「私たちの戦争」
LOST IN THE WAR/BLINDESS
04/8/19
作:マリオ・フラッティ/渡辺修孝/坂手洋二
訳:立木火華子
構成・演出:坂手洋二
出演:中山マリ/川中健次郎/猪熊恒和/下総源太朗/大西孝洋/鴨川てんし/Kameron Steeie/Ivana Catanese/江口敦子/宮島千栄/内海常葉/向井孝成/瀧口修央/工藤清美/裴優宇/久保島隆/杉山英之/小金井篤/亀ヶ谷美也子/塚田菜津子
イラク戦争開戦時、公衆便所に「戦争反対」と落書きしただけで拘留され、軽犯罪法ではなく器物破損罪に問われた青年。米国大使館前で抗議デモを続けていた女性への弾圧。イラクで誘拐された日本人。
アメリカでは、戦闘の負傷で盲目になった復員兵が、死んだ戦友の家族たちを訪ねる。
「ほとんど全てが、フィクションではなく現実なのである。」とリーフレットにあるとおりの内容で実際に起こった出来事をオムニバス風に上演されていく。
正直、こんな演劇もあったのかと思った。事実であるが故、非常に生々しく、そして淡々と上演されていく、演劇の持つメディア性を強く感じた。
非日常的な現実がそこにあり、われわれはもう既に踏み込んでしまっていることに気づかされる。リーフレットでは現在を「戦時下」といっているが、正にその通りだ。自衛隊を派遣している以上、対岸の火事ではすまない。
私たちは真実についてどれだけ知っているというのだろうか。真実や事実は求めないと手に入れられない。あまりにも知らないことが多過ぎて、わけもわからず手が震え泣いていた。
この劇は現在進行形である。
戦争に対してどの様に向き合うかを考えさせられた、少なくとも戦争反対を訴える事ができない世の中にだけはしたくない。そうでなければ人間の歴史とはなんだったというのか。
ただ、Blindnessはお国柄が異なるせいか違和感があった。ドキュメンタリー調だったのが急に芝居に引き戻された感じ。これはアメリカ人と軍隊との関わりが日本人とは決定的に異なることと、観る側(私)に文化的な知見が足りないことが原因かもしれない。
(しおこんぶ)
(#10注:訳者の立木さんの名前「火華子」は「火華」が一字ですがJIS外のためこのように表記させていただきました。出演者の裴優宇さんの「裴」は正しくは亠が非の上にある字体ですが、JIS外のため裴で代用させていただきました)