2008年10月26日

演劇ユニット昼ノ月「これは白い山でなく」

山の中の食品工場。
バイトの男女が泊まっている。

山登りに学生時代を費やし、
恋人を失った傷心を引きずったまま、
山で暮らしたい一心で
婿養子に入ったような男が社長では、
経営も順調とは言えない。

バイトの男女もそれぞれが、
自分のことをうまく処理できないでいて、
笑っちゃうくらいだ。

暖冬でちっとも白くならない山。
皆が困りきって見上げる山は
永久に白くなりそうにない予感すらする。

け れ ど い つ か 私 も あ な た も 山 も
白 く な る 。
(チラシより)

 演劇ユニット昼ノ月は、劇団八時半を主宰していた鈴江俊郎らがその解散後に新しく立ち上げた団体だが、本作は八時半の「むかしここは沼だった。しろく」と良く似ていると感じた。方向性というか雰囲気は八時半とあまり変化したわけではないのかもしれない。

 相違点と言えば、八時半の登場人物は研究者や活動家など高学歴な人々だったのに対し、昼ノ月では窃盗犯の囚人や若いフリーターなど、どちらかといえば底辺の人々になっていることだ。わざとそうしているのかどうかは、今後の作品で見極めたい。

 いずれにせよ、とても丁寧に作り込まれた芝居である点は変わっていない。本作も観に行って良かったと感じた。

2008/10/26-13:00
演劇ユニット昼ノ月「これは白い山でなく」
アトリエ劇研/前売券2000円
作・演出:鈴江俊郎
出演:二口大学/押谷裕子/梶川貴弘/金森夏江/小高広行/清水陽子/清良砂霧/高橋志保/原聡子/平山ゆず子/柳原良平/山本正典
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月25日

満月動物園「ツキノアバラ」

四姉妹の穏やかで幸せな生活は、突然の火山噴火によって失われた。
閉ざされた島、家族の離散──。
近づけば蘇ってしまう優しい想い出と忌まわしい出来事‥‥。
同じ街で離れて暮らす四姉妹を、街で頻発する謎の連続変死事件がたぐり寄せる。
変死事件の真相、突如姿を消した兄 楸の行方、そして島で起きた真実とは
あの日、墓に掛けた鈴の音が満月の夜に響く時、四姉妹の止まった時間がゆっくりと動き出す。
ついに十五夜を迎える満月動物園が紡ぐ「暗黒の若草物語」
(チラシより)

 十五夜ということで気合いの入った公演。作品は全面改定の再々演とのことですが、私は初見。私としては珍しく先行予約で最前列中央寄りというベストな席を取ったので、まるで自分一人で観劇しているような気分で、強いインパクトを味わうことができました。

 登場人物21人、裏があったり秘密があったり皆どこか暗い影を持っているわけですが、どの人物にでも感情移入したくなるような魅力がありました。一番影がなさそうだった人が実は‥‥というのもドロドロに美味い。

 in→dependent theatre 2ndを裏側から使い、オープニングでは広い花道に自然光を取り入れた演出で一気に芝居空間に引き込まれます。全般に照明効果の使い方が巧みなのは以前観た時と同様。

 休憩ありで3時間越えというのは、個人的な好みからしたら長いです。中盤少し疲れてぼーっとなりました。でもラストはもちろん食い入るように没頭して、「演劇を観た!」という実感がたっぷり得られるお腹いっぱいな公演でした。

2008/10/25-13:00
満月動物園「ツキノアバラ」
in→dependent theatre 2nd/前売券2500円
演出・脚本:戒田竜治
出演:サリngROCK/河上由佳/諏訪いつみ/重田恵/上原日呂/片岡百萬両/近藤ヒデシ/誉田万里子/ヤマサキエリカ/たなかひろこ/原典子/今井康平/みず/西川さやか/昇竜之助/笠江遼子/殿村ゆたか/辻千香/櫟原将宏/南田吉信/デカルコ・マリー
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月12日

子供鉅人「電気女 夢太る」

その小さな町は川のほとりにあった。夢ばかりで肥え太った男、歌を忘れた女、旅する子供、彼らはがさつで無邪気な暮らしの中で、他愛のない歴史を紡いでいた。ところへ、川の上流から、きらびやかな死体が幾人も町に流れ込んで来たのであった。何も語らない死体たち、興奮に沸き返る町、死体たちとの奇妙な共同生活が始まり、繰り広げられる活劇、ロマンス、悲劇、喜劇、そして、彼らは川をさかのぼる。……町の人々の希望に満ちた破綻を、生演奏の調べに乗せて描く、にやりと涙こぼれる音楽スペクタクル!
(チラシより)

 子供鉅人の舞台を観るのは三度目。幕が上がった最初の瞬間から独特の世界に飲み込まれる感触がある。前回観た「4 1/2 ヨジョーハン」は本物の民家(を改造した会場)だったから当然だが、今回のように普通の劇場を使ってもやはり一瞬にして彼らの醸し出す空気に包まれるのだ。それが実に心地よい。

 物語はちょっとアクの強いファンタジー。ほどほどに起承転結はあるが、それをなぞって理解するのは無粋だろう。物語を紡ぐ背景になっている世界観と、描く音楽を堪能させてもらった。

2008/10/12-15:00
子供鉅人「電気女 夢太る」
芸術創造館/前売券2300円
作・演出:益山貴司
出演:BAB/益山寛司/蔭山徹/真栄田貴豊/小中太/森田有香/樹木花香/高木陽春/山本握微/江波ノッコ/三上菜帆/宮本弘一/福森慶之介/益山貴司
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月05日

悪い芝居「東京はアイドル」

芝居を観よう。芝居を観よう。どうせ観るなら『悪い芝居』を観よう。
逆襲。とりあえず逆襲。攻められてるでもなく、わけもなく、逆襲。東京に逆襲。
アイドルは頭の中。頭の中は東京。アイドル追っかけ、目指すは東京。
地図はない。道標はない。知り合いはいない。頭は壊れている。
それでも分かる。肌で感じる。肌だけが感じる。頭は壊れている。
(中略)
変えたいものがあって、変えたいと訴えて、伝わって、ふたりは満足。
何にも変わっていませんが、変えようもないのです。変えたいが伝わればクリアですか?
僕の頭が壊れているのは本当ですが、きっとあなたには伝わらないので話しません。

悪い芝居VS東京はアイドル

説明できないことだけが、説明されないまま、あなたの目の前で、死ぬ。どうぞご期待ください。
(チラシより)

 “技術よりまず熱意”とでも言うような、なんとも力強くて勢いのある芝居だ。それでいて決して下手ではない。正攻法を知った上でそれを打ち破るスタイルで、そういうスタイルに必須な「正攻法でもやれる力がありつつ、それを壊す」という条件は満たしていたと思う。

 前半は東京から離れた田舎町で暮らす、ちょっと(またはかなり)ダメな人々の生活を描いている。しかし後半は演劇の中で演劇を題材とする、いわばメタ演劇とでも言うべき内容になっていく。壁があることになっている場所を素通りしたり、観客に向かって話しかけたり、演劇の約束事を壊していく。

 その勢いはかなり熱いものがあったが、しかしどうも中途半端な気がした。あの程度の客いじりは珍しくないし、観客の一人を連れて本当に劇場から飛び出してしまった例もある。演劇の約束事を壊すにしても、あの程度なら楽屋オチに過ぎない。

 勢いはあったけれど、枠を破っているように見せて、実際は一般的な枠に収まっているのだ。この程度のメタ演劇ならやめておいて、純粋に前半から続く物語を膨らませた方が面白かったのではないだろうか。

2008/10/05-14:00
悪い芝居「東京はアイドル」
ART COMPLEX 1928/前売券2000円
作・演出:山崎彬
出演:山崎彬/四宮章吾/大川原瑞穂/吉川莉早/藤代敬弘/西岡未央/梅田眞千子/植田順平/森本児太郎/鈴木トオル
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。