2004年01月26日

七ツ寺プロデュース「XCOW XICOカフェイン/036ウォーター」

七ツ寺プロデュース公演
「XCOW XICOカフェイン/036ウォーター」
七ツ寺共同スタジオ
04/01/22-26
作・演出:スエヒロケイスケ
出演:時田和典/ヨコヤマ茂美/永野昌也/池野和典/古川聖二/茂手木桜子


 時代は2001年、舞台は怪しい老人ホーム。いかにもやばそうな社長と外国人従業員をはじめ、それぞれ強烈な個性を持つ6人が毒々しい「ハードフル・ワールド」を繰り広げる。

 ハードフル・ワールドとはパンフレットにあった表現だが、まさにそうだった。ハートフルならぬハードフル。

 普通の生活では接することのない、でも実在するかもしれない場所と出来事。少しずつ狂気を帯びてくる展開に、観ている最中はドキドキする。失うもののない彼らが激しくぶつかりあう様は強烈な印象を与える。しかし観客はそこから何を受け取れば良いのだろうか。

 描かれているのは、憧れるような生活ではない。教訓的な勧善懲悪でもない。現実の出来事に対する主張も感じられない。雰囲気重視にしては美しくない。悲劇というほど泣けないし、喜劇というほど笑えない。作者はこの作品で、観客に何を与えるつもりだったのだろうか。感情移入できる登場人物が見当たらない物語を、どんな視点で見ろと言いたかったのだろうか。

 好意的に解釈するなら、ボロボロの状況から這い上がろうと努力している人々を描いた悲喜劇と言えるかもしれない。しかしそれならラストはどういう意味なのか。正直、ラストは「え、これで終わり?」と拍子抜けせざるを得なかった。

 個々のシーンには面白いものも多々あった。笑い所も少なくはない。話に破綻もない。役者のレベルは高く、しかも相当なエネルギーを費やしているのが伝わってくる。つまりどこが悪いとも言えないのだが、強いて言うなら、高度な芝居に観客が置き去りにされたような気がするのだ。
posted by #10 at 01:54| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年01月25日

楠美津香のひとりシェイクスピア「超訳ヴェニスの商人」

Tres production
「超訳ヴェニスの商人」
スタジオ・座・ウィークエンド
04/01/24
出演:楠美津香


 一人芝居というのは、もともと登場人物が一人しかいない場合と、多数の登場人物を一人で演じる場合とがある。今回はシェイクスピア戯曲なのだから当然後者。どうやって演じるのか?と疑問だったが観て氷解。

 シェイクスピアの戯曲を題材としているが、演劇より講談と呼ぶべきスタイル。しかし芸人の技とは恐ろしいもので、何の違和感もなく楽しむことができた。

 とにかくハイテンポで小気味良く話を進める。大勢のキャラクターを瞬時に切り替えながら演じ分ける。解説も交えてわかりやすい。もちろん演劇としては異色だろうが、エンターテイメントとしては多分、普通に演じられるより面白い(普通に演じられたところを観たことはないけど)。
posted by #10 at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年01月20日

E-style「ego trip」

E-style
「ego trip」
スタジオ・座・ウィークエンド
04/01/17-18
作・演出:遠藤のりあき
出演:小川麻美/竹越葉子/清水やすひろ/今枝千恵子/あやな/大友麻由子/諸富真吾/磯部うに/足立盟/遠藤のりあき


 歴史から抹消された“戦争”−−。ある日突然携帯にメールで召集令状が届けられ、逃げれば死刑? 意味のわからない殺戮、生と死、孤独と愛情と裏切りと友情と、自分探しと。出会った二人が友に逃げ、たどりつくのは。

 背景と衣装が黒だけで統一され、小道具は椅子のみというシンプルな舞台。大道具が皆無のため、パントマイムのような演技ですべてが表現される。この手法は昨年5月に本作と同じ遠藤のりあきが演出した「ぐる∞ぐる」でも用いられていたもので、舞台に袖がないため役者は最初から最後まで息が抜けず大変だろう。
 ちなみに私が遠藤のりあき演出作品を観たのはこの2回だけなので、ひょっとしたら彼の作品は常にこのスタイルなのかもしれないがそれはわからない。

 さて、パントマイムのような演技は役者の技術だけでなく観客の想像力も求められる。通常の演劇で場面ごとの背景や役柄ごとの衣装を使うのは、視覚的に状況説明してくれる働きがあるからで、それらを捨てた芝居においては観客が頭の中で想像を加えて再構成しなくてはならないからだ。

 今はどの場所で、誰が何をしているのか。それらを理解するために知恵を働かせることを観客に求めるのなら、そこで表現される内容は通常の演劇よりシンプルにする必要があると思う。そうでなくては疲れてしまう。

 そういう意味では、本作の内容はあまりにも複雑すぎたのではないか。物語の背景となる社会情勢を理解するのに一苦労。複雑に絡み合った人間関係を把握するのにまた一苦労。というより把握しきれなかった。せめてパンフレットに人物相関図でもあれば良かったのだが。戦争がなぜ起きたのかもよくわからなかった。

 役者の演技はよくがんばっていた。このスタイルでもう少しゆったりしたテンポの、落ち着いた芝居が観てみたいと思った。
posted by #10 at 02:33| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年01月19日

シアターガッツ「踊る大和魂」

シアターガッツ
「踊る大和魂」
愛知県芸術劇場小ホール
04/01/17-18
作・演出:品川浩幸
出演:大岩篤史/小島敬子/藤元英樹/山崎淑子/寺西栄美/道家希/永井裕子/春田琴美/川浦君英/坂口潤/中川弘樹/須藤一樹/脇山烈


 四話構成のオムニバス形式。第一話「ロマンチック野郎」は、豆腐屋の野暮ったい夫婦のクリスマスから元旦にかけてのお話で、オヤジのぎこちなくて暖かい愛情表現は日本人としてとても好きだ。第四話「Skip A Go! Go!」の冴えないサラリーマンが女子高生相手にあたふたする姿もほほえましい。

 しかし第三話「初恋のひと。」は同名の単独公演の一場面として見た覚えがあるし、第二話「元パパ」は月末に行われる劇王の出品作だという。ということは今回のために作られたのは半分ということ? それってどうなの。手抜きか。中身は悪くなかったけれどね。

 シアターガッツの公演は単なる芝居の域に収まらない。開演前の注意事項(いわゆる前説)をマスコットキャラクターがお客を巻き込んで進めたり、終了後はお土産や福袋などのグッズ販売にも力を入れている。これは公演全体をイベントとして盛り上げようという姿勢の現れだと思うし、それはある程度成功していると言えるだろう。純粋に芝居を観たいという人は眉をひそめるかもしれないが、そもそも芝居がエンターテイメントであることを考えれば、このアプローチは理にかなっている。

 “芝居(演劇)の枠にとらわれない”ことを掲げている団体はたまに見かけるが、多くは演目の内容にダンスや歌を加える程度に収まっている。ロビーで物品販売する場合もビデオや戯曲が中心で、劇団グッズまで作るところはまだ少ない。シアターガッツほどの取り組みを行うには劇団としてかなりの経験や人的余裕が必要だと考えられるが、まず方向性としてこういう形を目指す団体がもっと増えてよいと思う。

 大多数の客は評論家ではなく、楽しい時間が欲しくて足を運んでいるのだから。
posted by #10 at 01:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年01月18日

前売で行こう

 去年はたくさんの芝居を観に行きました。しかし大抵はいきあたりばったりで無計画のため、当日券ばかり。ひょっとして、前売券を買った場合と比べて相当に高くついていたのでは?と思って計算してみました。

 保管してあるチラシから各公演の前売と当日の金額を調べて集計したところ、

・全部前売の場合:108,000円
・全部当日の場合:122,900円

となりました。前売で観に行った作品も少しはありますが、14,000円以上は余計に払っていたわけです。7〜8公演のチケット代に相当する額ではありませんか。これはいけません。無計画の代償は思いのほか高かった。反省。

 金額以外にも、前売券を買っていけば満席で入場できなくなる心配がないというメリットもあります。最近は当日券だとギリギリまで入場させてもらえない場合も増えていますから、良い席で見るためにも前売を買うことが吉でしょう。

 そんなわけで今年はちゃんと前売で行こうと思います。

 しかしチケット代だけで年間10万円以上使ってたとは、我ながら驚き。
posted by #10 at 01:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年01月17日

スタートの挨拶

 最近、パソコン雑誌などで「ウェブログ」なるものが話題になっています。日記のようなものだと聞いて自分には関係ないと思っていましたが、観劇記録に使ったら面白いのではと気づき、始めてみることにしました。

 個人サイトの方にも演劇鑑賞記録というページがありますが、そちらは観た芝居すべてについて簡単にまとめるものとし、こちらは特に強く感じることがあった場合に詳しく書く場所にするつもりです。

 また同時に、芝居そのものに限らず、受付やチラシなどの制作面とか、劇場や観客などの周辺環境にも視野を広げ、総合的に扱ってみたいと考えています。もちろん、名古屋ローカルですが。

 演劇界にしがらみのない立場ゆえ、勝手なことを書いて人を傷つける心配もあります。しかし的外れなことを書いていればこのサイト自体の信頼性が失われ、誰も読まなくなるという形で報いを受けることになるでしょう。

 同じようなウェブログを立ち上げる人がたくさん現れ、それぞれの視点で様々な意見が活発に交わされるようになれば、芝居を作る人たちに対しても良い刺激になるのではないでしょうか。

 どのくらいの頻度でどれだけの記事を書けるかわかりませんが、どうぞよろしくお願いします。
posted by #10 at 03:18| Comment(1) | TrackBack(0) | 雑記雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする