に補助するのも、本質的には変わらないと思う。なぜ彼らやその作品が振興の対象として特別扱いされるべきなのか、納税者に説明する難しさは同じなのだ。
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2010年11月06日

七里ガ浜オールスターズ「俺の屍を越えてゆけ」

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社長命令「リストラする上司を一人だけ選べ!」
さぁ、みんな
気が重い会議を
始めよう。

それぞれが違う部署に所属している若手社員男女6人。目的は、社長の密命に従いリストラする上司を一人選出する事。「そんな会議、とっても嫌だ」と思いながらも6人が会議室に集まった。早く帰りたい。しかしリストラする上司は選びたくない。そんな中、誰かが口を開いた。「さぁ、会議を始めよう」
(チラシより)

 巧みに構成された会話劇を堪能できる舞台でした。リストラする上司を部下たちが選ぶという、サラリーマン的にありえない設定の話であること以外は、ごく自然な調子で会話が進みます。それでいて細かい雑談までちゃんと伏線として生きてくる。よく練り込まれた脚本だと思います。

 もともと青森の弘前劇場の戯曲ですが、当て書きかと思えるほどぴったりな役者を揃えている印象でした。これは主催者以外全員が客演だからできることかもしれません。

 コの字型の三方客席のため、出演者六人中二人くらいは背中を向けている状態が多いものの、しばしば場所替えが起こるので、好きな役者さんの顔がずっと見えないということもありません。この点は終演後の記者会見(という名のアフタートーク)でも言及されてました。面白い配慮だと思いますが、通常の額縁舞台にサザエさん方式で並ぶよりは自然で良かったと思います。

2010/11/06-20:00
七里ガ浜オールスターズ「俺の屍を越えてゆけ」
SPACE雑遊/前売券2500円
作:畑澤聖悟
演出:瀧川英次
出演:葛木英/須貝英/佐藤みゆき/浅野千鶴/野口雄介/瀧川英次
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五反田団「迷子になるわ」

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笑いもない涙もない、偽物もない。前田司郎、堂々の迷走宣言
日々の生活の中にある微妙な人間関係のおかしみや哀れを捉え、広い世界観を持った物語へと展開してきた五反田団、前田司郎。今作への取組みは、まず自らが「迷子になること」から始まる。技術と経験がものを言う「大通り」からはずれ、敢えて劇作家としての迷走を選ぶ、そのココロとは?真摯な不安に身を投じ、迷い込んだ横道から新境地はみえるのか?
(フェスティバルトーキョーのパンフレットより)

 主人公の女の子を中心に、家族や恋人との交流が描かれている。しかし物語がつづられる訳ではない。時系列はカオス状態で、現実と妄想の区別もつかない不思議な世界が続く。確かに迷子になっている。それも、時空を超えた迷子だ。そして確信を持って迷っている印象だ。

 椅子をずらり並べた舞台美術はシンプルながら想像力を働かせて見やすいもので、転換なしに演技だけで場面が変わる。これは役者の力もあるのだろうが、どちらかと言えば演出が巧いのではなかろうか。個々の演技より全体の構成が良かったと思う。

 私が五反田団を観たのは「家が遠い」以来で、これでまだ二度目。ぬる〜い空気は同様だが、美的センスはかなりレベルが上がっていると思った。今後も見続けていきたい。

2010/11/06-15:00
五反田団「迷子になるわ」
東京芸術劇場小ホール1/前売券3300円
作・演出:前田司郎
出演:伊東沙保/大山雄史/後藤飛鳥/前田司郎/宮部純子
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2010年11月01日

連続する半角スペース

 今年12月に上演されるmiel(ミエル)の公演タイトルは
「こ こ  ち   り」
で、文字の間に半角スペースが1個2個3個入っています。ところがこれをホームページ上で普通に表示しようとすると、元のファイル上ではちゃんと
「こ こ  ち   り」
になっているにも関わらず、ブラウザ上では
「こ こ ち り」
と、半角スペースが1個ずつになって表示されてしまいます。この現象は、「連続する半角スペースは最初のひとつしか認識されない」というHTMLの仕様が原因です。このような仕様になっている理由は知りません。
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posted by #10 at 21:19| Comment(1) | TrackBack(0) | 雑記雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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