
17年間監禁されていた女性が保護された。(サイトより)
犯人の男女二人組は夫婦で、夫の方が被害者女性に二人の子供を産ませていた。
マスコミや世間は当然犯人に対して厳しい糾弾を行い、
被害者女性には多くの同情が寄せられたが、
彼女は、人々の予想を激しく裏切る告白を始める。
子供を欲しがった母のために私が見つけられ、家に連れて行かれました。
私は父と夫婦になって二人の子供を産みました。
母が子供たちの母親になりたがったので、私は彼らと兄弟になりました。
私たちは家族でした。
私たちのこと、そっとしておいてくれればそれでよかったのに。
盗ってきた赤ん坊に食べさせることばかり考えている。(チラシより)
いつからか夫は食べなくなった。
少しずつ、私たちの時間を、習慣を、リズムを、体から抜こうとしている。
アルコールのように、ドラッグのように、抜こうとしている。
だから食べさせたい。
もっともっと食べさせたい。
同じものを食べ続けていれば、
ちぐはぐな私たちもいつか家族になれる気がする。
サイトとチラシで印象の異なる文章が書かれている。舞台から受ける印象はまたさらに違う。『藪の中』のように各自の視点から描かれる構成を取っているが、実際の描き方はむしろどれも客観的だ。とはいえ真相らしき視点が無いまま終わるのはやはり『藪の中』だ。
鳥公園は、乞局で役者をしていた西尾佳織が独立して作った団体とのことで、その演出は乞局に似た印象を受けた。ただ、乞局のように嫌な登場人物ばかりというわけではなく、むしろ弱くて流されてしまった人たちのようであり、断片的には感情移入できなくもない。
家族とか親子を題材にした作品は個人的に痛いのだが、特にこの作品は子供のいない夫婦が発端になっているため、なんとも切ない。そして物語としての味はとても苦い。嫌いじゃないが。苦い。
2010/09/25-19:30
鳥公園「乳水」
d-倉庫/当日券2500円
作・演出:西尾佳織
出演:森すみれ/稲毛礼子/猪股和麿/魚乃文/笹野鈴々香/松永大輔
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