2004年06月27日

劇団離風霊船「渚家にて」

劇団離風霊船
「渚家にて」
西文化小劇場
04/06/25-27
作・演出:大橋泰彦
出演:伊東由美子/松戸俊二/山岸涼子/小林裕忠/相川倫子/倉林恵美/橋本直樹/大迫径/江頭一晃/新垣友美/竹下知雄/澤田恵/神谷麻衣子/津谷知子/瀬戸純哉/大矢敦子/中村ノゾム/鈴木紀江


 某国で武装勢力に誘拐された8人の日本人男女。彼らを救出するため、なぜか北海道警と警視庁から秘密裏に部隊が送り込まれる。しかしそこにはすでに武装勢力の姿はなかた。元人質が日本に帰らない理由と、救出部隊の真の目的は・・・。

 イラクの日本人人質事件と「渚にて」という映画をモチーフにした作品。映画のほうは見ていないのでわからないが、人質事件を知らない人はいないだろう。この事件はまだ完全には終わっていないので、観客はそれぞれ自分の持っていた心情と照らし合わせながら観ていたと思う。

 観客にも色々な人がいるので、時事ネタを芝居で扱うのは勇気がいることだ。あまりひとつの主張が前面に出すぎると、うんざりさせられる場合もある。しかし今回は色々な意味でバランスよく作られており、最後まで飽きさせない内容だった。荒唐無稽ともいえる設定でほどよく現実味を薄れさせ、それでも要所では間違いなく現実を思い出させる。結末もよく工夫されていた。

 離風霊船は東京から遠征してくるにも関わらず、毎回大掛かりな舞台装置で驚かされる。名古屋の劇団はどちらかというとシンプルな装置を上手に使うのを好む傾向があるように感じる。七ツ寺クラスの劇場ならあまり装置に凝ると逆に息苦しいが、文化小劇場レベルの空間を使う場合はこのくらいしてもらった方が嬉しい。
posted by #10 at 20:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

劇団あおきりみかん「昼下がり、車庫上がり」

劇団あおきりみかん
「昼下がり、車庫上がり」
愛知県芸術劇場小ホール
04/06/24-26
作・演出:鹿目由紀
出演:松井真人/とみィ/山中崇敬/井通302/大屋愉快/中元志津/近藤絵里/水谷悦子/成田けい/木村仁美


 次男の彼女の浮気現場を押さえるべく、ある家のガレージの上で張り込む三兄弟。そこに次々と現れる怪しい男女。刑事を名乗る女に捜査協力を頼まれたり医者を名乗る男に恋人の監視を頼まれたりして、手一杯になる三兄弟。さらに何も知らないはずの彼女が持ってきた弁当にはなぜか睡眠薬が。そこで何が起きているのか、すべての真相は?

 今回は舞台装置に度肝を抜かれた。ガレージや物置の屋根と隣家の2階などが精密に作られているのだが、幅が舞台の1.5倍ほどあり、途中で全体がスライドするのだ。つまりセットの端3分の1ほどは舞台袖に隠れた状態になり、ここを上手く使って滑らかに場面転換が行われる。質感も高く、その出来栄えには感心した。

 物語としては、やや安易に流れた感がある。虚構の芝居なのだから多少の荒唐無稽さはあって当然だが、今回のオチの付け方はむしろ御都合主義というべきだろう。例えば三男の職業などは状況として不自然すぎ、伏線がかえって言い訳がましく見えてしまった。井通302や木村仁美などの個性派俳優の使い方も、彼らの持ち味を生かしたというよりは彼らのキャラに助けられたと感じられる。

 ただ作品全体として面白くなかったわけではない。次々に起こるハプニングに盛り上がり、ラストは心温まる大団円。誰でも安心して楽しめるあおきりみかんとしては標準的な出来栄えだったと思う。
posted by #10 at 02:18| Comment(2) | TrackBack(1) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月13日

劇団サラダ「あざやぐ花に」

劇団サラダ
「あざやぐ花に」
今池芸音劇場
04/06/11-13
作:つく音
演出:ティナ棚橋
出演:伊藤しんぢ/玉腰ヨシヒロ/椎名雄久/みなかた創建/つく音/しなこ


 新撰組で死絵師を務める男とお気楽な隊士。ある時、斬った浪士の遺体をさらしてその仲間をおびき出すことになる。うまく浪士のアジトを突き止める手柄を立てて遊郭に繰り出すが‥‥。

 劇団サラダの本公演は初見。いつもとは脚本家が違うとのことだが、思ったより若々しい印象を受けた。物語としては特に目新しいものではないが、新撰組を出すのは今年の流行だろうか。全体的には特に高度な出来とは思えないが、ラストシーンは良かった。
posted by #10 at 00:25| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

少年王者舘 夕沈ダンス「アジサイ光線」

少年王者舘 夕沈ダンス
「アジサイ光線」
七ツ寺共同スタジオ
04/06/11-13
構成・演出:天野天街
出演:夕沈/白鴎文子/丹羽純子/田村愛/松久聖子/ひのみもく/珠水/蓮子正和/川合喜之/いちぢくジュン


 “夕沈ダンス”とあるように、筋のある芝居ではなくダンスパフォーマンス。普通の芝居の中でもダンスが使われることが多いが、それだけを抜き出してひたすら踊りつづけたような作品。

 少年王者舘の作品はそう多く観たわけではないが、一度観たら確実に印象に残る、非常に特色のある舞台だ。中でもダンスは癖になる無気味さをかもしだし、群舞の魅力を存分に味わえる。シャキシャキした奇妙な動きも、集団で揃えることによって何か芸術的な雰囲気が生まれる。

 ただ今回思ったのは、ダンスだけでは飽きるということだ。インパクトはあるのだが、やはり芝居としての筋立てがあってこそダンスが生きてくるのではないか。どうやら筋はなくても状況設定はあるようなのだが、それだけでは物足りない。次回はやはり普通に(?)芝居を観たいと思った。
posted by #10 at 00:04| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月07日

劇団I.Q150「浮人形」

劇団I.Q150
「浮人形」
七ツ寺共同スタジオ
04/06/04-06
作・演出:丹野久美子
出演:野田雅子/江目ひとみ/仲村和美/伊藤広重/高橋和子/星川麻衣/セトトモコ/茅根利安/寺島広/斉藤ら真生/高橋史生/伊藤光輔/丹野久美子


 東北の山奥で車が故障した若いカップルが、一軒の民家に泊めてもらうことに。なごやかな家族に暖かく迎えられる二人だったが、ふいにカップルの女が「赤い実を取ってきて」と言い始める。実はその家には、13年前に川で死んだ娘がいた。おりしも季節は盆。大きく飾り付けられた迎え火の前で、古い記憶がよみがえる。

 仙台の劇団I.Q150が名古屋に来るのは二度目とのことだが、前回見逃したので私は初見。結論から言えばとても良かったので、今後もぜひ定期的に来てほしいと思う。

 物語としては、要するに幽霊の話であり、昔その娘が死んだ時に何があったのかが少しずつ明らかになっていくというものだ。しかし随所に折り込まれる幻想的な演出がよく効いており、怪談でもサスペンスでもない独特の空間を生んでいた。音楽もオリジナルのようで、さすがに雰囲気にピッタリだ。

 死んだ娘があの世から帰ってくる、その目的は何か。なにしろ相手は幽霊だ。しかし大切な家族だ。迎える人々の心には不安と愛情が入り混じる。そして‥‥。ラストでは目頭が熱くなったとだけ言っておこう。
posted by #10 at 00:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月06日

劇団創造「Don't worry, be happy」

劇団創造
「Don't worry, be happy」
ナビ・ロフト
04/06/04-06
作:鈴木純子
演出:永田竜司
出演:永田竜司/梅田準呼/鈴木孝亮/宇野あすか/横田知也/伊藤佳子/佐伯篤/藤井紗貴子/原田実希


 交通事故で死んだ元ランナーが、ゴミの山の中で目を覚ます。傍らにはゴメと名乗る奇妙な娘。彼は死ぬ直前の記憶がないため、成仏できない。鍵を握る恋人が他の男に惹かれて彼の記憶を失いはじめると、彼の魂は分解の危機を迎える。彼女の記憶を戻せるのか?

  メンバーが大幅に増えた劇団創造。新人の演技は多少こころもとないが、がんばっていた。前半は説明的でややだるい印象を受けたが、後半から次第に話が締まっていき、ホロリとさせるラストまで一気。特に八重樫役を演じた横田知也は前半イマイチだったが後半になって良い動きを見せていた。

 難を言えば、綺麗にまとまりすぎている。以前の創造はわりと不条理系の突飛な設定でインパクトがあったのだが、最近はホームドラマ的なほのぼの路線になっている。それはそれで悪くないのだが、個人的には昔の方が好きだ。だから私の中で一番良かった劇団創造の作品は、今でも6年前の「あの空のちょっとこっち」。今回と同じ鈴木純子の脚本なんですが。
posted by #10 at 02:42| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする