私は今現在、私のなかに私を滅ぼすものを飼っている
私を滅ぼせば、それは無論私と共に滅びる運命にあって
何とも誠に厄介な代物であるが
私の場合、それに名前と実体があって、ないよりは良いと思うのだ
名前も実体もない恐ろしいものを飼っているよかね
社会とか、人とか、人々とか、そこに、飼っているのか、巣食われているのか、
ただ、在るのか、
名前をつけはたしから実体が消えてゆく、そんな恐ろしいものよりかね
まだ克えるでしょ
なんてことを考えた9月の空は、うすぼんやりと素知らぬふりで
で、じっさい、またそんなお話なんでしょって
はい、恐ろしい方のね
(チラシより)
深津篤史の脚本3本のうち2本を劇団ジャブジャブサーキットのはせひろいちが、1本を遊劇体のキタモトマサヤが演出する短編三作公演。
「ぐり、ぐりっと」(演出:はせひろいち)
ファンタジーなのか何かの暗喩なのか、一人ずつ神様がついていて姿も見えて会話も出来るという世界。でも、どうやら別の世界から来たらしき主人公にはついてないので、その辺にいた猫を神様にして連れて行けと言われる。それでいいのか、そんなものなのか。
何かのメタファーなのか宗教に対する皮肉なのか、どういう意図で書かれた作品なのか判断が付きかねたのですが、すっとぼけた様子は嫌いじゃなかった。
「月灯の瞬き」(演出:はせひろいち)
02年の作品。ホームパーティがお開きになった後、居残った酔っ払いの気だるいトーク。人間関係が複雑のような単純のような微妙な感じではっきりさせられない、はっきりさせない方が良さそうな雰囲気。だからどうだということもない場面をきちんと舞台にした不思議な作品でした。
「カラカラ」
95年の作品。阪神大震災直後の避難所の様子。どういう背景を持つのか良く分からない4人と、その中の一人を訪ねてくる同僚。これといって大きな事件が起こることもないが、たまに来る余震にびくびくしながら、そこそこ前向きに生きている。
特に何かが起こることもなく場面が淡々と描かれている点は三作に共通で、こういう戯曲を書くのも演出するのも難しいのではないかと創造するが、できあがったものは結構ちゃんと物語になっている。不思議な作風だなあと思います。
2009/12/19-19:00
桃園会「ぐり、ぐりっと、」
アイホール/当日券3300円
作・監修:深津篤史
演出:キタモトマサヤ/はせひろいち
出演:亀岡寿行/はたもとようこ/紀伊川淳/森川万里/橋本健司/長谷川一馬/川井直美/寺本多得子/山本まつ理/出之口綾華/大熊ねこ/大本淳/金替康博