2010年09月25日

鳥公園「乳水」

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17年間監禁されていた女性が保護された。
犯人の男女二人組は夫婦で、夫の方が被害者女性に二人の子供を産ませていた。
マスコミや世間は当然犯人に対して厳しい糾弾を行い、
被害者女性には多くの同情が寄せられたが、
彼女は、人々の予想を激しく裏切る告白を始める。

 子供を欲しがった母のために私が見つけられ、家に連れて行かれました。
 私は父と夫婦になって二人の子供を産みました。
 母が子供たちの母親になりたがったので、私は彼らと兄弟になりました。
 私たちは家族でした。

 私たちのこと、そっとしておいてくれればそれでよかったのに。
(サイトより)

盗ってきた赤ん坊に食べさせることばかり考えている。

いつからか夫は食べなくなった。
少しずつ、私たちの時間を、習慣を、リズムを、体から抜こうとしている。
アルコールのように、ドラッグのように、抜こうとしている。

だから食べさせたい。
もっともっと食べさせたい。

同じものを食べ続けていれば、
ちぐはぐな私たちもいつか家族になれる気がする。
(チラシより)

 サイトとチラシで印象の異なる文章が書かれている。舞台から受ける印象はまたさらに違う。『藪の中』のように各自の視点から描かれる構成を取っているが、実際の描き方はむしろどれも客観的だ。とはいえ真相らしき視点が無いまま終わるのはやはり『藪の中』だ。

 鳥公園は、乞局で役者をしていた西尾佳織が独立して作った団体とのことで、その演出は乞局に似た印象を受けた。ただ、乞局のように嫌な登場人物ばかりというわけではなく、むしろ弱くて流されてしまった人たちのようであり、断片的には感情移入できなくもない。

 家族とか親子を題材にした作品は個人的に痛いのだが、特にこの作品は子供のいない夫婦が発端になっているため、なんとも切ない。そして物語としての味はとても苦い。嫌いじゃないが。苦い。

2010/09/25-19:30
鳥公園「乳水」
d-倉庫/当日券2500円
作・演出:西尾佳織
出演:森すみれ/稲毛礼子/猪股和麿/魚乃文/笹野鈴々香/松永大輔
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2010年09月23日

電動夏子安置システム「ЖеНормаnシャハマーチ」

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日常生活において、理不尽な命令を受け、その通りに行動しなければならない『ノルマ』と呼ばれる存在。
『ノルマ』が自然な生活をおくれるように、命令を管理し、最大限の働きをする『ジェナー』と呼ばれる存在。
これは、命令を課された者『ノルマ』と、命令を配置して、それを導く先導者『ジェナー』を中心に展開するゲームプログラムである。
(チラシより)

 彼らがなぜそんなことをしなければいけないのか、どういう経緯でその立場になったのか、誰がこのゲームを作ったのか、一切の説明抜きにいきなりゲームが始まる。映画『キューブ』を彷彿とさせる状況の中で、登場人物たちは必死で勝とうと模索する。

 会話による頭脳ゲームなので、チェスや将棋のような戦略に加えて心理戦が繰り広げられていく。もちろんこんなゲームは知らないし、ルールはあまりに複雑で憶え切れない。私も含めて多くの観客は恐らく、ルールを知らずにアメフトを観戦するような感覚で観劇していただろう。ある意味、ルールを知らなくても駆け引きは楽しめるということを示してくれたのかもしれない。

 割と大勢の登場人物が同時に舞台上にひしめき合っているが、意外とすっきり整理されており混乱なく追いかけることができた。ふたつのチームのそれぞれを主役にしたふたつのバージョンがあり、残念ながら片方(Mバージョン)しか観られなかったが、まあ半分以上は楽しめたと思う。

2010/09/23-19:30
電動夏子安置システム「ЖеНормаnシャハマーチ【下北盤】」
Geki地下Liberty/当日券3300円
脚本・構成:竹田哲士
出演(下北盤):渡辺美弥子/小原雄平/じょん/道井良樹/澤村一博/なしお成/岩田裕耳/前園あかり/池田葵/小舘絵梨/中川敏伸/用松亮続きを読む:スタッフリスト
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2010年09月21日

ゴジゲン「美しきラビットパンチ」

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僕らの青春はクソッタレだ。
いつも部室にたまってレギュラーの悪口を言っていた。
補欠で卑怯で童貞のくせに、自分は天才だって言い聞かせる毎日。
そんなボクシング部は、全国大会のかかった決勝戦を迎えていた。
補欠どもは祈っていた。
僕らだってただのクズじゃない。
勝てば、素敵な仲間との最高に熱い青春が待ってるんだ。
どうか……負けますように。
なんか事故ったりして、爽やかな汗が無駄になりますように。
だって夏休みは部屋でゴロゴロしたいだろ?
全国なんて劣等感抱くだけだよ隕石とか当たって全員死なねえかな!!
(チラシより)

 舞台は男子校のボクシング部の部室。一人だけ熱血ボクシングしてる他は、やる気のない先輩やヤンキー、いじめられっこ等ダメダメな部員とダメダメな変態コーチ。スポ根や青春ドラマへのアンチテーゼかと思いきや、途中から次第に狂気をはらんだ展開になっていく。

 予定調和的な展開をすべて破壊して、脳内お花畑で踊り狂い始める様子はドラッグのようだ。本気でラリって見る夢はこんなものじゃないだろうけれど、一体どこへ行ってしまうのかわからず呆然とさせられる気分は悪くない。

2010/9/21-19:30
ゴジゲン「美しきラビットパンチ」
駅前劇場/当日券3500円
作・演出:松居大悟
出演:加賀田浩二/東迎昂史郎/星野秀介/松居大悟/目次立樹/本折智史/善積元
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2010年09月19日

劇団衛星「ブレヒトだよ!」

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経済VS演劇
笑いたければ笑え!!
劇団とお金にまつわる悲喜劇
(チラシより)

 劇団衛星の団員は何人か知り合いがいるのですが、公演は初観劇です。やや古典的な(いかにも演劇的な)演出で物語を丁寧に描いており、京都の劇団としてはオーソドックスな印象を受けました。

 銀行から融資を受けようとするある劇団の主催と、銀行強盗のプランを練る別の劇団の主催。そもそもタイトルからして思い切り演劇を前面に出しているように、演劇そのものが主題になっている作品です。下手な劇団が劇中劇をすると内輪受けに近くなりますが、今回は幸いそういうことはありませんでした。

 会場は同じ日に観たユニット美人とおなじくシアターKAIKAで、この公演がこけら落としになります。キャパ60人程度のこじんまりした空間で、上階のギャラリーと合わせて居心地は良好。こういう場所が身近にあると楽しいので、入れ替わるように自分が関西を離れることになったのが残念です。

2010/09/19-18:00
劇団衛星「ブレヒトだよ!」
シアターKAIKA/当日券2300円
作・演出:蓮行
出演:ファックジャパン/黒木陽子/紙本明子/蓮行/首藤慎二/浅井浩介/石田美希 他日替わりゲスト
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ユニット美人「黒い紙と3つの箱」

のんきに生きる三十路女の前に突如あらわれた金銀鉛の3つの箱。
どれを選べば生還できるの?
なんで3つなの?
どうして選ばなきゃいけないの?

教えて、シェイクスピア先生!

ユニット美人が古典に挑戦!?さまざまな岐路に立つひとたちの背中をたたいたりもんだり好きって書いたりつねったりする小作品集です。いつもより120%知的になって、がんばります!
(サイトより)

 ユニット美人は長久手で開催された演劇博覧会カラフル3で観たきりで、気になりつつも観る機会を逃していました。結局大阪を離れた後、今になってやっと本公演が観られました。

 半ばオムニバス形式のコント集なので、物語に対するこれといった感想はありませんが、単純に楽しめました。いわゆる女芸人的な痛さは(無くはないが)少なく、スマートにまとまっていました。結成から5年以上ですが、まだほとんど他に例がないタイプのユニットでしょう。

 劇団衛星から女優二人がスピンオフして作ったユニットで、今回は本体の公演と同じ日程でしたから、二人は他の役者の倍くらい覚えて練習しなくてはならなかったと思います。まったくお疲れ様です。

2010/09/19-14:00
ユニット美人「黒い紙と3つの箱」
シアターKAIKA/当日券1500円
作・演出・振り付け・出演:ユニット美人(黒木陽子/紙本明子)
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2010年09月18日

中崎町ミュージアムスクエア「幸福論」

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裏山の中腹にある防空壕から、海が見える。
山ノ下の海端からは、墓が見える。
「生きる意味が分からない。」「分からない。」
「馬鹿高い声で愛を叫んでみようか。」「静かな音!静かな音が耳について、狂いそうなんだ。」
(サイトより)

 石原正一ショーの石原正一が、毎回一人のゲスト出演者と外部脚本で創る中崎町ミュージアムスクエアの3回目。今回は伏兵コードの稲田真里が脚本を書き、デス電所の豊田真吾が出演。

 石原正一も豊田真吾も、どちらかと言えば明るくはじけたイメージの方が強い。それに対して稲田真里の描く世界はひたすら暗く陰鬱な印象だ。両者が融合した舞台はさぞ味のあるものになると予想されたが、実際そのとおりだった。

 ここに出てくる二人はどちらも悶々とした生活を送り、時々爆発しそうになっている。どうしたらそこから抜け出せるかも判らない。そんな状態を解決するというより折り合いをつけるような手段に出る。

 気分としてはなんとなく共感できるけど、今の自分と重ねられるわけではない。その微妙な距離感を噛み締めながら観劇しました。

2010/09/18-20:00
中崎町ミュージアムスクエア「幸福論」
コモンカフェ/前売券2500円
脚本:稲田真理
演出:石原正一
出演:豊田真吾/石原正一
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2010年09月12日

表現・さわやか「アラン!ドロン!」

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 オムニバスのように様々なエピソードが連ねられていく。最初のシーンで脇役だった人物が次のシーンでは主役になるといった形で、登場人物はゆるやかに繋がっている。主役だった人が他の場面ではどうでもいいような脇役になって出てきたりもする。特定の主人公がいないので、ある意味見やすかった。

 「苦笑系コントユニット」と銘打つだけあって、確かに苦笑だ。爆笑ではなくクククッとした苦笑が多い。だからお笑いが好きな人に自信を持っておすすめとはいかないが、個人的には爆笑コントより好みでもある。

 裏の事情はわからないけれど、舞台を見る限りでは作っている人達自身がとても楽しんでいるように感じられる。その楽しい雰囲気が客席まで伝わってくるのだ。全部ひっくるめて心地良い空間が作品になっており、その場に居合わせて良かったと思う。

2010/09/12-19:00
表現・さわやか「アラン!ドロン!」
駅前劇場/指定席当日券4200円
作・演出:池田鉄洋
出演:佐藤真弓/いけだしん/村上航/岩本靖輝/菅原永二/池田鉄洋/伊藤明賢/佐藤貴史/出口結美子
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2010年09月05日

こゆび侍「Sea on a Spoon」

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 その村の言い伝えにある【救い手】は、一族を至上の幸福で満たされた最果ての地へ導くという。
やがて一族は【救い手】が導いた最果て、広大な海原に、ひとり残らず溶けていった―

 唯一の生き残りである少女は、原発のある海岸沿いの町で、静かに「つづき」を暮らしている。

 嘘をついて【救い手】になった少女の、生と死と贖罪の物語。


 これこれ、こういうのが観たくて小劇場に通ってるんだよと納得した。最初は穏やかで優しそうに見えた人々の、ドス黒い本性が次第に明らかになっていく緊張感。誰が誰と結託して誰を裏切っているのか。さらに悪いヤツがいるかもしれないという不安。正しい者が最後に勝つなんて保証のないシリアスさ。

 原子力発電所のある町が舞台で、一見社会的メッセージ性のある作品のように見えなくもないけれど、原発はあくまでもモチーフであり、描いているのは人間の怖い姿。ぞくぞくする作品でした。

 ところで、町役場の菊池役を演じていた佐伯佳奈杷さん、前半は今時のかわいい女の子という顔だったのが後半ジワジワと恐るべき正体を現していくのですが、最初のシーンからなんとなく悪役臭がただよってました。計算ずくなら怖い演技力です。初見な気がしなかったのですが自分の観劇記録に名前が見当たらず。

2010/09/05-13:00
こゆび侍「Sea on a Spoon」
王子小劇場/前売券2800円
作・演出:成島秀和
出演:廣瀬友美/佐藤みゆき/加藤律/福島崇之/飯田一期/工藤史子/桑原環七/佐伯佳奈杷/根津弥生/堀奈津美/吉田慎之介
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2010年09月04日

企画集団DOA「泥と蓮」

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 父親の形見の箱を探して廃坑になった炭鉱の奥に歩みいった青年が、タイムスリップ?して新選組と出会い、様々な事件に巻き込まれていく物語。原作と脚本のどちらの問題かわかりませんが、観終えて正直なところ「???」という印象でした。

 新撰組を題材にした芝居は駄作になりがちと言うジンクスを昔どこかで聞いた気がしますが、本作もその轍を踏んでいるようです。役者の演技や個々のシーンの演出は決して悪くないのに、全体としてまとまっていない。張った伏線も回収できてないし、展開が残念すぎる。

 雰囲気的にかっこいいシーンばかりを無理矢理つなげたような印象を受けました。その割に人物背景の描き方が浅いので感動も軽い。説明が省けるから新撰組という有名人を使ったのではないかとすら思えます。

 そして一番残念なのは、主人公の存在意義が見当たらないこと。こういう話では普通、主人公が徐々に成長してくものだと思うのですが、それがちっとも感じられない。また、新選組の人々が彼をなんで受け入れるのかも不明なままで、消化不良でした。

 殺陣は悪くなかったと思いますが、普通の殺陣よりラスト近く、ダンスのような振り付けで戦闘シーンが描かれた場面があり、個人的にはこれが一番良かったと思います。

2010/09/04-19:00
企画集団DOA「泥と蓮」
紀伊國屋ホール/前売券4000円
脚本:久保裕也
演出:岡部大吾
出演:成田浬/いわいのふ健/酒井莉加/図師光博/中塚みの/鈴木健介/平山祐介/高橋裕太/若林達也/樋口裕哉/大蔵弘治/七味まゆ味/余語千佳子/小柳東子/吉田香澄/幸田友見/山本真嗣/植木祥平/pepe/多田聡/新勝洋/小島久人/横山恒平/宍倉弘忠/小柳雅敬/加藤 拓也/村松直浩/土居紋子/須崎美穂/内藤歩/二宮綾音/柳沢有紀/藤田実千穂/湯澤元一/佐野夕
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2010年09月01日

東京の小劇場スケジュールを公開 

 「東京の小劇場スケジュール」を公開しました。
http://tokyo.engeki.client.jp/

 これまで「名古屋の小演劇スケジュール」「東京の小演劇スケジュール」「関西の小演劇スケジュール」と作ってきましたが、「小劇場スケジュール」と間違えられることが多く、しかも小演劇という言葉はあまり良い印象を抱かない人もいるようでしたので、今回から「小劇場スケジュール」に改名しました。

 レイアウトは前回の東京版から変わっていませんが、ぴあへのリンクはCoRichへのリンクに変更しました。また、これは見る人には関係ありませんが、地図リンクがYahoo!地図の仕様変更に従って日本測地系から世界測地系になっています。関西で始めたチラシ画像については労力がかかりすぎるのでやりません。

 以前の東京版はDreamweaverを使ってWYSIWYGで編集していましたが、関西版からはRubyで自作スクリプトを作ってデータベースからHTMLを生成する方式に変更しています。従って更新作業はデータベース(中身は単なるカンマ区切りテキストファイル)をエディタで編集するだけなので、かなり楽になっています。

 情報収集は以前と同じような手法ですが、CoRichから拾ってくるものもかなり多いです。逆にCoRichがあるなら私が作る必要はないのではという疑問もありますが、自分のための備忘録が原点ですので、とりあえずやってみることにしました。多分ダラダラと続けるでしょう。
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