2009年10月31日

子供鉅人「IN THE BLACK」

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なにもかもが輝き尽くしたあとは 無惨にさみしい燃え殻の山積みだけが 唯一の眠るところ
「おーい、はやくねてしまいなさい」
という懐かしい声は、どこか遠くへ 今は唖の蛍光灯がさんざ輝いて へんなことばかりあばきたてる
彼らはただ暗闇のなか 逃走も前進もかなわぬまま 静かにぐんぐん成長してしまう
「そこで笑ってんのは誰だ?お化けだったら承知しないぞ!!」
夜をさまよう若い男と女を通して、暗闇に浮かび上がるエロスと暴力、そして、メルヘンを巡るイメージを舞台空間に堆積させる。IN THE ...に続く言葉の消失にも、なお生きざるをえない人々の風景を描き出す幻視的舞台。
(チラシより)

 タイトル通り黒を基調としてほぼ素舞台に近い空間で、場末の雰囲気漂う退廃的な世界が描かれる。内容は、おおむねチラシの言葉のまま。一貫したストーリーはあまりないが、世界観のようなものは確固として存在していたと思う。

 出来事というよりライフスタイルや人々の属性を描くような作品だ。私が生きている世界とは全然違うものなので、ちょっとした憧れもまじった印象を持つ。実際にああいう世界で生きている人が観た場合の印象はまた異なったものになるだろう。そういう人が芝居を観に来るかどうか、微妙だけど。

 頭に斧がささった女の子のお化けが(ビジュアルのインパクトを差し引いても)印象的でした。

2009/10/31-19:30
子供鉅人「IN THE BLACK」
芸術創造館/当日券2800円
構成・演出:益山貴司
出演:BAB/益山寛司/蔭山徹/小中太/樹木花香/四万十川友美/大前光市/福森慶之介/益山貴司 他
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2009年10月25日

ミジンコターボ「お母さんがゾーマ!」

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10歳の誕生日をむかえる少女アスカ。父親がドラゴンクエストIIIをプレゼントとして買ってくるも、母親はアスカの学力低下を心配し大激怒。父と母が大喧嘩。遂に父親は家を出て行ってしまった。残された少女アスカは、現実世界から目を背けるようにドラゴンクエストIIIの世界に入り込んでしまう事に…。日本最年少ニート・アスカが繰り広げるドラクエワールド大冒険活劇!!!
(チラシより)

 ミジンコターボのショートショート。本公演との違いは脚本が片岡百萬両によるという点だそうです(当日パンフより。本公演は竜崎だいち脚本)。で、多分当人の趣味に走ったテーマになっています。

 上記のあらすじにあるように、今回は完全にドラクエネタ。でも私はドラクエをやったことがありません。それでもまあなんとなくRPGの雰囲気だけはわからなくもないので、それなりに楽しめました。でも知っていればもっと面白かったのでしょうね。

 終演後のホールの雰囲気も、演劇というよりイベント会場。出演者たちがDSのすれ違い通信などをやっていました。

 軽いノリの作品らしく、役名もかなり役者の本名。主人公のアスカにしてもそうでした。南雲飛鳥さん、最初ずいぶん若い役者だと思ったらどうやら子役のようです。さすがに10歳ではないようですが、こんな歳から舞台に立ってる人って、将来どんなふうになるのでしょうか。

2009/10/25-15:30
ミジンコターボ「お母さんがゾーマ!」
シアトリカル應典院/当日券2500円
作・演出:片岡百萬両
出演:片岡百萬両/山口いずみ/竜崎だいち/川端優紀/Sun!!/後藤啓太/南雲飛鳥/山田将之/井田武志/真心/吉田青弘/花田綾衣子/ナカバシマリナ
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2009年10月24日

shelf「私たち死んだものが目覚めたら When We Dead Awaken」

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〈劇的エピローグ〉という副題のついたこの作品は、
文字通りイプセン最後の作品となった。
主人公である彫刻家ルーベックが吐露する自己断罪と新生への希求は、
そのまま作者自身のものとして迫ってくる。

戯曲の真価を舞台で発揮するのは非常に困難とされてきた本作──
写実主義から象徴主義へと移行するイプセン最後の戯曲を以て、
近代を越え、現代を照射する作品に再構成します。
(チラシより)

 東京の劇団shelfの京都公演。私がshelfを観るのは2回目です。前回の感想(2006/05/03「R.U.R. a second presentation」)に書いたように、主催者で演出家の矢野さんとは面識があります。なのであえて誉めないようなことを書きますが:

 作品は前回も今回も、とても美しい舞台でした。過去に私はメガトン・ロマンチッカーの舞台を「どの瞬間を切り取っても絵になる」と評しましたが、美しさではその上を行きます。しかし、メガチカの舞台には美しさと猥雑さが同居した上で「絵になる」と感じたのに対し、shelfの舞台は美しさしか感じない。

 例えばウルフハイムという登場人物は、野卑で俗物というキャラクターのはずなのに、やっぱり美しくて「貴族が野蛮人を演じている」ように見えてしまう。同じ人物が語り手の役も果たしていたせいもあるでしょうが、演出あるいは演技として、あれで良いのだろうか?

 芸術を上手に論ずる言葉を知りませんが、どろどろ・ざらざらな部分もあるはずの物語なのに、全体にさらさらな感触で統一されてしまっていたような気がします。

2009/10/24-19:00
shelf「私たち死んだものが目覚めたら When We Dead Awaken」
アトリエ劇研/前売券2500円
原作:ヘンリック・イプセン
構成・演出:矢野靖人
出演:阿部一徳/櫻井晋/山田宏平/秋葉洋志/片岡佐知子/川渕優子/大川みな子
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2009年10月23日

売込隊ビーム「徹底的に手足」

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軍備を強化、国力を上げよ。
ナショナリズム全盛の時代に大型軍用機は作られた。
ずらり200体、海向こうの脅威への威嚇。
彼らはそんな戦闘機の整備士。
一度として実戦使用されたことがないこの兵器の軋みを徹底的に除去せよ。
なんて壮大な設定を覆す、奇抜で緻密な会話劇。
(チラシより)

 売込隊ビームを観劇するのは4回目。すっとぼけた会話から始まって、ちょっとずつ謎が深まり、意外な事実がじわじわと明らかになり、最後にどんでん返し──というのがパターンになっているような気がしますが、今回もそうでした。とは言っても毎回まったく異なるシチュエーションを構築していますので、マンネリになっているわけではありません。

 4回目で気づいたこととして、山田かつろうはどんな役を演じさせてもはまる。巧い役者とはこういう人のことでしょう。

 しかし何気にこの劇団はきわどいテーマを題材にしています。アングラというほどではないけれど、かと言って昼のテレビで放送するのも難しそうな、微妙なバランス。そこが持ち味で良いかと思いますが。

2009/10/23-19:00
売込隊ビーム「徹底的に手足」
HEP HALL/前売券3000円
作・演出:横山拓也
出演:三谷恭子/山田かつろう/宮都謹次/竹田桃子/杉森大祐/辻るりこ/二曽純/小山茜/草野憲大/窪田道聡
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2009年10月17日

オリゴ党「西には果てがないから」

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旅なんて嫌いだ
(チラシより)

 西遊記の登場人物になりきって砂漠を旅をする一行。でも実は特殊なスーツに身を包んだバーチャルリアリティで、本当の彼らは南極にいる。目的はスーツを使った新しい旅行体験か、それとも‥‥?

 という感じのストーリー。たまにジョジョネタが混じる孫悟空(?)達のコミカルな冒険譚と、研究員達の陰謀めいた話が交錯しつつ混じり合い、最後はけっこうシリアスというかスピリチュアルな展開に落ち着いていく。

 色々と示唆的なセリフもありましたが、今一つよく分からなかった気がします。うーん。あまり難しく考えずに面白かったーで済ませればいいんだろうか? 彼らが伝えようとしたものがちゃんと自分に届いているか、まったく確信が持てません。まあ、面白かったけど。

2009/10/17-19:30
オリゴ党「西には果てがないから」
シアトリカル應典院/当日券2500円
作・演出:岩崎貞典
出演:田中愛積/恒川良太郎/倉橋里実/今中黎明/誉田万里子/渡辺大介/有馬ハル/宇野あい/風太郎/木下聖浩/秋津ねを/斉藤清士郎
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2009年10月10日

遊気舎「ソソソソ」

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前略、お母さん。
元気にしてますか、僕は今、ある町にいます。普通の町です。普通の人達です。普通の田舎です。
あ、たまにおかしな人もいます。夏が終われば帰ろうかとは思っていたんですがもう少し先にしました。

とこかの田舎町に一人の女性が父親の死を期に静かに帰って来た。
そしてその家に再び風鈴が鳴りはじめた。いつの間にかどこかに行っていたはずの新しい母の風鈴・・・。
その母も何年も前に亡き人となっている。
 都会の密集した住宅地やマンションでは暑さを和らげてくれるその音も
 時として生活騒音として嫌われる場合もある
都会に疲れた人達が田舎に帰ってくるのと同じようにその風鈴もまた田舎に帰って来た。
風を得た風鈴は、“水を得た金魚”のごとく生き生きと囁いている。

風鈴と音と共に何かが鳴りだしたようです。
もちろん僕のギターもかろやかに・・・
(チラシより)

 チラシからの引用が長いので内容は省略しますが、人情話とファンタジーの混成。ゆるーい展開で途中何度か寝そうになりましたが、最後はほどよく感動的。私は初見ですが劇団はこれで第37回公演とのことで、安定感のある舞台でした。「家族」を前面に押し出した展開は私みたいな者には少々辛いものがありますが‥‥。

 座長の久保田氏演ずる「羽曳野の伊藤」は面白い登場人物ですが、最初から客の受けが妙に良かったので、常連なら知ってるお馴染みキャラなんだろうと思われます(後で調べたらやはりそうでした)。ほとんど何もしてないうちから笑っている客がいるのは、固定客をしっかりつかんでいるという意味では良いことなのでしょうが、初見の客には何が起きているのか理解できず(実際は何も起きてなく、ただ彼が出てきただけ)、ちょっと疎外感を覚えることでもあります。

2009/10/10-18:00
遊気舎「ソソソソ」
芸術創造館/当日券3300円
作・演出:久保田浩
出演:西田政彦/魔瑠/小川十紀子/峯素子/石井正幾/宿南麻衣/羽曳野の伊藤/菊丸/近藤ヒデシ/や乃えいじ/牧野エミ
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