未来も過去も想いも全部、アタシがまとめて掘り起こす!
遙か彼方の未来のハナシ。命のすっかりいなくなった真っ白地球にぽつりとひとつ、おかしなおかしな「砦」があったんだとさ。そこに住むのはたくさんのロボットたち。怒ったり笑ったり、勉強したり、自立したり、時には落ち込んだりもするけれど、みんな楽しく暮らしていたんだ。──たったひとつ、恋することだけは誰も知らずに。鉄の肌さえあったかくなる純愛SFファンタジー。甘くて苦い初恋を、北風と共に。
(チラシより)
ポップなノリでコミカルに始まって、後半は切なく苦しい悲劇的展開、そしてわずかな幸せを拾い上げるエンディング。ミジンコターボの本公演を観るのは4回目ですが、常にこのパターンが踏襲されていると思います。
ロボットが恋愛とか感情に憧れるという設定は少女マンガ的SFの王道ですが、SFとしての科学考証は思いきりよく捨てた印象で、ほぼ完全なファンタジーと割り切ってとらえる方が良いでしょう。登場人物がほとんどロボットばかりというだけのことです。
さらに勝手な解釈を進めると、ファンタジーですらなく神話なんじゃないかとも思いました。この話の「人間とロボット」の関係を「神と人間」に置き換えれば、後半の戦いは信仰をめぐる争いとも重なるわけです。
唯一残っていた人間の男が目を覚まし、ロボットたちに身勝手な命令をしはじめると、ロボットたちは彼に従うものと反発するものに別れて争いを始めます。前者は男を「人間さま」と呼び、逆らうロボットを破壊しまくり、人間に言われれば壊れろ(=死ね)という命令にすら従います。
これを神と人間に置き換えれば、十字軍や狂信の姿に重なります。もちろん、ロボットたちは人間に作られたことを知っていますが人間は神に作られたかどうか必ずしも自覚していない等の差はありますが、仮に今私たちの前に「神」が降臨したとしたら、やはりあのような反応になるんじゃないかと。
では、ロボットが恋を知らないように、人間が知らない神の感情があるのだろうか?アガペーとか?‥‥作者がそんな意図を持っていたかどうかは判りませんが(多分違うでしょう)、一種の黙示録みたいだと思った芝居でした。
2009/01/10-15:30
ミジンコターボ「カレル・チャペックの砦」
in→dependent theatre 2nd/前売券2500円
作:竜崎だいち
演出:片岡百萬両
出演:竜崎だいち/上原日呂/Sun!/井田武志/後藤菜穂美/片岡百萬両/弘中恵莉菜/立花明依/藍原こまき/川端優紀/近藤ヒデジ/アンディ岸本/山田将之/入谷啓介/南雲飛鳥/ナカバシマリナ/翔輝/西茜/笹田絵莉/奥野麻季/ふるかわゆかり/中野ゆうか