2009年02月28日

はちきれることのないブラウスの会「太陽にホエール」

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世の中には
勝利よりも
勝ちほこるに
あたいする
敗北がある

(モンテーニュ)

「世界が終わる前にやりたいことって何?」
何気ない疑問から始まった、何気ないひととき。
「やっぱり男の子と一緒にいたいですよねー」
何気ないこの一言が、何気なくない事態を引き起こす。
それは‥‥ 「合コンに行こう!」
なんと全員が未経験であった合コンへの憧れは、いつしか暴走の臨界点。童貞男子が女性に対して抱くそれと同じ勢いで、妄想の限りを尽くしていく4人。果たして合コンに挑むべく、悪戦苦闘のシミュレーションが始まった!!
(チラシより)

 シアターシンクタンク万化の女性陣によるユニット。コンパクトにまとまっているため濃縮された面白さがたまらない。小劇場ってこういうのが楽しいんだよなーと心底思える幸せな時間でした。

 途中でフリップを使ったネタを交えつつ、ゆるーいノリで進行。上記のあらすじからは想像もつかないラストを迎えますが、最後までゆるゆるです。

 大沢めぐみが演じる“先輩”の勢いに圧倒されます。4人ともいい声なんですよね。セリフ中心で掛け合い漫才みたいなシーンが多いのですが、小さな劇場には余りある声質・声量なので観劇もラクでした。

 シアターシンクタンク万化の本公演も好きですが、このユニットも是非続けて欲しいと思いました。

2009/02/28-19:00
はちきれることのないブラウスの会「太陽にホエール」
in→dependent theatre 1st/前売券1980円
脚本:二郎松田
演出:河口仁
出演:大沢めぐみ/有元はるか/長谷川千幸/村井友美
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2009年02月21日

上品芸術演劇団「あたしと名乗るこの私」

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32階。ホテルの最上階、高級レストラン。
コースを食べるのはちょっと勇気がいる。
そんなとっておきの場所で、
いろんな人がごはんを食べる。
月に一度の自分にご褒美。一世一代のデート。
長年のあの人に別れを告げ……。
雲が下に見える。ビルがおもちゃみたいだ。
電車は音もたてないでゆっくりかわいい。
あたしもかわいいのかな。
あたしもあんなふうにちっちゃくて音もたてないでそこにいて、
それでも、これは私だ。
あたし以上でもあたし以下でもない。
これは私の話だ。
そしてきっとあなたの話だ。
(チラシより)

 鈴江俊郎は元・劇団八時半の主宰で現在はoffice白ヒ沼とか演劇ユニット昼ノ月の人になっているようですが、上品芸術演劇団というなにやら挑戦的?な団体にも参画しているようです。でも、彼が書く戯曲はいつも同じ香りがするからすぐ判る。決してマンネリではないけれど、落ち着きをもたらす既視感。クライマックスの長台詞はゾクゾクする。

 ただ今回は精華小劇場の企画の一環として円形劇場で、その点については不満が残った。円形と言っても実際は方形で四方に観客がいるのだが、明らかに良い方向とそうでない方向があったからだ。中にはまったく顔が見えなかった役者もいた。

 実は昨年観た演劇ユニット昼ノ月「これは白い山でなく」でもそうだったのだが、その時は自分が“良い位置”で観られたのでさほど不満は抱かなかった。恐らくあの時も、反対側にいた人は不満だったのではないか。

 アフタートークの中で鈴江氏は円形劇場について、“どの方向からも観られていているので特定の見え方を意識する必要がなく、却って自然体でできる”というような意味のことを語っていたが、一人一人の観客は決して全ての方向から見られるわけではなく、自分の座っている位置からしか見られないのだ。

 だからこそ円形劇場は難しいのではないか。観客が上演中に自由に動けるのであれば良いが、そうでないならば、どの場所から見ても“後ろ”と感じないような構成を心がけて欲しいと思う。

 少々不満を多く書いてしまったが、作品の内容はとても心に残るものであり、翌日もう一度反対側から観ようかと思ったくらいだ(実行しませんでしたが)。鈴江俊郎の作品は良くも悪くも正統派だと思うので、変に趣向を凝らさず直球で勝負してほしい。そうすれば私は今後も欠かさず観るだろうから。

2009/02/21-19:30
上品芸術演劇団「あたしと名乗るこの私」
精華小劇場/当日券2000円
作・演出:鈴江俊郎
出演:押谷裕子/鈴江俊郎/清良砂霧/脇野裕美子/梶川貴弘/阪本麻紀/清水陽子/大藤寛子/高橋志保/原聡子/山本正典
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2009年02月14日

欄干スタイル「人は死んだら木になるの」

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現代の日本、
アイドルを目指し上京した青葉タエ。
けれどチャンスに恵まれず、とうとうAVデビューが決まってしまった。
そんなさなか、デビュー当時からタエを応援していたアイドルオタクが控室を訪れる。彼の手に光るのは包丁。
登場するのは不幸な幻覚症状に悩まされる8人の男女。
目をくりぬかれたクマの人形と、太陽を求めて曲がりくねった木。
誰が最初に目を醒まし、その環を抜けて歩き出すのか。
タエが思い出すのは、あどけない幼女の歌声と、やさしく笑う母の声。
しっかりとした手触りに、ほんとはみんなが憧れている。
(チラシより)

 ひとつの戯曲を3つの団体が上演するという企画。非常に興味深く、勉強になった。

 舞台制作に携わったことがない自分には、戯曲と演出がどの程度の比重を持つのか知る機会がなかった。特に小劇場演劇では戯曲と演出を同一人物が担う場合も多く、なおさら両者の区別がつかない。そのため、こういう企画は是非一度やってほしかった。いわば夢がかなったとも言うべき体験だ。

 チラシには「3人の演出家がそれぞれ演出・上演いたします」とあるが、演出家だけでなく出演者も舞台装置も全然違う。出演者の人数すら違うのだ。

 欄干スタイルは7人の役者。戯曲上は8人の登場人物がいるので、ここはかなり戯曲を忠実に演じていると感じた。チラシやパンフに役者と役柄の対応が書かれていないので名前がわからないが、おばあさん役などを演じた女優が非常に強い存在感を放っていた。

 このしたやみは4人だが、基本的には2人(広田ゆうみ・二口大学)がメインで他の2人が補佐するようなスタイルだ。ここはメイン2人の技量に大きく依存した演出で、多彩な役柄を演じ分ける両者の達者な芸を見物しているような印象を受けた。特に外国語(?)でやり取りするシーンは素晴らしかった。

 わっしょいハウスは3人。同じ人物を交代で演じるなど前衛的な趣向を凝らした演出が目に付いた。衣装も普段着のような感じで、舞台装置もほとんどない。実は最初に観たのがこの団体だったのだが、他の二つを観てからの方がより楽しめたような気がする。

 約1時間の芝居を30分の休憩を挟んで3つ連続観劇、合計4時間かかったが、不思議と長くは感じなかった。企画が企画なのでどうしても評論家的な視点で観てしまったのは否めないが、どれが良かったということはなく、「演出の力」をまざまざと見せつけられた。

 もちろん役者の力もあるのだろうけれど、全体の枠組みを決定する演出家がこれほどまで影響力を持つことは恥ずかしながら知らなかった。いや、知識として知ってはいたが実感していなかった。

 たとえ古典戯曲でも、同じ地域で別の劇団が上演した作品をあまり近い時期に使うのは避けるだろう。そのため観客にしてみれば、このように演出の違いを体験することは難しい。けれど、同じ演出家が別の戯曲を近い時期に同じ地域で上演するのはなんら珍しくないのだから、逆があってもいいのではないだろうか。

2009/02/14-16:30,18:00,19:30
欄干スタイルプロデュース「人は死んだら木になるの」
アトリエ劇研/フリーパス券3000円
作:山口茜

欄干スタイル
 演出:鈴木正悟
 出演:豊島由香/長沼久美子/宮部純子/森上洋之/片山奈津子/仲野毅/小松三久

わっしょいハウス
 演出:犬飼勝哉
 出演:浅井浩介/中村みどり/犬飼勝哉

このしたやみ
 演出:山口浩章
 出演:二口大学/広田ゆうみ/清水光彦/川津かなゑ
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2009年02月08日

劇団3618(サブロクジュウハチ)「ラスボスにキック」

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いろんな敵が出現してきてさ、
ヘトヘトになりながらようやく辿り着くんだけど、
もうダメ!みたいな状況になってくるんだよね。

一軒のシェアハウスで暮らす祐梨・彩夏・みのり・七海の4名。
只今、ちょっとしたパーティを開くための準備中。
普段ならそのまま賑やかに楽しく終わるはずだった。
それが「日常」のはずなのに、どうして‥‥‥!?
それぞれの登場人物が抱える『ドラマ』を
ちょっぴり『ガツン!』とお届けするヒューマンコメディー。
(チラシより)

 若手劇団の旗揚げ公演。内容は“自分の殻を破ろうと悩みながら模索する若者の葛藤”といったもの。出演者もほとんど舞台経験が無いようでどうなるかと思いましたが、最後まで全力疾走で演じていました。まだ「役者のオーラ」を発する域ではありませんが、応援したくなる熱意を感じました。

 フィドル倶楽部は演劇より音楽のライブに使われる会場のためか、舞台と客席の高低差はありませんでした。それで全部同じ高さの椅子席なので、役者が座っているシーンなどは後ろの方だと見にくかったと思います。前の方の席を桟敷席にしたら良かったのではないでしょうか。

 最近は桟敷席ってほとんど使われなくなりましたが、小劇場ならありだと思います。

2009/02/08-14:00
劇団3618「ラスボスにキック」
フィドル倶楽部/前売券2000円
作・演出:瀬口昌生
出演:上山裕子/麻琴/山川美都/森本久美
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2009年02月07日

バンタムクラスステージ「ルルドの森(再)」

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連続殺人を追う捜査官たちが迷い込む、深い森。
ある地方都市で、連続殺人事件が発生。
全て被害者の死体から、その一部が持ち去られている、という共通点があった。
管轄の捜査官・三島警部補は相棒の黒船警部補と共に捜査に乗り出すが、
新たに発生した事件の容疑者・優子と、一連の事件との関連付けは困難であった。
捜査が行き詰まるなか、三島は優子の友人・香乃子と出会う。
優子と香乃子は、カルト的な支持を受ける古いテレビドラマ「ルルドの森」の主演女優・菱見玲子のトークイベントを通じて知り合ったという。
やがて三島は、黒船は、「ルルドの森」に隠された恐ろしい秘密にとり込まれていく。
(チラシより)

 08年のロクソドンタ・フェスティバルで3位入賞し、芸術創造館ステップシアターに参加することになった作品。チラシの説明によればフェスティバルでの公演でかなりの血糊が使われたようですが、今回は控え目でした。ただしそれは視覚的な表現の話であって、内容は猟奇的でショッキングな話です。

 前売券2000円にしてはかなりレベルが高い芝居で、舞台装置もシンプルながら効果的に組まれていました。6年前から活動停止していた劇団ということですが、役者もスタッフもかなり経験を積んでいるのだと思います。主役から脇役まで安定した演技で、その異様な世界を描き出していました。

 ネタバレになるので詳細は避けますが、まさかあの人が・・・!が明らかになった後はぞっとしました。良作です。

2009/02/07-19:00
バンタムクラスステージ「ルルドの森(再)」
芸術創造館/当日券2500円
脚本・演出:細川博司
出演:ハナムラチカヒロ/福地教光/石神禿/水谷有希/南光愛美/小野愛寿香/川野えな/畠中歳雄/るこ/若林賢太郎/樋上孝治/石田れん/永松勝也/一明一人

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