2008年09月27日

sunday「ニューデリーの恋人たち」

どうしても出会えない二人がいる。
聖書に爆弾を仕掛けて世界を旅する男と、ショッキングピンクの血が流れてると信じてる女が、雨のニューデリーで延々とすれ違う物語。sundayほぼオールキャストとゲストに売込隊ビームの小山茜、二人の子役を迎えて贈る、本物の愛について嘘っぽく語るラブストーリー。
マンションの一室。夜10時25分。子供たちは母親の帰りを待っている。二人はレトルトカレーをそのまま食べる。外では雨が降り始める。ヒッピー風の男女は、レンタカーでニューデリーを目指している。彼らは牛を轢いてしまう。探偵と犬は、舌を出しながらふらふらと街を彷徨っている。レズビアンの売春婦はホテルのロビーで問題を抱えている。サーカスのこびとは、小さい頃に夢見た桃源郷を探している。そして、主人公はまた別の二人。二人はお互いを求めている。この広い世界から相手を見つけ出すことが人生のすべて。しかし決して出会うことはない。なぜなら‥‥。
ラブストーリーといいながら、なかなかラブにならない男女のエピソードの数々が、まるでひとつの部屋の中で起こっているかのように描く意欲作。
「ニューデリーの恋人たち」───インドでは不思議なことがわりと起こる。
(チラシより)

 チラシの説明が秀逸なので全文引用してしまいました。まさにこういう話でした。

 たくさんのエピソードが最後は収束するのかしないのか、どういうタイプのラブストーリーなのか、単なるナンセンスなのか完全な不条理劇なのか、ハッピーエンドなのかそうじゃないのか、どうなるのかまるで予測不能な物語が目まぐるしくサイケデリックに続きます。なんとも奇妙な世界に飲み込まれるように観劇できました。

 ハチャメチャな感じのする舞台ですが、振り返ってみればじっくり作り込まれていました。二人の子役がとても良い感じなのを始め、主役も脇役もそれぞれバランスよくキャラを発揮して、全体として巧みに世界を描いていたと思います。

2008/09/27-19:00
sunday「ニューデリーの恋人たち」
HEP HALL/前売券3500円
作・演出:ウォーリー木下
出演:赤星マサノリ/小松利昌/平林之英/宮川サキ/井田武志/安元美帆子/吉陸アキコ/椎原小百合/小山茜/山川卓也/後藤花怜/服部まひろ/竹内宏樹/若旦那家康/西村朋恵
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月23日

青年団「火宅か修羅か」

湘南の旅館が舞台だ。世間から逃れるように旅館に住んで執筆する小説家、木村が再婚することになり、三人姉妹は新しい母の出現に動揺する。高校時代のボート部OBらが十数年ぶりに開く同窓会。一見、関係のない集団の会話が微妙に折り重なり物語が進行する。(後略)
(チラシ裏面、河野孝劇評より抜粋からさらに抜粋)

 平田オリザの名前はよく聞きながらその作品をちゃんと観たことがありませんでした。本作は彼が1995年に岸田國士戯曲賞を受賞した直後の作品で、評価は高い、らしい。

 観劇後の率直な感想としては、平田オリザが演劇で表現しようとしていることと私が演劇に求めているものは違うんだな、というもの。彼の著作『演劇入門』『演技と演出』は読んでいたので、その姿勢はなんとなくわかっているつもりで、この芝居の印象もそれを裏付けるものだった。

 表現したいものがあると言う。これと明示されることはないが、多分、微妙な立場にある登場人物の心理状態とか、コミカルな中にある寂しさとか、ふっきれない想いを抱えながら前向きに進もうとしている葛藤とか、なんとなーく伝わってくるものは、確かにあった。

 でも、伝わってくるだけで響いてこなかった。多分、演技と演出がうますぎるのか、リアルを目指しすぎているのだろう。あまりにも完成された感じがして、まるで映画を観ているようなのだ。生身の役者が演じるダイナミクス、表現するという行為そのものが持つ力を失うほどにリアルなのだ。

2008/09/23-17:00
青年団「火宅か修羅か」
アイホール/当日券3000円
作・演出:平田オリザ
出演:山村崇子/志賀廣太郎/兵藤公美/島田曜蔵/高橋縁/能島瑞穂/申瑞季/古屋隆太/鈴木智香子/古舘寛治/井上三奈子/大竹直/山本雅幸/荻野友里/堀夏子/村田牧子
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月21日

虚空旅団「冬のトマト」

生きているふりをしてる。
それが精一杯。
(チラシより)

 DV等の被害女性達と、彼女達を援助する女性弁護士が暮らしているアパート。離婚や養育費の支払いを巡って交渉や訴訟を抱えていたり、時折やってきて寄りを戻そうとする夫らとの攻防があったり。そんな生活の中で少しでも明るく希望を持つため、屋上にそれぞれがプランターを置いて植物を育てている。ブドウだったり、トマトだったり、ちょっとヤバイ植物だったり。

 まだ結婚したこともない男の視点としては、唯一の男性キャラである青年の「なんでそんな男と結婚なんかしたのさ。見る目がなかったんじゃないの」という言葉は率直に共感してしまいます。「結婚してみないとわからないこともある」という答えもまた、事実なのでしょうが。

 何の予備知識も持たずに観劇したので最初はちょっと引きましたが、感情移入していくと実に重くて濃い話です。芝居としてはとても質感が高い・・・というか食べ物は本物ですよね? 観ながらお腹が空いてきてしまいました。

2008/09/21-14:00
虚空旅団「冬のトマト」
ウイングフィールド/当日券2300円
作・演出:高橋恵
出演:得田晃子/中條睦子/守時由希子/守島麗子/松中清美/赤鹿充翁
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月13日

オリゴ党「カーゴ・カルト」

かみさま、そちらにおわしますか。
(チラシより)

 失踪した夫を探しあてたら、カルト教団の教祖(?)になっていた──。古い教団に失望して仲間と共に脱退し、理想に燃えて新しい団体を作ったが、結局それも崩壊していく。その過程の中や外で翻弄される人々の姿を描いている、という解釈で正しいのかな?

 カルト教団の物語をシアトリカル應典院(ちゃんとした仏教寺院が運営している劇場)で上演するのは罰当たりと言うかチャレンジャーと言うか、まあ狙ってやってるのでしょうが、良い意味で味が出ていました。

 実際のカルト教団の内部がどんなものなのか、幸い知る機会もなく過ごしてきましたが、なんかこんな感じなんだろうなーと思える光景が繰り広げられていました。教祖様って最初はきっとあんな風に、無自覚に人を惹き付けてしまうのでしょう。

 観劇し終わって「面白かった!」と感じるような作品ではありませんが(面白くなかったということではなく、エンターテイメント性が強い内容ではなかったという意)、独特の余韻が残りました。

2008/09/13-19:30
オリゴ党「カーゴ・カルト」
シアトリカル應典院/当日券2500円
作・演出:岩本貞典
出演:渡辺大介/誉田万里子/倉橋里実/今中黎明/恒川良太郎/有馬ハル/田中愛積/尹千紘/宇野あい/中村大介/小室千恵/坂野多美/辻野加奈恵
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月07日

茶ばしら、「怪獣使いと少年少女」

本当に好きなことがあるのって悪くない
「初恋の男に夢中の純情可憐な女の子。アニオタ特撮好きの唯我独尊な男の子。恋の魔法のいたずらで、2人は翔んだカップルに?? 不器用な男と女の純愛ラプソディー。観ればあなたも甘酸っぱい。幸せな気分になりなさい!で、どうすか?」
(チラシより)

 アニオタ特撮好きが集まって賑やかに語りあいまくる喫茶店を舞台にした、ほんわかコメディ。女の子が絡んでちょっとラブコメ的な要素もありますが何よりオタク談義の面白いこと。観ているだけでワクワクしました。

 出てくるネタで元がわかるのは半分くらいだったと思いますが、好きなテーマなら私も相当熱く語るタイプなので、あの雰囲気は大好き。ああいう喫茶店があれば入り浸りたいものです。

2008/09/07-18:00
茶ばしら、「怪獣使いと少年少女」
in→dependent theatre 1st/当日券2500円
脚本・演出:石原正一
出演:真心/林裕介/草野憲大/濱本直樹/城田邦生/笠江遼子/溝端理恵子/澤田誠/亀井伸一郎/上原日呂/福山しゅんろう
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月06日

兎町十三番地「家族前奏曲(プレリュード)」

北陸地方のとある中核市。
椚池家[くぬぎいけ]の当主が、死んだ。
その娘であるシオリは、
仏壇の前で呆然と遺影を見つめている。
「…これから、どうしよう」
夫のタツマサは、自室でネットゲームをしたまま、
ひきこもって出てこない。
長男のタツヒデは、優しい男だが、何かを隠している。
長女のリカは、知らないうちに派手な男と籍を入れ、
私に海外に移住しろとせがむ。
何のために、この家の主婦をしてきたのだろうか。
あとどのくらい、この家の主婦ができるのだろうか。
シオリは、食器を洗いながら、毎日のように考える。(後略)
(チラシより)

 いつも豪華なデザインのチラシで目を引く兎町十三番地、公演は始めて観ました。きらびやかな歌とダンスを盛り込んだショータイム的な構成は恐らく今回に限らず、劇団のカラーなのでしょう。宝塚のように好きな人はとことんまで通いそうな感じ。

 飲み込まれると心地よい空間がしっかり構成されていました。ダンスは明らかに素人じゃない動きで、しっかり鍛練されていると思います。

 ただ、母親やお婆さん役がどうにも若すぎる印象はぬぐえませんでした。出身大学を中心に結成された劇団なので年配の役者がいないのでしょうが、老け役を上手く演じられる役者ならもう少しそれっぽい雰囲気が出せたと思います。そういう所はあまり重視していないのかな。

2008/09/06-14:00
兎町十三番地「家族前奏曲(プレリュード)」
アイホール/前売券3500円
作・演出:中川昌紀
出演:広川文/新良エツ子/藤本有加/宿南麻衣/吉田憲章/興津教光/伊地田周作/田渕法明/顎(まこと)/奥出鉄也/前田有祐/もりのくるみ/樋口未芳子/兎川純
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする